夏の匂い
小倉さつき
夏の匂い
夏の匂い。それは、プールの塩素の匂い。
シャワーを浴びても体に染み付いて取れない匂い。
香る度、まだ冷たい水の中にいるような気がした。
日差しの暑さが夏の訪れを感じさせる。
夏の匂い。それは、噎せ返る土と草の匂い。
子供の頃はこの匂いがたまらなく苦手だった。
大人になって、この現象に名前があると知った。
暑さに対する、草木の賢さの象徴なのだそうだ。
夏の匂い。それは、屋台から昇る焼きそばの匂い。
見慣れた通りが賑やかな明かりで飾り付けられ、
あちらこちらから美味しそうな匂いが漂ってくる。
そのなかでも一際煙が上がっている屋台。
見つける度に、お祭りに来たのだと実感していた。
夏の匂い、それは、花火のあとの火薬の匂い。
綺麗な光を見せたあとに残る、灰色。
わたしはこの香りが好きで、それでいて寂しい。
香りと共に、夏が終わってしまうような気がして。
夏の匂い 小倉さつき @oguramame
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