第2話 自己紹介
暫し待つと全員食堂に集合した。皆、レンとセラを見かけると一様に驚いていた。
一年は横一列に並んで座っていて、二、三年は対面側に座っている。ざっと見渡すとレンとセラを含めて一四人いる。
「さて、既に自己紹介した者もいるが、改めて、私が主将の岡田涼だ。少し早いが一年生諸君、入学おめでとう」
涼は一年生達を見渡して挨拶する。
「寮やその他の施設後で案内するが、正直寮は出来たばかりで私達も最近入寮したばかりだから、君達とあまり変わらずまだ慣れん」
その言葉で少し笑いがおきる。
鎌倉学館には各部の寮や一般寮もあり、自宅通学の生徒もいる。
二、三先生の先輩達は元々一般寮住まいや自宅通いだった。
野球部寮が出来たの機に移って来たのだ。自宅通いだった先輩も折角だからと入寮する事にしたそうだ。もちろん寮費は払わなければならないが。
「では、一年生にはそれぞれ自己紹介をしてもらう。名前や出身地、希望ポジション、やっていたスポーツなど教えてくれ。左側の君から順に」
涼に促されて、涼から見てレン達とは反対側の左端の娘が慌て気味に立ち上がって自己紹介する。
「か、
加藤亜梨紗という
そして、次々と自己紹介していく。
「
「市ノ
「
「
次にセラの番になり、立ち上がろうとしたところで涼が立ち上がり声を掛けた。
「次の二人が自己紹介する前に言っておく、二人はアメリカ生まれアメリカ育ちだから日本的な敬語や上下間系に不馴れだ。その事を理解した上で二人に接して欲しい」
涼はそう言ってセラに目配せする。
それを受けてセラは立ち上がり自己紹介する。
「セラフィーナ・ニスカヴァーラよ。アメリカで野球をしていたわ。ポジションは
セラの自己紹介が終わったので、次はレンの番だ。
「ヴァテンティナ・ヴィルケヴィシュテだ。私もセラと一緒にアメリカで野球をやっていた。ポジションは主に
そうして一年の自己紹介タイムは終わった。
◇ ◇ ◇
一年の自己紹介が終わった後、涼と春香に案内され、寮内や各施設の案内をしてもらった。
今は野球部員全員集合して親睦会の真っ最中だ。
その親睦会で残りの先輩達の名前も判明した。
この五人は二年との事。
飛鳥の名前を聞いた時、亜梨紗と澪と千尋の三人が驚いていた。
話を聞くと飛鳥は鎌倉ガールズの出身で中学二年の時と三年の時にU―一五日本代表だったらしい。しかも三年の時は代表でキャプテンを務めていたとか。
それを聞いた時、レンとセラは思った。彼女は何故此処にいるのだろうか? もっと他の強豪校に行くべきだよね、と。
何でも飛鳥が言うには、野球で将来を考えていなかったらしい。
国公立大学、難関私立大学に進学する事を考えていて、特進科のある高校に絞ったそうだ。
だけど、強くなくても良いから野球もしたくて、自宅から通えて特進科でも運動部に入部出来る高校が鎌倉学館だけだったので、数多のスカウトを蹴って鎌倉学館を選んだらしい。
彼女は地で文武両道を体現している才媛だ。
実際、成績も常に学年一〇位以内をキープしているとか。
「それで、澪ちゃんと千尋ちゃんは何で鎌倉学館に来たの?」
話の流れで亜梨紗が澪と千尋にも進学理由を尋ねる。
そう、レンが伯母に出した条件で獲得した有望選手が、スポーツ推薦で入学する澪と千尋の二人なのだ。
二人も多くの強豪校から誘われていたが、何故か鎌倉学館を選んだ。その理由を亜梨紗は尋ねたのだ。
「制服」
亜梨紗の問いに澪は答えた。
交流してわかった事だが、彼女は普段から口数が少ないようだ。
澪が言う制服とは、どうやら鎌倉学館の制服は女子に可愛いと人気らしい。
「あと、実家から近い」
彼女の実家は横浜なので、比較的実家から近い事も要因なんだそうだ。
そんな彼女は昨年のU―一五日本代表に選出され、左のエースとして活躍したそうだ。
多くのスカウトの中から制服で決めるというレン達にとっては英断をしてくれたのだ。断られた数多の高校には同情する。
「私は元々強い所に行くより、自分達で強豪校を作る方が面白そうだと思ったから」
千尋は伯母に自分達で強豪校を作らないか? と口説かれ、それ言葉に惹かれたとの事。
確かにそういう考え方もある。
強い所に行って当たり前の様に勝つよりも、やり甲斐も感じるかもしれない。
何にせよ、二人とも良く鎌倉学館を選んでくれた。
「純ちゃんはボクシングやっていたんだよね? 何でボクシング辞めて野球なの?」
「母があまり格闘技はやってほしくなさそうだったんだよ。だから格闘技以外で一番興味のあった野球に挑戦しようと思ったんだ」
亜梨紗は続けざまに今度は純に問いけた。
確かに母親からしたら、娘が殴られたりする姿はあまり見たくないものかもしれない。
「ボクシングをやっていたって事は動体視力良いのかな?」
レンはふと思ったので純に聞いてみた。
「どうだろ。水準よりは良いと思うけど」
「眼が良いのは武器だから練習次第で化けるかもね」
純の答えに千尋が面白そうに呟いた。
「だと良いな」
その呟きに純は嬉しそうに頷いた。
そうして時間は過ぎていき、各自割り当てられた部屋に引き上げて行った。
ちなみに人数が少ないので、皆一人部屋だ。来年以降部員が増えれば二人一部屋か三人一部屋になるようだ。
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