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警察から、息子が事件関係者になったと連絡を貰って、府警本部へ急ぎ駆け付けた。仕事を切り上げてきた能人は、事情を聴かれているだけだと聞き安堵する。
案内された先にいた長男を見つけ、肩を叩く――刹那、悲鳴を上げられて耳を塞いだ。
後ろを振り返った相成は、父親の姿を見て泣きそうになった。
「お父様でいらっしゃいますか?」
「あ、はい、五藤能人です」
強面の警察官から名刺を差し出された能人は、反射的に名刺を交換する。
次男の横に座るアルビノと思しき少女の姿を認めて、警察に説明を求めた。
「そちらの女の子が日本刀を振り回した後、近くにあったガラスパネルなどが割れたそうで。一応、念のために事情聴取を」
警察からの端的な説明に、能人の顔が強張る。
「それらは全て……本物でしたか」
頷いてくれるな。そう願った能人は、頷く刑事にへたり込みそうになった。
「理仁、最近なんか変わったことなかったか?」
父親の質問に、理仁は自分を指さして「なんも、あらへんけど?」と否定した。
「友達との写真、ネットに出てないか? 新聞とかにイベントの時に映り込んだとかは」
ネットトラブルなるからと、父から写真をネットへ上げるなと頑なに言われ続けていた。約束は守っていると、笑顔で頷きかけた理仁が固まる。
「あ……最近、テレビのインタビュー受けてん。それが、先日放送されたんかも」
尻つぼみになっていく息子の言葉に、能人が顎を摑む。
「この! なんで、お父さんとお母さんに確認取らない!」
「だって、面倒くさかってんもん! 友達におとんのふりしてもらったけど、そない怒ること?」
わずか二分。たった二分。そんな短い時間だったが、美少年とテロップが入ったのを、理仁は周りに自慢した。
気づかぬうちに、そこまで知恵を働かせていた息子に、能人は自分の浅はかさを呪った。
「そう……その子の名前は?」
横の女の子を見た理仁は、話しを逸らそうと笑顔で応える。
「フィオナ・フィッツジェラルドちゃん」
「すみません、彼女を別室に……念のため、身体検査もお願いします」
妙なことを言い出した能人に、平野が怪訝そうな顔をする。
「君の雇い主は誰だ。誰に、殺せと命じられた」
「……言っちゃダメって、言われてるもん」
否定もせず肯定した少女に、課内が騒然となる。こんな幼い子が? と真偽を確かめようとする疑惑の眼差しが交差する。
泣き出してしまった女の子に、そんなつもりはなかった能人は慌てた。
「あ、あぁ! ごめんね……泣かせるつもりじゃなかったんだよ。大丈夫大丈夫」
わんわん泣きじゃくる女の子に、能人はチョコを差し出した。
「大丈夫だよ。チョコ食べようか? あ、すみません、彼女を別室に」
女性刑事に連れられていく女の子を見送り、能人はため息をつく。
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