遅くなってしまいましたが拝読しました。
『葉桜と魔笛』という作品と桜子の持つ悩みがうまく絡んでいて、短編として綺麗にまとまっていると感じました。
また、『葉桜と魔笛』を私は読んだことがないのですが、作中で語られるあらすじからどんなお話なのか想像できて、『葉桜と魔笛』を既読でも未読でも楽しんで読むことができる作品になっているのではと思いました。
個人的には、皐月の電話番号をわたしながらも、あくまで最後の決心は桜子に任せる、葉太の一歩引いた姿勢に好感が持てました。
姉妹の関係は、これからもっと明るいものになっていくのでしょうね。素敵な作品をありがとうございました!
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
プロットありきの企画だったので、「葉桜と魔笛」の話から桜子の悩みが飛躍してはいないかと、はらはらしていましたが、そういっていただけて嬉しいです。
作中での「葉桜と魔笛」の作中でのあらすじは、色々と削っているので、伝わったのは喜ばしいのですが、ぜひとも一読していただけたく勝手ながらに思っています。私は正直、この作品を書くまで一回くらいしか読んでいなかったのですが、非常に印象的でした。
葉太は過度に生徒に関わらないようにしている教師という立ち位置だったので、あくまでサポート役に徹してもらいました。それが良い効果を生んだようです。
姉妹の未来もより良いものになっていくのでしょう。私もそう信じています。
「葉桜と魔笛」を作中人物たちと品評しつつ、その読み解きが作中の展開を促していく。それ自体がメタ的構造になっているうえ、「物語の外側」という言葉がそのメタ的構造をさらに補強します。つまりこの作品にも外側があって……と、自然と想像をふくらませる、上手な仕掛けだなと思いました。
太宰中期の明るめの作風の、基本的には人間を信じるような視線に誘導されて、最後の大団円にたどり着くような気がします。この響き合いがとても心地よく、葉桜の清々しさを強調します。
ひさしぶりに太宰の短編をあれこれ読んでみたい気持ちになりました。
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
太宰がお好きな方からそのように評価されることはとても嬉しくて心強いです。
それから、自分では気付かなかったメタ的構造の指摘にも驚きました。
文豪の作品をお借りするのなら、生半可な作品にはできないと思っていましたが、何とかまとめることができて良かったです。
あまり人物や作品世界の背景やその後を語らない作品が好きなので、その思いを込めていましたが、中々共感が求められないので現状でもあります。「物語の外側」という言葉がそれを受け入れやすくしていたのならば、こちらとしては嬉しい誤算です。
「知らなかったけれど『葉桜と魔笛』を読んでみたくなった」という言葉はいくつかいただきましたが、太宰の短編を再読したいというお言葉も非常に喜ばしいです。ありがとうございました。
個人的にどこが悪いとも言えない読後の良い物語でした。僕はもう葉太は皐月との未練はもうなくて姉妹の未来を心から応援してるんだなと思ったんですけど他の方のコメントで「あぁ、こういう感じかたで未練が見えるんだ」と思って感心しました。それぞれの感じる切り口で感想も変わるんですね。
僕は葉太は誰かに言われない限りはSNSは見ないだろうなと思いました。
朝に熱いコーヒーを飲みながら落ち着いてもう一度読んでみたい物語ですね。
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
葉太の未練に関しては、色々な読み方があるんだと、私自身様々なコメントで感じていました。
語りでである葉太の心情は過剰に書かないようにしているので、作中の言葉ではないですが、彼のその後も読者それぞれで想像してもらえれば幸いです。
再読したいというお気持ち、とても嬉しいです。改めましてありがとうございました。
此度、企画にご参加頂きましてありがとうございます。
文芸読書している気分になりました。とても読みやすく、端的で、好感が持てます。ほかの方も仰っていますが、共感を押しつけていない所が心地よかったです。
葉太の対応は最善だと思います。出来ることはして、その上で選択を相手に委ねるのは素敵な大人の男性だと思います。
桜子がそれに素直に応じるのも良いです。
▶︎ 耳の痛いほどの沈黙が流れた。
この表現も流石でした。
「物語の外にもーー」が、葉太の立ち位置を示しつつも、様々な人物にそれが適応されていて、納得感に繋がっています。
桜子の手紙は特に良かったように思います。
全体を通して全編より後半の方が「出来が良い」印象を持ちました。それは前半へのコメントした件が解消されれば、双方ともとても高い品質だと思います。心が穏やかな時に執筆されたのではと想像します。
テーマがしっかり盛り込まれていて、ちゃんと桜子に伝えられていて、さらに桜子がそれを人生に活かすことが出来ている。ここが本企画の肝的なテーマでもありましたから、それらが完璧に成り立っている本作は素晴らしいと思いました。コメントを見るに、読者の皆様にもしっかりと届いていると思います。
とても良質な作品でした。
改めまして、此度、企画にご参加くださり、本当にありがとうございました。
作者からの返信
改めまして、コメントとレビュー、ありがとうございます!
