第114話 英雄の休息

 誠はまだ戦闘の興奮の中にいた。鼓動は高鳴り、息は荒く途切れがちになる。嵯峨の終戦の言葉を聞いても手足のこわばりが収まることは無い。


『神前。終わったぞ』


 全周囲型モニターの一角に開いたウィンドウに映った、カウラの優しい表情が誠の目に入った。


「カウラさん。生きてますよ、僕」 


 ようやく戦闘のもたらす興奮で高鳴った胸の鼓動が収まって、誠はカウラにそれだけ言うと静かにそう言った。


『そうだな。生きてる』 


 感情がある。うれしいという感情が。カウラは自分にもそんな感情があると言うことに少し戸惑いながら、シートに身を投げている誠の姿を眺めていた。


「海、行けますね」 


 そこまで言うと誠は崩れ落ちるように倒れ、意識を手放した。


『新入り!どうした!新入り!』 


 今にも泣き出しそうなかなめの声だけが、誠の脳裏をかすめるのだった。

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