コピーで始まるドッペルゲンガーゲーム

ゲームプレイヤー

ゲームの前に

 4月の始業式があった日。突如として事件が起きた。

 暗くなった階段の踊り場で1人の少年が少女に覆いかぶさるようになって倒れていた。

 雲から月明かりが漏れて事件の起きた現場を照らす。

 少年の方は目立った怪我はなく意識もあるのに対し、少女は頭を軽く床にぶつけたようで意識がない。

 雲はその事件から目を逸らすように月明かりをかくして、踊り場へ当たる光を遮った。


 4月13日月曜日 7時00分

 この学校は何故か無駄に春休みが長い、これがもし高校生や大学生だったら勉強やアルバイト、親友と遊びに行ったり、彼女がいる人はデートしたりなどして、この長ったるい春休みの時間を有効活用したりできるのだが僕は出来ない。

 休みに入って間もないころ親友に大阪に遊びに行かないかないかと誘われ親にそのことを話したところ友達と遊びに行くならば自分のお金を使いなさいと言われて、財布さいふを見ると全財産が合わせて240円しかない現実を目の当たりにして挫折ざせつ

 ならば自分でかせげばと言う人もいるかもしれないがまだ中学生なのだ。アルバイトは当然できない。

 ならばこの機に勉強をと思うがまだ中学生なのでそれ程難しいような科目もない。さらに、彼女もいないのでラブコメのような展開も来ない。

 そんな現実を目の当たりにした僕はこの休みをパズ〇ラやモン〇トなどのスマホゲームとライトノベル、ア〇ゾンプライムのアニメ、映画などで時間をつぶすしかなかった。

 そして今日ようやくその退屈な時間から解放された。待ちに待った始業式の日である。

 アラームの鳴る前に目が覚めてしまい。仕方なく早めにリュックの中の持ち物を確認する。そして昨日、父さんに教えてもらったばかりのアイロンでしわを伸ばしておいたシャツとブレーザー、とスラックスをロッカーから取り出す。

 久しぶりの制服なので少し苦戦して着終わると鏡に自分の姿を映す。

 墨のように真っ黒な髪と同じく黒い目そして整った顔に少し色が濃い紺色のブレーザーと黒のスラックス。どこからどう見ても模範的もはんてきな学生だ。

 どこかずれてないかと確認していたところ。枕の横の時計が勢い良く鳴る。慌ててアラームを止めると。母さんがドアを開けて部屋に入ってきた。

「ゆう~起きた~起きないと遅刻す…」

 のんびりとした声が途切れた母さんと目が合う。

 するとこの親、息子の前で泣き始めやがった。

「何泣いているんだよ!」「だって~あの朝は必ず起こしに来ないとずっと寝ていたたゆうくんが起きているなんて~グスン。お母さん嬉しくて~ズビビッ!!」

「ひどいな!!僕だって自分で起きたこと位あるわ!!」

 そんな風に思われていたことにショックを隠しきれずに大声で言い返してしまった。ヤバいなんかこっちも泣きそうに…て!泣いている暇なんてなかった!

 ポケットに入れていたスマホを急いで立ち上げ画面の時間を見る。

 そこには簡素な数字で『7:46』と書かれていた。

 はっきり言って遅刻寸前である。

 あの後朝食も食べずに家を飛び出し学校に向かって走った。初日から遅刻したアホなどというレッテルを貼られなかったのは幸いであった。

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