いつもいつも、小説を書いている時は「もっといい表現があるのではないか」「もっと描ける部分があるのではないか」と葛藤しているので、読みやすさを評価してもらえるのは非常に嬉しいです。
教師という立場はシンプルな分、関りが難しいと思います。「恩師」という言葉で示される通り、彼らの言動が生徒の指針になりえますが、人生の中で見ると共に過ごした時間は短いです。
そんな中でも、押しつけがましくなく生徒の成長を促して、見守る。そういう教師像を、葉太を通して描けたと思います。
桜子も、そんな葉太の言葉だからこそ、勇気をもらえたのでしょう。
会話が途切れた瞬間、緊張感と沈黙の表現は、結構色々考えているので、褒められるのはこちらもまた嬉しいです。
思いついたものの、「葉桜と魔笛」の読み方と桜子の家族の悩みがどのように関連付けようかと思っていましたが、「物語の外側も、人生がある」という一言が閃いた瞬間、妙な話ですが手ごたえのようなものを感じました。
「葉桜と魔笛」も手紙がキーとなっているので、桜子の答えも手紙という形で示すことになりました。それも良い効果を生んで、安堵しました。
後半は、日曜日に一気に書いたので、前半との違いはそこなのかもしれません。
自分の執筆方法をちょっと考えなおしたくなりました。
プロットはすでに提示されていて、テーマは自分で考えて書くというのは初めての経験でしたので、私の知らなかった引き出しを開けるようで新鮮な気持ちでした。
自分が本を読みながら、教えてもらっているものを盛り込めたので、私自身は非常に満足しています。それが読者にも伝わっているのなら、これ以上の望みはありません。
こちらこそ、再度になりますが、素晴らしい企画、ありがとうございました。
抑揚を押さえた落ち着いた筆運び、夢月さまらしい物語でした。
ちょっと違和感があるとすれば、作中での時間の経過が長すぎないかということです。高校生の1年は長いと思うのですが、最初の姉がいるかもしれない、という告白から時間をかけ過ぎのような気もします。
それと、これは私の印象の確認のための質問ですが、「姉妹の人生から、僕はすでに退場した身だから、想像するしかできない。」というのは強がりで、葉太はまだ皐月に未練がありますか?
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
私らしい筆致で書けて、満足しています。
作中の時間経過のご指摘、ありがとうございます。
時間経過はどうしようかと悩んだのですが、桜子の両親と皐月との話し合いが難航してた結果、一年ほど経ってしまったと考えています。詳しくは書いていませんが、桜子の両親が離婚して十二年経ち、離婚の理由も不倫によるものなので、妥協点を見つけるまで少々揉めていたのかもしれません。
葉太の方に皐月への未練があるかどうかについてですが、このような質問は盲点だったので驚いています。
もしかしたら、本人が無自覚なだけで未練があるのかもしれません。それこそ、物語の外側ということで、濁してしまうことをお許しください。
素晴らしい完成度だと思いました。無駄なくすっきりと、それでいて余韻もあって素敵です。しっとりしていて読みやすく、プロットを丁寧に踏襲しながら自分の作品に仕上げていると感じました。『葉桜と魔笛』読んだことないのですが、なんとなくイメージできましたし、読んでみたいと興味も出てきました。題材としてうまく機能していると思います。お見事!
作者からの返信
コメントレビュー、ありがとうございました!
描写はもうちょっと頑張ってもいいのではと思えるのですが、無駄が省かれているというのなら、これで良かったと思います。
プロットの完成度が素晴らしかったので、出来るだけ踏襲したいと最初から目論んでいました。ただ、プロットが決まっている分、自分で主題を決めなければならないというのがプレッシャーでしたね。
「葉桜と魔笛」は本当に素晴らしい作品です。作中のあらすじ紹介では描かれていない部分も奥深くて、私は何度も読み返しながらその完成度に感動していました。
軽い気持ちで引用できないなとは思っていましたが、うまくいって嬉しいです!
