scene.19
《Jiin.cut》
腹筋という名の鼻キスをする為に
マットがある所へ呼ばれた。
確かにキャラ設定とか、
言い方が悪かったかも知れない。
けど、誤魔化すのが上手?僕が?
いつもグク君の前で赤くなってしまうのに?
「誤魔化すのが上手なら、顔なんて赤くしないよ」
「キャラ設定だけで、
こんなにムキになりませんよ」
「おっと?どうしたのかな?
少し喧嘩でもしてるのかな?」
軽く言い返すとグク君も言い返してきて
それを聞いた司会者が
心配してくれてるのかも知れないけれど、
楽しそうに話しだす。
「……」
「そんなふたりでも
仲良く鼻キスをして貰いたいと思いまーす!
グク君は腹筋得意そうなので…
ソフトな10回か、濃厚な3回…どっちにします?」
ますます顔を赤くしたくない。
別に誤魔化す為にしてるわけじゃないし、
赤くなって誤魔化せているわけないのに。
…出来るだけ恥ずかしくないように
10回でもソフトの方がマシ…
「ソフトな10回…」
「濃厚な3回で」
僕が答えても、グク君の大きな声でかき消される。
「はい!濃厚な3回で、ではお願いしまーす!」
「……」
マットに寝転ぶグク君の脚を流されるまま抑えた。
「……」
自分の視線が定まらずにいると、
真っ直ぐに見つめてくるグク君と視線が重なる。
顔にグク君の両手が伸びてきて
鼻キスが出来る位置に引き寄せられた。
…もうキスでもされるんじゃないかって距離。
「そこで動かないで下さい」
「わかってるよ」
「濃厚ですから」
「…3回ね…」
「準備出来たらいつでもどうぞー」
僕の小さな声よりも
何倍もの張りがある司会者の声が響いたと思ったら
グク君は軽々腹筋して上半身を起こし、
ゆっくり顔を近づけ
鼻を右からも左からも擦り付けてきた。
…'キャラ設定'とも思うだろ?
こんなに平然と、いつもいつも…
周りが喜ぶような行動や、
僕を戸惑わせる行動をしてくるんだから…
「1回ー!」
心臓が跳ねて飛んでいきそうになるけど
司会者のカウントの声で
現実にギリギリ引き戻される。
また寝そべってから上半身を起こし…
ゆっくり擦り合わせてくるグク君。
僕は……もう顔が赤くなってしまったかな…
「2回!キャ♡ジーンさんそんなに照れないで!」
司会者に言われて
ますます赤くなってしまったはず。
もう恥ずかしくて涙まで出そう。
こんなの…あと1回でも無理だ。
少し逃げるように顔を動かすと、
グク君の右手が伸びてきて
熱くなる頬を包まれた…と思った頃には…
鼻キスじゃなく、しっかり唇が重ねられた。
「3回!ってその角度だと唇重なってません?!」
…司会者のカウントの声、
何かを言っているという事は分かったけど
内容は入って来なかった。
《バンク.cut》
あいつら…カメラの前で…
特に盛り上がる、ジーンとグク君の絡み。
ドラマの放送はまだ序盤だけれど、
彼等はとても人気が出ていて
スタッフや俳優陣からの注目度も高い。
今日が一般人の観客もいる収録だったら
騒がしくて収録にならなかっただろう。
半分呆れるように眺めていると、
鼻キスは執拗だったし
最後に唇へのキスまで披露していた。
…まぁ…一方的なグク君だけの頑張りだろうけど。
司会者や他の俳優陣はざわつきながら観ている。
何秒たっただろう。
グク君が皆に笑いながら顔を向け、
ジーンの手をとって一緒に立ち上がろうとすると、ジーンはグク君の手をペチン。
「っ」
明らかに怒っている。しかも顔を真っ赤にして。
「ジーン君、そんなに照れないで」
「照れてないです!!」
赤面で司会者の言葉を大袈裟に否定するジーンを
グク君が後ろから抱きしめた。
……ん?
後ろから抱きしめるグク君のスマートな動き…
2人くっ付いてるのが
あまりにも自然なんだが??
あんなに恥ずかしそうにするジーン、初めて見た。
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