3日目 姉


跳んだ瞬間足元の雲が爆ぜた。


「ちっ!」

『健太あああああああああああああああああああああああああああああ!』

「嫌な予感は的中ってことか・・・」


『何があった!』

「あ~最悪の事態です『aaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAH!』聞こえました?」

『把握した!今すぐ向かう!場所は!』

「アレックスの武器があった死神道具専門店!」

『あそこ!?なんでぇそんなところに!?

『少し耐えてね!馬鹿言ってないで行くよ!』


ツーツーツーと切れた音と共に、腕が僕に向かって振るわれる。


「ケンちゃん!受けたらやばいと思う!」

「了解!ふっ!」


幸い大振りだったから避けられた。

今の一瞬でやるしかない


「「魂装!」」


「「いくぞ(ぜ)!」」


テツと示し合わせなくてもタイミングは分かる。

だが、全身が呪いと殺意で満ち満ちている。


だからこそ、【無効】を二重がけで殴る。


アッパー気味に入ったその打撃は確かに芯を捉えたはずだった。


『それは・・・知ってるううううう!』


ケタケタと笑いながら顎先すらかすめずに避けられる。

生前に姉が喧嘩したのは僕だけだったか?いや覚えたられたのだろう。


『今度はあああこっちの番だああ!』


まるで生前の喧嘩のよう。その時は確か。


パンチに見せかけて髪を掴んできたな!


「こっちも知ってんだよ!」

『手よおおお伸びろおおおおおお!』


ここでのイレギュラー。そうだ僕たちは精神体だったんだ。

逆に距離を詰める!


「【透過】」

『ずるをするなああああ!』

「危ないケンちゃん!」

「ぐっ!右肩に掠った!」


瞬間で【無効】を組んだ?は!?違う無意識でやってるんだ!

テツが助けてくれなかったら終わってた・・・


「ちっ・・・浸食されて来てるけど、やるしかない!」


瞬間で体を少し組みなおす。

背中に浸食部を回して動けるようにする。


今の一瞬を持っていくしかないのか?


思考に埋もれそうになる瞬間、気づいた。思い出した。――――――――


「テツいくぞ!」

「了解!」


――――――――テツがいることを


思考は無限に加速し。体は何処までも鈍重となる。

それでいい。

今。

この瞬間に勝ちを作れ。


メヲサマセ


『俺っちが必要かい?』

「必要?違うね」

『そうかい、じゃあこう言うんだろ?』

「『戻っておいでってね(な)』」



――――――――『俺』がいることを




頭が冴える。

目を開けるとそこには・・・かわいそうな姉がいた。


「『終わりにしよう。姉さん』」

『健太ぁ?』


テツが躍り出るその瞬間に足に【加速】の概念を付与し、最小限の動きでテツの後ろから追い抜き、【無効】2つをつけて頭に頭突きをかます。後ろからくるテツはそのまま足払いをかける。


「おらぁ!」

『!!??』

「今だ!ケンちゃん!」


右手に銃を作り出し、【破壊】を付与しそれで眉間を打ち抜く。

瞬間嫌な予感がして飛びのく。


『・・・ゴメンネ、ワタシニハタエラレナカッタナァ・・・』


姉は小さくぼそぼそと何かを言いながら、打たれた眉間を押さえて立ち上がる。


『うああ・・・ああああああああ!!!』


異形へと変化していく姉。

腕にひびが入り、肉が無造作にはみ出てくる。

足は異常に増え10本を超えた。

背中からは異常な肉の翼が生え。

目が片方落ち。

もう片方は異常に肥大化して複眼になる。

耳が片方は縦長になり、もう片方は穴が飛び出す。

辛うじて残った原型すら崩れて別のものになるだろう。


「なぁケンちゃんなんだあれええええ!?」

「分かったもんじゃない!逃げたい・・・でも逃げたら」

「雁字搦めってか!?なんだアイツ!【破壊】効かないのはおかしいだろ!」


正直破壊しても破壊できないなんてどうするんだ?

その時空が一瞬暗くなった。と思ったらそらから3人落ちてきた。

2人は着地しっかりできたけど、もう一人が崩れながら落ちてきた。

そのあと大きな翼の生えたオオカミとその上にいた課長がフワッと降りてきた。



「よく持ちこたえたな。」

「あとは僕たちに任せて~。」

「おええええええええ。おじいさんにやらせちゃいけないことさせてんじゃねぇよ・・・気持ち悪い空の旅をどうもありがとうなぁ!最高の気分だぁ、おかげで味噌汁をもう一回味わえたからなぁ!うっぷ」

「「締まらねぇ~(ないな~)。」」

『課長のデリバリーサービスですからありがたく感謝してくださーい』

「え?運んだの儂なのじゃが?」

「「「ありがとうございました(ぁ)!!!」」」

「え?儂は?」

『ココア・・・これが人望です、ドヤァ』

「それ口で言うんか普通?何でもないです許してください。」

『よろしい。』


最も頼りになる5人(4人と1匹)がそこには立っていた。



「さて、成仏しな!お前は死んでんだからよぉ。弟にそんな迷惑かけてんじゃねぇぞ!」

「周りの避難は完了済みだよ!これ以上暴れさせない!」

「アンタにゃ恨みはないが、これも仕事なんでな。」

「過労で死にそうじゃ。今回はパスするぞ。」

『私はまだ出る幕ではないので~。』


「「「魂装!(Seelenausrüstung魂装!)」」」


ふと遠くから笑い声が聞こえた気がした。



――――――――

「きゃは♡あー面白ーい!」

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