パパ上、やらかす


 それは、とある遊園地が閉園となり、番組の特集をみていたときのことだ。


 私こと、パパ上は、独立国家富山王国から上京し、間もなく上京年月のほうが長くなる歳になった。(とは言ったものの、しっかり年月言うと歳がばれるので、ここはとにかくむにゃむにゃしておこう。もっと言うなら性別も本当は……ここもむにゃむにゃしておこう)


 そんな私も、流石にその閉園する遊園地の名前は知っていて。


「閉園するんだな」

「あー、そうだねー」


 なんて。若かりし頃、あまりにもお金がなくてデートなんか数えるくらいしかないのに私の妻となった猫アレルギーな嫁と、テレビを見ながら他愛ない会話をしていた。


「まあ、俺、ここ行ったことないからなぁ。周りが残念言われても、なーんも思わんな。行ったことあるならもう少し感傷に浸れるんかね?」


 とか。

 嫁に「HAHAHA、おいおいボブ、みんなが悲しんでいるんだから君も悲しむべきさー」とアメリカン風に笑いながら話したのだが。


「行ったことあるよ」

「え……?」

「行ったことあるって言ってんの」

「いや、そりゃお前さんはこの辺りのお嬢様だから何度も行ったことあると思うけども」

「違う違う。あんたよ」


 なにを。と。

 私は思わず、見慣れた嫁の顔を久しぶりに(?)凝視してしまう。


「覚えてない?」

「……」

「私と一緒に行ったけど?」


 これは、まずい。

 そう思った。

 二人で行ったのであれば、それはデートだ。


「私は数少ないデートだったから覚えてるけど?」


 そんな、ため息つきながら言う嫁に。


 本気でまずい。

 と。

 必死に記憶をフラッシュバックさせて、思い出す。

 なぜなら。

 先ほども言ったが。私は、この嫁と、ほっとんど遊びに行ったことがない。

 だから、その一つ一つを、忘れてはならないのだ。



「……あれかっ!」


 学生時代――エアーダンクスマッシュやらかしてから一年後くらいだ――熱出したままに実家に帰る必要があって、飛行機の気圧の変化に耳をやられてしまい、帰ってきてからも痛くて、痛いままに遊園地に行ったことがあった。

 とにかく三半規管がやられていたのか、乗り物の揺れに全く耐えられず。

 嫁が乗りたいアトラクションに全く乗れず、「よわっ」と、呆れられたときの記憶を思い出した。


 そうだ。そうだよ。

 あの遊園地、ここじゃん!




「あんたにとっては、所詮その程度ってことさね」



 えー……っと。





「……」



 もはや、言うしかない。

 あのキーワードを。







「……すいません」

「素直でよろしい」



 謝るしかない。

 そんな、やらかした一日。




 ちなみに。

 三半規管は何年経ったあとも直ってません。



 女性の方々へ。

 時には、抜き打ちのように、思い出を相方に語って覚えているか確認してみるといいですよ。


 男性の方へ。

 忘れたときは、足掻くのをやめ、素直に謝りましょう。




 ではでは。

 日本のどこかで。

 今日も今日とて。



 どろんっ

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