部室漁り後、バイク用品店へ
今日は宗則を捕まえて部室漁り。本当は講義があったらしいが快く付き合ってくれている。私も講義があったけど、聞かれていないので話していない。
割れたカウルの補修部材を探し、硬化剤と混ぜることで固まるタイプの板金パテと、成分が揮発して固まるタイプの
その他に、紙やすりやコンパウンドなど、今後使えそうなものをとりあえずまとめて借りることにした。
FRP補修用品を探していた時に崩した段ボール箱達磨落としを元通りに積み上げる。一番上に置く達磨さんは車種不明の薄っぺらいFRP製シート。
「宗則、このシートって何用?」
「シート自体は良くある汎用だよ。最初CBについてたんだけど、ここにCBのノーマルシート残ってたから戻した」アメリカの草レースでダートトラックっていう砂地をぐるぐる周回するレースなんかで使うシートらしい。宗則曰く、日本でも草レースでロードバイクに使うのが流行っていたとか。
宗則はただ適当に物が積み上げられている部室の七割方はどこに何があるのかを把握しているそうだ。以前数回玄関から覗いたことのある宗則の部屋も、それは酷い散らかりようだったが、そちらも五割方把握しているという。
その話を初めて聞いたときは、今後何かの間違いで彼女が出来たりして彼女が勝手に部屋を片付けた時に、逆切れとかしちゃうのではと、いらぬ心配をしてしまった。
捜索前に、ついでに適当な社外ウインカーでも見つからないかと期待していたが、事前に宗則が「多分ないと思う」と言っていた通り出てこなかった。補修材料が概ね揃っただけでも良しとしよう。
残る部材、ウインカーとアルミ補修用の金属パテを調達するため、大型バイク用品店に行こうということになり一度学食へ。
学食にはヒロシとユキ、レアキャラのトモくんがいた。
「久地先輩、キョウさんお久しぶりです!」私と宗則の顔を見るやいなやこの律儀。
トモくんは他にもサークルを掛け持ちで参加していて、バイク部にはツーリングの企画が上がりそうな時期だけ顔を出すスタンス。私はツーリングは半分くらいの参加率だからほとんど交流がない。にも関わらず、キチンと挨拶してくれるかわいい後輩。ユキの毒牙にかからないか心配だ。
どうやらトモくんは次のツーリングのプランとかの話が上がっていないかを探りに来たみたいだったが「ごめんねー、サークル代表がアタシのせいで今はバイクいじりモードに入っちゃってるから」と事情を説明した。そこからは私の転倒についてトモくんの質問攻めに遭い半分くらいは答えていたが、いい加減面倒くさくなってきた頃、絶妙のタイミングでトモくんの頭に「うるさい」と言って、孝子の遅めの昼食のお盆がのせられた。いつもはパン食の孝子が珍しくB定食。
「何の話?」と孝子っぽくない切り出し。いつもは他人の話題なんて気にしないのに。
「内容聞いてから突っ込んでください」ともっともな意見のトモくん。これからバイク用品店に行くんだけどと、話の腰を見事に折りにくる宗則。
「あ、私も行く。ブレーキキャリパーとパッド見たい」と孝子。
「プチ金欠なのでパス」「私も」とヒロシとユキ。結局二人でラーメンツーリングに行ったので金欠だとか。
「キョウさんのバイクが直ったらツーリングですよね? その頃にまた顔出します!」と元気よく立ち去るトモくん。
なんとなくだが、このサークルはリアルコミュニケーションを重視している。メールやLINEで済む話も、急ぎでなければ会うまで話さない。最初は変な奴らの集まりだと思っていたけど、いつの間にか私も染まってしまった。
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