お題「雑音(ノイズ)」
ある人嫌いの演奏家の男がいた。
男は音楽を至上の音とし、それ以外は雑音だと吐き捨てるのが持論だった。
雑音を排除するため、公演以外は自宅に籠りきりの生活を送っていた。
そんな彼ではあったが、音楽の才能は素晴らしいものであった。
ある演奏会が終わったあと、男はひどく怯えた様子で逃げていった。
すれ違った職員に話を聞くと、雑音が、雑音が、とうわごとのように呟いていたそうだ。
異様な姿に声を掛けたが、男はさらに恐怖を覚えた表情を見せ、耳を塞いで会場の外へ行ってしまったという。
男の去った劇場では、未だ会場中の観客が拍手をし激励の声をあげていた。
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