メリーゴーランド

ニコ

メリーゴーランド

 アミューズメントパークには夢や思い出がたっぷり詰まっている。サンタクロースも悲観的になるんじゃないかな。なんて妄想に浸りながら、若干上を向きつつ歩く。パレードの脇を反対方向に一人ぼっちで。すれ違う人々は、ただそこに立っているだけで幸せそうな表情をしている。家族、友人、恋人、私と同じ一人ぼっちでさえも皆、まるで夢の中に居るかような顔をしている。青空に撒いたビーズの様にキラキラ光るパレードも夢の中の住人の表情も、今の私には奇麗過ぎた。だから、夢の世界で一人取り残された私は歩いた。居るはずのない仲間を求めて。気がつくと、パレードを取り巻く人々の歓声が遠くに聞こえるほど歩いていた。辺りは薄暗く落ち着いた雰囲気が漂っている。取り残されたぬいぐるみの置いてあるベンチ、寿命の尽きそうな電灯に群がる虫、誰もいないのに回るメリーゴーランド。

 なんだ、仲間が居るじゃん。なんて、少し皮肉めいたセリフを吐いて私はメリーゴーランドに乗った。同情。それと、もしかしたら白馬の王子様が迎えに来てくれるんじゃないかという、幼く淡い期待と共に。

 メルヘンな音楽を鳴らしながら、私を乗せた馬は回る。辺りの景色が自然と視界に入る。取り残されたぬいぐるみ、消えかけの電灯。

 私そっくりじゃない。震えた声で囁く。皮肉を言えるなら、まだ相手を見返そうとするだろうが、現実を認めてしまっては自分がまけたことを認めるようなものだ。堪えていた分の大粒の涙が頬をつたう。嗚咽を殺して何粒もの雨を馬に落とした。何粒も、何粒も、大粒の雨を。

 世界が回るスピードで涙は乾く。そう歌ったバンドがあった。きっとメリーゴーランドも同じなんだろう。馬から降りる頃にには涙は乾いていた。


さぁ帰ろう。ひとりぼっちで。

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メリーゴーランド ニコ @NicoNicokusunoki

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