2日目 戦闘
「んじゃ、電話かけるからなぁ?」
「「了解です。」」
もう、慣れてきた光景に、いつも違う新しい出会い。
少しワクワクしてきた。
「おう、オイラだァ。ん?もう交代したから番号言えって?アレックスっていえばわかるだろぉ?おう、そうだ。んじゃ頼むぞぉ?」
「そろそろだな。」
「・・・なぁ、テツ。こんなこと言うのもあれなんだけどさ、前回みたいなことするなよ?」
「場合によるな!」
満面の笑顔でそんな風に言われると、不安しかなくなる。
「信じられはしないなぁ・・・まぁしょうがないか。」
「でも次はケンちゃん主体だろ?」
「へ?」
「だって俺やったじゃん?」
嘘だろ?こいつは何を言ってるんだ!?
僕にそんなことできる訳がないだろう!
「そんな順番制あったっけ!?僕には無理だ。」
「ケンちゃんはすぐに卑屈になるからなぁ。自分が信じられなかったらどうするんだっけ?ん?」
「・・・あっ、そういうことか。頼らせてもらうよ。」
「当然!手伝うぜ!」
まったく・・・こんな言い方しなくたっていいじゃないか?
まぁ、それぐらいが気楽でいいのかもしれない。
「アンタら準備は良いな?来るぞぉ。」
ビリビリと空気が震える。でも、恐怖はあまり感じない。
心の変化か。それとも・・・
「ケンちゃん、考え事をしてる暇はないかもしれないぞ?」
「おっテツいい勘してんなぁ。そのとおり。今回はなぁ・・・戦闘だぁ!」
「こんな狭い場所で!?」
「拡張機能を使うんだよぉ!
その言葉に反応し壁が遠のき、机が離れていき、体育館ほど広がった。
「魂装しとけよぉ!来るぞぉ!
「了解です!・・・ふっ!」
「了解!魂!装!シャキーン!」
テツはノリノリだなぁと思いながらお互いに姿を変える。
アレックスさんは若返った?武器には腰にリボルバーのようなものが一つとサバイバルナイフのようなもの。背中に大きな木の弓と矢。恰好は軍人のようだった。
「もしかして、アレックスさんって・・・「『貴様ら全員残らず殺してやるぅ!』」嘘でしょ?。」
こっちに運ばれてきたのは、霊に憑りつかれた死神だった。
「監禁しとくのそろそろしんどかったらしいからなぁ・・・依頼は、不殺で魂から例の除去もしくは捕獲、だとよぉ。行くぞ?テツは中衛、健太は前衛を頼む。オイラはフォローに回ってやらぁ。」
「はい!」「おう!」
そう言って飛び出したはいいものの、体の使い方が分からない。
だが、どんな風に動くかは、人一倍見ている!
走って近づきながら体を低くしてばねのように縮める、瞬間手が物理的に伸びてくる。のでそれを掴んで自分の進む方向と逆に引っ張る。
「『ぬぉ!?』」
「今だ。テツ!」
「任されたぁ!指定【霊】効果【引きよせ】フルバーストォ!」
両手から6発ずつ放たれる弾丸は特殊な色を纏わせ相手に殺到する。
「『しぃ!効かぬわぁ!ぬ?魂装が引っ張られるだと?貴様ぁ!』」
テツの放った弾丸は寸分狂わず12発全てが当たるはずだった。がそこに薄黒い正六角形の板が数え切れないほど出現し、結合し、幾層にも重なるように、球体のように膜が張られる。恐らくできたのは10層ほど。そのうち削れたのは6層2枚ずつだが、それぞれその板はテツの足元に転がっていた。
「『盗みよったなぁ!死ねぇ!』」
黒く染まった手が伸びてくる。
この黒さ・・・殺意?ならば、魂装すら当たること自体が危険だ!
「テツ避けろ!」
「オイラに・・・任せなぁ!【
リボルバーで打ち抜かれると同時にその手の色は元に戻った。
それと同時に戻っていく。
「怖ええええええ!!!」
「一旦立て!」
テツを急かしながら修復され始めている黒い膜に近づく。
攻撃、防御している時は修復できないんじゃないか?と考えたからだ。
さっきはよく見てる余裕はなかったが・・・
「『邪魔だ!』」
瞬間数十本もの腕がこちらに真っ黒になって伸びてくる。
だが、もう対処法は見た。
イメージは大きな壁。白く広く高い。すべてを守るように立つ白亜。
「【無効】!!!」
「『【
【無効】を抜けるならいい。概念として付与できるのは恐らく1つだけだ。せめて2テンポかけないと二つの付与のイメージは無理のはず。しかも既に伸びる手というリソースに加えて、増殖すると言うのさえある。普通ならこれ以上無理のはず!手が壁をすり抜けた瞬間、ここで切り替えて来るはずだから・・・誰しもイメージが切り替わるその瞬間に、ズレがある!見えないなら尚更のはず!