はじめまして、企画からきました。
物語の外にいる人物が葉太のなのですね。で、語りは葉太。
そうすると、この物語に客観性がでて、大人の仕上がりになっているなと思いました。
感情をグイグイおしつけ、共感を促す物語とは一線を画しています。
おもしろいものがたり、ありがとうございました。
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
物語の中核にいる人物ではなく、そこから外れたところにいる人が語りになっている作品が好きなので、葉太の一歩引いた立ち位置に影響しているのだと思います。国語教師という立場も合っていました。
題材に「葉桜と魔笛」を引用しているため、文学的にしようと頑張ったので、それが「大人の仕上がり」に作用しているのかもしれません。
こちらこそ、楽しんでいただきありがとうございました。
静かで落ち着いた語り口で、雰囲気があっていいなと思いました。「葉桜と魔笛」を上手に絡めていて、凄くまとまっていて面白かったです。
最後の落としどころ、「きっと僕は知ることができないだろう」の部分が「SNSは?」という疑問点が浮かびました。「知らなくてもいい」くらいのバランスがいいのかな、と思います。ちょっと考えてみました。
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これから二人は、どう歩んでいくのだろう。だが、それは知らなくてもいい。姉妹の物語から、僕はすでに退場した身なのだから。でも、時々は想像してしまうのだろう。
-略-
蕾は春の気配を知らせる。僕は下手糞な口笛を吹きながら、二人の未来に思いを馳せた。
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みたいな。ちょっとみれん感と笛推しのしつこさが出ちゃいますね。笑。こんなやり口もあるという事で。
大変楽しませていただきました。ありがとうございました。
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございました!
起伏がない分、退屈にならないと思いましたが、それがプラスになったようで嬉しかったです。
「葉桜と魔笛」に関する話を書きたいと、大分見切り発車で書きましたが、何とかまとめることができて良かったです。
ご指摘いただいた、「知ることはできないだろう」という点ですが、葉太は皐月のSNSはフォローしていない状況を想定しています。情報としてみることはできても、実際に彼自身に話しかけられているものではないので、そのような言い回しになりました。
非常に回りくどかったという点は否めませんが、葉太自身には未練がないということをはっきりさせるためにも、このままにしておこうと思います。
ラストシーンの描写、このような切り口もあるのかと勉強になりました。ありがとうございました。
物語の外側にも、人生がある。というのが、とても印象的でした。もともとひとつの物語を多角的に考えるのが好きで、書き手としても本編とは別のキャラ視点から、ある一場面を(スピンオフとして)書いたりすることも多いので。
しっとり落ちついた、心地いい物語でした(#^^#)
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
主題が伝わり、ほっとしました。極端な話、すべての小説に終わりはないのではないのではないかと考えているタイプなので、読んだ後でも「もしかしたら」とかいろいろ想像してしまいます。
スピンオフも大好きです。ちょっとすれ違っただけの人の人生を描くっていうのも、面白いと思います。
心地良さを感じていただいて、何よりでした。
編集済
葉太と皐月さんの仲は戻らなかったのですか。うーん。葉太が皐月さんに連絡を取った場面が非常に気になるのですが、それこそ物語の外なんですね。
全体的にとても落ち着いた感じのお話になっていました。純文学指向でお話の書ける人はそれだけで尊敬してしまいます。
やわらかい文章と的を外さない描写、とても勉強になります。
あ、葉桜と魔笛も読んでみますね。
作者からの返信
コメントとレビュー、ありがとうございます!
葉太と皐月の恋愛要素を入れると、主題がぶれるのではないかと思い、そこは省きました。その後こそ、ご想像にお任せしますということで……。
純文学志向とは、恐れ多いです。これまでの読書経験が生きたのかもしれません。
「葉桜と魔笛」は個人的には名作だと思うので、こちらがきっかけに読んでいただければこれ以上のことはありません。
文章が豊かで物語というものを、愛しているんだなというのが伝わってきました。
あとはやっぱり判断を委ねてるところが、その姿勢がいいですね。
短編として完成度が高いお話でした。
こちらも精進しなくてはと反省し切りです。
作者からの返信
大変遅くなりましたが、コメント、ありがとうございます!
近代文学の傑作である「葉桜と魔笛」を題材とするならば、中途半端な文章では許されないなと、気合を入れて書きました。
主人公の葉太は、教師なので生徒を導くという立場ではありますが、それ以前に「個人」を大切にしているので、判断を任せるという決断を下しました。
「完成度が高い」と言われて、恐縮しています。
こちらも、この短編をさらに超えるようなものを書けるように、ますます精進を重ねていきたいです。