第19話 背番号と抽選会

 片倉城高校との練習試合を終えた翌日、部員全員は屋内練習場に集まっていた。


「これから背番号を配りますので、呼ばれたら取りに来てください」


 早織の言葉通り、これから背番号が配られるのだ。

 人数が少ないので全員背番号を貰えるが、普通ならメンバーに選ばれるかどうか緊張する場面である。


「一番、宮野春香」

「はい」


 名前を呼ばれた春香は、和から一番の背番号を受け取る。


 そして次々に名前を呼ばれていき、全ての背番号を配り終わった。


 一番 宮野春香

 二番 守宮千尋

 三番 N・セラフィーナ

 四番 椎名飛鳥

 五番 岡田涼

 六番 進藤慧

 七番 杉本恵李華

 八番 V・ヴァレンティナ

 九番 佐伯静

 一〇番 鈴木真希

 一一番 市ノ瀬澪

 一二番 加藤亜梨紗

 一三番 武内攸樹

 一四番 可児純


 背番号はこの様になった。


 背番号に合わせてユニフォームも受け取る。

 普段の練習時には練習用のユニフォームを着用しているので、試合時は試合用のユニフォームを着る事になる。

 これからは、練習試合でも試合用のユニフォームを着て臨む事になるのだ。


 背番号は刺繍で、メッシュ生地だ。白色のユニフォームで、両胸に『鎌倉学館』と桃色で書かれている。帽子、アンダーシャツ、インナータイツも桃色なので、桃色で統一されているユニフォームだ。


 パンツは各自、ショートパンツ、ハーフパンツ、ロングパンツの中から好みの物を選んで着用する事が出来る。これはどこの学校も同じで、プロも各自の好みで選択出来る。季節によって変える者もいる。


 ちなみに、レン、セラ、千尋、澪、涼、静、攸樹の八人がロングパンツで、慧、純、飛鳥、恵李華の四人はハーフパンツ、そして亜梨紗、春香、真希の三人がショートパンツだ。


「私、早速着て来るっ!」


 亜梨紗はユニフォームと背番号を胸に抱き、駆け出して行った。


「あっ! ずるい。私も行く!」


 亜梨紗の後を追う様に、慧も走っていった。

 彼女の後ろ姿を追うと、あっという間に亜梨紗に追い付いている。むしろ亜梨紗を追い越していた。


「皆さんも一度着てみて下さい。サイズの確認をしなくてはならないので」


 早織に促せれ、亜梨紗と慧の事を呆れた表情で見送っていた面々も着替えに行く。


 全員ユニホーム姿になり、サイズを確認して特に問題はなかったので、折角だからとユニフォーム姿を写真に収める事になった。マネージャー二人も一緒に写る。

 早織にカメラを構えてもらい、写真を撮るのであった。


◇ ◇ ◇


 第九九回全国高等学校野球選手権神奈川大会の抽選会の日がやってきた。

 鎌倉学館野球部の面々は、一七人全員で抽選会場である神奈川県立文化センターを訪れている。


 何故全員で来たのかと言うと、地道に知名度を上げるのも良いが、来年の新入部員の事を考え、早目に飛鳥、澪、千尋の三人の存在を明かしてしまおうという魂胆だ。練習試合でも県外の高校を中心に申し込んでいたので、神奈川県の高校と対戦したのは横浜総学館の一校だけだ。なので高校野球ファンの間でも飛鳥達の存在はまだ行方不明状態である。


「さすがに多いな」

「魔境神奈川なので例年も多いですが、今年の参加校は一八九校ですからね」


 人の多さに涼が圧倒されていると、瞳が今年の参加校数を説明してくれる。


「Aシードが横浜高校、東峡大相模、燈煌学園、藤院学園の四校だよな?」

「はい。Bシードは慧央義塾、横浜早斗、横浜総学館、日大藤沢で、Cシードが横浜実業、横浜商科、平塚高校、藤沢奨稜、向常高校、相模原高校、創陽高校、湘南学園です」


 夏の神奈川県大会ではAブロックからDブロックまで分かれており、AシードはA、B、C、Dブロックの上側の端っこに入る。BシードはAシードの反対側の端に入り、Cシード8校は、それぞれのブロックの中央に入る。


 抽選が始まり、シード校が次々とくじを引いて行く。


 Aシードは横浜高校がAブロック、藤院学園Bブロック、燈煌学園がCブロック、東峡大相模がDブロックになった。

 Bシードは横浜早斗がAブロック、慧央義塾がBブロック、日大藤沢がCブロック、横浜総学館がDブロックに入る。

 そして、Cシードは平塚高校と相模原高校がAブロック、藤沢奨稜と向常高校がBブロック、横浜実業と湘南学園がCブロック、横浜商科と創陽高校がDブロックに入った。


「この中だと最良がCブロックで、次点がBブロックと言ったところですね」

「そうだな。強いて言えばだが」


 瞳が鎌倉学館が入るならCブロックが最も良いと言うと、涼も同意する。 


 そうして待っていると、鎌倉学館の番がやってきた。


「頼みますよ。主将」

「ファイトですっ!」 


 壇上に向かう涼に、慧と亜梨紗の二人は激励を送る。


 そして涼が抽選を引くと、結果は五五番。Bブロックの上側だ。順当に行けば四回戦でAシードの藤院高校と当たる事になる。

 その前の三回戦までで負けなければ、鎌倉学館がテレビに映る事もあるだろう。


 初戦の相手は厚木高校だ。去年の夏は3回戦まで進出している。部員数は五八人おり、鎌倉学館とは部員数に大きな違いがある。


 このくじの結果に鎌倉学館の面々は、中の下だと複雑な表情を浮かべた。Bブロックの下側なら、中の上、上の下の結果だったと喜んでいた事だろう。


「横浜総学館は逆ブロックですね」


 亜梨紗が横浜総学館と反対のブロックになった事を言及する。


「そうだな。彼女達と対戦するためには、お互いに決勝まで進まないといけないな」


 再戦を誓い合った横浜総学館と当たるためには、お互いに決勝まで勝ち進まなければいけないので非常に厳しいだろう。


「その前に藤院高校と当たる事になるし、他にもBブロックには慧央義塾、藤沢奨稜、向常高校もいるからな」

「そうですね」


 どちらにしろ勝つ進めばいずれ当たるのだから、早いか遅いかの違いだと、勝ち進めば良いのだと、レンが言うと、皆は納得して気を引き締め、学校に戻るのであった。

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