株式会社人間産業
@azuma123
第1話
児童販売機で4歳の女の子を購入した。数年前まではとんでもない金持ちにしか手の届かない代物であったが、ここ最近は五千円もあれば手に入る。よくある性処理道具よりは高いが、質がいいためときたま使用している。先日、日本の人口は五京人を超えた。
人身売買が認可されてから、日本の人口は驚くほど増え続けている。産めば売れるのだ。人間を生産する業者も多数発生し、今や人間産業は日本の経済を支える柱になっている。多量に発生していた拉致や誘拐なんかも最近はめっきり聞かなくなった。人間の数が増えたことにより、物流価格が急激に下落したからだ。犯罪のリスクを犯してまで手に入れるほどのものでもなくなった。事実、以前までは数百万もしていた4歳の女の子を、五千円弱で購入できている。ただし、人口が増えたといっても普通の生活を送っているものはその中の二割にも満たない。大半は売買専用であり、ただ餌を与えられて生きているだけだ。売買のために産まれた人間が、また売買専用の人間を産む。そういったシステムをいち早く構築したのは、「株式会社 人間産業」の山本さんだ。今回は、彼について話をしていこう。
人身売買が認可されてすぐ、山本さんはインターネットで人間の通信販売を立ち上げた。それは、小さなアパートの一室から始まった。人間の価格は平均八千万円。人権団体が相変わらず「命に価格はつけられない」と吠えていたが、一人産めば八千万円だ。女性は男性を選ばずこぞってセックスを求めたし、産んだ子供をバンバン売った。山本さんも自分の周りにいる女性を複数人集め、自分の種で子どもを孕ませ、産まれたものを次々と売っぱらった。女性には買取金額の半分を渡し、産後のフォローもしていたという。最初こそ高額で取引されていた人間だが、出生率が上がり出すとすぐに飽和状態となった。価格は著しく下がり、売れ行きも悪くなった。人間であればなんでも売れる、という時代は終わったのだ。山本さんはこれまで貯めた財力をもとに、工場を購入。人間飼育用の施設を作った。
売買専用の人間といっても、顧客が求めるものはさまざまである。産まれたばかりの乳児を欲しがるものもあれば、美しい女児や男児を欲しがるものもいる。IQの高い秀才が欲しいものもいれば、言葉すら発せない低い知能を欲しがるものもいるのだ。ただし、二十五歳をこえたものはほぼ需要がなくなるため、人間出生のため種や畑になるか、廃棄される。種や畑になるには「美しい」とか、「知能が高い」なんていう特色が必要だ。山本さんは、顧客需要に応えようとさまざまな人間を作った。いたるところから人間を購入し、あらゆる人間と交配させていった。ホームページに並ぶ人間のバリエーションは数億に上り、ついに、山本さんの工場でまかなう人間生産数は、この国の出生率の半数を超えたのだ。
人間の廃棄量もうなぎ上りとなった。需要が限られているため、でき損ないは破棄するしかない。それに法律が牙をむいた。今までもそうしてきたが、こうも数が多くなると目をつむれなくなったらしい。現状、売買専用の人間は家畜と同等の扱いをされている。ものと同じだ。しかし、完全に人権がなくなっているわけではない。彼らは人である。そういう世論が、山本さんの人間産業を相手に裁判を起こすことになった。みなさんは覚えているだろうか。十年前に行われた裁判、「人間革命」である。裁判の結果は山本さんの勝訴だった。世の意識は、売買専用の人間を「家畜」としたのだ。その後、山本さんは語った。「人間は家畜ですよ。人間に使われるために、生まれてくるんです」
株式会社人間産業 @azuma123
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