2日目 最後の団欒
目を開けるとそこは知らない空だった。ということはなく、変哲の無い夕方の空だった。
「そうか僕は気絶してしまったのか。」
ふと、隣を見ると、テツも同じようなことを思っていたようだ。
「なぁケンちゃん。俺たち、明日戦うんだよな。」
「そうだな。」
「ケンちゃんのお姉さんとアレックスの相棒を殺した奴に、戦いを挑むんだよな。」
「そうだな。」
「勝てるのか?」
「分からない。」
「どうするんだ?」
「どうしようもない。」
「なんでだよ!」
「簡単な話だ。これ以上やっても無意味だ。」
「そりゃそうかも知れないけど・・・「だけど」え?」
「だけど、絶対に勝ちたい。というか殺したい。」
「ダメだろ?」
「感情で動いちゃだめか?」
「そういったって駄目なもんはだめだよ。」
「そうか・・・うひゃあ!」
「何が!冷たっ!」
後ろから冷たいものを当てられた。
「なぁに辛気臭い顔してんだよぉ?」
「「アレックス!!いい加減にしろ(てくれ)!」」
「HAHAHAHA!こいつは傑作だなぁ!さて、話は変わるが、明日やるぞ。覚悟は出来てるか?」
「「了解」」
「最悪、殺していいと許しが出た。殺す気はねぇが。いざとなったら容赦なく殺す。」
「アレックスさんってやっぱり軍人だったんですか?」
「ん?そんなわけないだろう。ただのミリオタだ。」
冷たいお茶を渡しながら、こともなさげに言うアレックスには嘘を感じたが、今は言う必要がないだろうと思った。
「それはともかく、帰るぞぉ。これ以上やったって無意味だからよぉ・・・明日に差し障るかもしれねぇからなぁ。」
あ、そうか、もう一回あそこに行かないといけないんだな。
少し薄暗くも、夕焼けでで十分に視界がとれる死神区の大通りを抜けて、きらきらとした商店街のある場所にたどり着いた。
昨日よりも活気がある気がする。
違う、出店が多いんだ。
日や時間によって出店は変わるのかもしれない。
アレックスはたこ焼き屋を見ながら口を開いた。
「あ、キャロルのばあさんもういるのかぁそれじゃ5時くらいだなぁ。」
「そうなんですか?」
「あぁ、基本的にあの人は午後5~9時にいるからなぁ。」
そう言いながら伸びる影に少し目線を落としながらアレックスは歩いていた。
やがて宿にたどり着くと、看板もなくやってるかやってないか分からないくらい薄暗い、切れかけの玄関照明に照らされた『藤の宿』という文字が見えた。
昨日ぶりでも、初見さんお断りって感じがすごいなぁと感じる。
アレックスが入っていくのでそれに僕らはついて行った。
「帰ったぞぉ~!」
「あ、アレックスやない。おかえりなさい。あ、特務の二人も来たんね。」
「ただいまです。」
「お邪魔します。」
テツの余りにも固い態度に肘を軽く打ち
「なんでそんなに固いんだよ」と言うと「やっぱりかわいいじゃん?」と言うので改めて、テツの初心さに申し訳なく感じた。
「シンさん帰って来てます?」
「もう来とるよ~。今はご飯食べとるねぇ。」
「早いな!?」
「なんでも、明日早いんやと。」
「「「あっそうか(ぁ)。俺(オイラ)(僕)も一緒で。」」」
その時に出てきたご飯は本当にきれいだった。
食べると、やはり幸せを直に感じだ。
どうすればいいのだろうか。これを返すすべは何かないのだろうか?
オジサンとレイくんはもうご飯を終えたらしかった。部屋番号を女将に教わって。いざ行ってみると。
「なんだ?なんかようか?明日の件か?」
「そうですね。」
「なら、入れ。」
そうしてはいると床にUNAが散らばっていた。
有名なカードゲームUNAはだれもがやったことがあるものだ。
僕も、『俺』の時にはよくやっていた。
レイくんが「ちょっとやらない?」と言ったことによりみんなで、明日のことを離しながらUNAすることに決まった。
「それじゃあ、とりあえず二人はどこまで戦えるようになったんだ?」
「僕としては、課長の6割と戦えるくらいならいいな~あ、緑で。」
「聞いて驚くなよぉ?なんと8割とやってたぜぇ?リバース。」
「ちょ!俺の番が!」
「悪ぃなぁ!HAHAHAHA!」
「ほんと!?すごいね!ドロ2!」
「確かによくやったな。褒めてやろう。ほいドロ2沈め健太。」
「ちょっと!?言ってることとやってることの差がひどい!ドロ4使うしかないじゃないですか!赤で!」
「ナイスパスだ!ドロ2!」
「うっそだろおおおお!?」
「シッシッシ!俺の勝ちじゃね?あと1枚「「「「UNAって言ってない」」」」ああああ!」
そんなこんなで楽しく情報共有をしていた。
「だが、まぁ健太。無理はするなよ?絶対危ない仕事だ。俺とアレックスとレイがつくが正直、勝てるかわからない。いや、負けるとも限らないけどな。相手側のことは未知数だと言っておこう。」
「そうだね。勝算は普通にあるけど、その分不意打ちが何よりも怖い。ところで、何処に来るか分かってる?」
「そいつぁまだわかってねぇけど。課長が言うには、『健太が姉の霊を倒すのを見に来る』と言っていたからな。理由は性格だと。」
「放火魔の心理と一緒の感じか・・・俺も注意は払っておこう。」
「なぁケンちゃん放火魔の心理ってなんだ?」
「それは、放火したものを見に来るためにほぼ絶対現場に再度現れることだよ。」
「なるほどな。」
「どうしようもないね。そいつ。」
「正直なぁ・・・救えねぇよ。オイラは正直、殺したいとすら思ってる。」
「それは・・・否定できませんね。僕もそう思ってますから。」
「そりゃそうか、まぁ否定はしない。だけど、分別は付けろ。最優先は魂の確保。次に、霊の除去もしくは破壊だからな。そういえば、テツとケンちゃんは今日で夜を過ごすのは最後だな。まぁ、明日も言うだろうけど、ありがとうな。お前らのおかげで何人も救われた。正直俺もその一人だ。」
「もちろんぼくもだよ~ありがとね~。」
「ん?一番はおいらだろうなぁ。ありがとなぁ。あんた等最高だぜ!」
「こちらこそありがとうございました!おかげで変わることができました!」
「俺も、ここに来て改めて友達とかの大切さを知れたっす!ありがとうございました!」
感謝の言葉がとても心に心地よかった。
自分たちの止まる部屋に戻るときに、話しかけた。
「なぁテツ。」
「なんだ?」
「俺たちって頑張ったんだな。」
「そりゃそうだろう。なんたって俺の相棒なんだから俺だって救われてんだぜ。」
「あぁ、僕もだよ。ありがとう。」
「へへへ。」
口には出さなかったが、テツの顔は「分かり切ったことだ。気にすんな」といってた。
窓から指す月明かりがやけに、綺麗だった。
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