まおう が あらわれた !
ものぐさ
プロローグ
始まりの始まり
「勇者が生まれただと?」
「はい。歴代の勇者が生まれ出る町にて、スパイとして送り込んでいた村人から、そう報告が上がっております」
「ククク。ようやく我が一族の怨敵が現れおったか」
「はい。貴女様と同じ、七代目となります」
「そしてそれが、奴らの最後である」
「はい。歴代魔王の中でも、史上最強と呼び声高い貴女様の魔力の前では、いくら勇者とて適いませぬ」
「ならば声を上げよ!
余を讃えよ!
貴様ら魔族の血を沸かせ!
憎き女神へ勇者の首を差し出し、我らの悲願と成せ!」
「「「ウオオオオオ魔王様万歳!! 魔王様万歳!!」」」
「「勇者に死を!! 我ら魔族に栄光を!!」」
「魔王様ぁぁぁああ! 今日も可愛いぜ!!!」
「おい最後誰だ今の」
「は。後で処刑しておきます」
「……ゴホン。あー、で、勇者はどのような姿をしている」
「はい。歴代の勇者達の面影が残ると報告が続いておりますれば。
非常に元気の良い
「ほう。奴らは此度も男か」
「『人間の赤ちゃんって可愛いですね! 母性に目覚めそうです!』
と締められております」
「そやつを疾く帰還させよ。望み通りイチモツをもぎ取ってやる」
「は。そのように」
「……ところで」
「はい」
「余は生まれてまだ3ヶ月となっていない訳だが」
「仰る通りでございます。
魔王様の一族はいずれの世代を問わずその御身のまま顕現し、世界を混沌に貶める存在でありますれば」
「記憶もあるな?」
「歴代魔王の記憶を連ねての御生まれにございます」
「何故勇者の一族はそうではないのだ?
先代どもが、勇者が成長するのをただ指をくわえて待っていたのは何故だ?」
「それが世界の理でございますれば」
「我ら魔王が倒される事がか? 馬鹿げているな」
「確かに、そうやも知れません。
しかし、如何な先代の魔王様方と言えどそれに前例はございませぬ」
「ならば余はどうだ?
先代どものように、余が勇者に敗けると思うか?」
「お答えできかねます。
ただ、貴女様は歴代最強と称せる御方でありますゆえ」
「フフン。
で、あれば試してやろうではないか」
「……何か策が?」
「簡単な話ではないか。
勇者を、まだ赤子の内に滅してしまえばいい。それだけの事」
「……それは」
「ん?」
「いえ、何でもございませぬ」
「転移魔法発動。目的地は──勇者の村、その母屋だ」
「やはり」
「んん?」
「いえ。
赤子と言えど、中身は勇者にございます。
くれぐれもお気を付けなさいますよう……」
「クク、赤子相手に何を気を付けよと言うのだ。
ではな。吉報を待つが良い」
「は。いってらっしゃいませ」
******
「行ってしまわれた。
先代の方々でも、前例はないと申し上げたばかりですのに。
……何とも、都合の良い箇所だけは抜け落ちるものですね。
世界の理には、あの勇者でさえ抗えないのですよ。魔王様……」
「執事さん。魔王様はどちらに?」
「勇者の村へ」
「……あぁ。やっちまいましたね」
「えぇ。
此度も、どの様な形で作用するか分かりません。
我々も準備に取り掛かるとしましょう」
「了解っす。
っかー、せっかくの魔界始まって以来の
残された方の事も少しは考えて欲しいっすわ」
「そう思うのなら口よりも身体を動かすことです。
少なくとも、まだ終わってはいませんよ」
「へーい」
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