教導部隊

第791話 つなぎの内閣

「この段階での連携。特に最後尾の特機の動きが敵のけん制にならなければ意味がありませんから。常に制圧射撃が可能なように中距離での制圧火力を重視して……」 


 海軍曹長の制服姿の少女がモニターをポインターで示しながら屈強な男達が狭苦しそうに座るブリーフィングルームで説明を続けていた。


「ほう、楓お嬢様も教導部隊の隊員の格好がついてきたじゃないか」 


 微笑みながら正親町三条楓曹長の説明を見守っていた明石の背中でつぶやいたのは別所だった。


「ええのんか?強襲部隊の訓練は確か明日やろ?部下へのアドバイスとかは早めに……」 


 振り返る明石に別所は満面の笑みを浮かべる。


「なあに、傾いているとはいえ胡州海軍最強の第三艦隊強襲特機部隊だ。俺からの助言なんかたいした役にはたたないよ」 


 そう言うと別所は明石のわき腹を小突いた。仕方なく部屋をでる明石を別所は教導隊隊長室に誘う。


「なんやねん、ワシも仕事が……」 


 明石の視線に隊長室の前の魚住と黒田が見えて黙り込んだ。明石は隊長室の前で雑談している従卒に目をやり人払いをした。扉を開くと当然のように魚住と黒田は来客用のソファーに腰を下ろす。二人は壁中に貼られたアサルト・モジュールの写真やステッカーを見ながら表情を和ませる。


「いいねえ、教導部隊は。前線部隊の指揮官室なんか殺風景なもんだぜ」 


 皮肉めいた笑みを浮かべる魚住。明石は苦笑いを浮かべながら隊長の執務机に腰掛けた。


「波多野首相のことなんちゃうか?」 


 誘うように明石がそう言うと黙っていた黒田の鋭い視線が明石に突き刺さる。


「まあな」 


 別所はそう言いながら黒田達に向かい合うようにしてソファーに座る。

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