第282話 デート
「隊長は今頃何を食べてるんですかね?」
ハンバーガーチェーン店で誠はハンバーガーを食べていた。とりあえず豊川の中心部から少し離れた山沿いのこの店の駐車場に車を止めて二人で今日することを話し合うためにこうして軽い昼飯を取ることにした。
「しかし、私達だとどうしてこう言う食事しかひらめかないのかしら」
そう言ってアイシャはポテトをつまむ。
日ごろから給料をほとんど趣味のために使っている二人が、おいしいおしゃれな店を知っているわけも無い。それ以前に食事に金をかけると言う習慣そのものが二人には無かった。
「で、山にでも登るつもり?私は麓で待ってるから」
「あの、それじゃあ何のためのデートか分からないじゃないですか」
アイシャの言葉に呆れて言葉を返す誠だが、その中の『デート』と言う言葉にアイシャはにやりと笑った。
「デートなんだ、これ」
そう言ってアイシャは目の前のハンバーガーを手に持った。
「じゃあこれはさっき誠ちゃんが払ったハンバーガーの代金は奢りと言うことで」
「あの、いや……」
誠は自分の口にした言葉に戸惑った。給料日までまだ一週間あった。その間にいくつかプラモデルとフィギュアの発売日があり、何点か予約も済ませてあるので予想外の出費は避けたいところだった。
「冗談よ。今日は私が奢ってあげる」
アイシャは涼しげな笑みを浮かべると手にしたハンバーガーを口にした。
「良いんですか?確か今月出るアニメの……」
「誠ちゃん。そこはね、嘘でも『僕が払いますから!』とか言って見せるのが男の甲斐性でしょ?」
明らかに揶揄われている。誠はアイシャにそう言われてへこんだ。
「でもそこがかわいいんだけど」
「なんですか?」
「別に何でもないわよ」
小声でアイシャが言った言葉を誠は聞き取れなかった。
「それにしてもこれからどうするの?山歩きとかは興味ないわよ私」
つい出てしまった本音をごまかすようにアイシャはまくし立てる。
「やっぱり映画とか……」
誠はそう言うが、二人の趣味に合うような映画はこの秋には公開されないことくらいは分かっていた。
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