「アレックスさん!カバーを!」
「任されたぁ!」
薄い色になって通り抜けてきた腕が本来の色を取り戻した。
今しかない!
「【切断】!」
「『あああああああ!?何をするんだあああ!!!貴様らあああ!』」
切られた腕は床の雲の上に転がる。
アレックスがそこで弓に矢をつがえる。
「お見事、んじゃこいつでも喰らいなぁ、【
矢が腕の全てに波打つような軌道をして当る。
アレックスからその瞬間に顎で「行け」という合図をされる。
「『ぐああああ!何をしたあああ!』」
「何ってぇ?アンタがしてるのと同じことさぁ。魂装自体から全てにダメージを与える方法の一つさぁ。まぁ、生存させなきゃいけないこちらの方が不利なのはいつものことだけどなぁ。それぐらいでいいハンデだろぉ?なんせ3対1だからよぉ。なぁ、ケンちゃん!」
壁の影から飛び出して、刀を鞘から走らせてテツの作った穴に向かって振りぬく。時間があったから2つの概念を付与をした。【破壊】と【貫通】だ。
「ふっ!」
パリンパリンと音を立てて膜が壊れていく。
斬れたのは計7層。2層は修復されてたから合計11層の2×12マスぐらいは壊せた。だが、1枚残ってたんだ。読み間違えたのか!畜生、避けるモーションに入れない!
「そこだ!【破壊】それに指定【霊】効果【引きよせ】、バーストぉ!」
頬の横を2発の弾丸が通った。
1発目が最後の膜の1つのマスを壊した。
2発目が本体を打ち抜いた。
その瞬間死神の体は糸の切れた人形のように崩れ落ち、テツの足元にどす黒い液体が広がった。
「まずい!テツ!『もう遅い!「そいつぁ、どうかな?そこは射程圏内だぜぇ?」何!?』え?」
「
矢が液体に突き刺さり消えた。
「そういや、この中身って保管して何に使うんだろうなぁ?」
壁を解除するとアレックスが瓶の中身の真っ黒な液体を振りながらこともなさげに言ってきた。
「「えっ!?使うのか(んですか)!?」」
「らしいんだが、何に使うんだろうなぁ。魂の補修とかは知ってんだがなぁ。どう考えてもそれだけじゃ使いきれなくて溢れるよなぁ。あ、本人の魂以外には使わねぇらしいぞぉ?」
「あ~そういうことか・・・」
「ケンちゃんなんか分かったの?」
なんとなく察した。この世界は本当に無駄なくいいように出来てる。
「恐らくだけど、その人の経験とかが入ってるのが中身、要するに霊でしょ?それが魂の補修とかの素材に使われるってことでしょ。その上で、補修以外なら魂が壊れたときとかに新しい魂の素材になったり、下界に送り出すエネルギーになるんじゃない?どれにしても、その人を捨てては居ないし、無駄にはしてないけど・・・なんだかなぁ。」
「あんまり気持ちのいい使い方じゃないって?まぁそいつにとっての1番の人生が残ってんだからいいんじゃねぇか。」
「それも、そうですね・・・自分で自分の人生を決められるんですからね。」
「でもなぁ・・・なんか少しもやもやするなぁ。」
「しょうがねぇよ。どんなことでもすっきり終われる世界なんぞどこにもねぇんだからよぉ。」
そう言ってテツの頭をわしわしとなでるアレックスの横顔は、何処か遠い空を見ているようだった。
そうしてやっと一息ついた途端に体から、力が一気に抜けてそのまま座り込んでしまい、立てなくなってしまった。
「あれっ?・・・」
「んん?力がでない?てか立てない?」
「そりゃぁそうだろうよ。慣れねぇ魂装を他人の姿借りてやってんだからなぁ。魂力使い果たしたんだろうなぁ。自分から離れれば離れるほど魂力を無駄に使うからなぁ。武器だって大量に作ってたしなぁ。」
アレックスはそんな僕らの姿を見て、事も無げにそう言ってきた。
「それ先に言って下さいよ・・・というか、魂力って?」
「簡単に言えばRPGのMP見てぇなもんだ。だが、同時にHPでもあるみたいなかんじだ。無くなりゃ俺らは消えてなくなる。まぁ契約書がある限りはそうはならねぇようになってるから安心しなぁ。安静にしとけよぉ。」
そう言うとアレックスは辺りの後片付けを始めた。
その姿ピンピンと動く姿に僕らは無力感を味わった。
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