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部活に行く途中だった相成は、弟から電話を貰った。いくら聞いても要領の得ない話だったが、府警本部にいることだけはわかった。
府警本部を訪ね、事情を説明した相成は刑事に迎えへと来てもらっていた。中へ、中へと進むごとに漂う異様な雰囲気にただ圧倒されてしまう。
刑事課の応接ブースでお茶とお菓子を貰って、理仁は遅めのおやつをしていた。迎えに来たらしい兄の姿を見つけて、大きく手をかざす。
心配して来てみれば、のん気におやつをしている弟の姿に、相成は膝から崩れた。
「このバカ! 心配したんやぞ!」
弟が立ち寄った駅で銃撃戦があったらしい。ネット上の情報から、そのことに行きついた相成は姿をみるまで心配でたまらなかった。なのに、弟はのん気にお茶を飲んでいる。こちらの心配など気づいてもいやしない態度に、呆れた。
兄の目が自分の横に向いていることに気づく。理仁は女の子の膝をつついた。
「あぁ、この子な? 名前なんやったっけ?」
「フィオナ・フィッツジェラルド……あ、あああ」
訊かれて反射的に名前を言ってしまったフィオナは、そのまま頭を抱えた。
その動作に、理仁はどうしたのかと心配になって顔を覗き込む。
女性警官が一人、強面の男と能面のようでどこか薄気味悪い男を連れて部屋に入ってくる。
「失礼します。公安の福島警部補と平野警部補をお連れしましたが」
「あ、こちらに」
課にいた刑事が、その言葉に応じて立ち上がった。
刑事課という単語だけでも怖いのに、聞きなれない単語の部署はもっと怖い。理仁も相成も、誰だろうと顔を見合わせた。
「平野と福島といいます」
顔が強張ったまま動かない子供たちに、平野は雰囲気を和らげようと微笑む。
「怖がらせるつもりはないよ。君が、五藤理仁くん?」
「はい」名指しされた理仁は、小刻みに何度も頷く。
えっと? とこちらを見る人に相成は身をすくめながら、名を名乗った。
「兄の五藤相成です」
「相成くんか、そこにかけて……彼にもお茶を」
表情しか笑っていない。そんな相手からお茶を貰っても、飲める気がしなかった。それでも、相成は慌ててソファーに腰かけて身構えた。
横にいる強面の顔をした福島は、注意深く二人を見つめた後、一時間弱で集めた資料を取り出した。
小さな女の子が日本刀と思しきものを振り回している。連絡デッキのガラスパネルが次々と割れている。
相次いだ市民からの通報を受けて、最寄りの警察署に出動命令が下った。すぐに、状況の異様さに県警本部のお出ましと、あい成ったわけである。
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