第77話 頑なに拒否するMagic Loaders

 で、マジック・ローダーのお三方はどこいったんだ?

 サーイはブラック上司ベルツェックルのおそ~式に行っちゃったし。

 俺らは俺らで探すしかないかな。

 もう夜になってたから、ザガリスタの安宿に泊まって、次の朝。


「ていうか、アノルグさん、あんたは狙われないですかね?」

「ひっひっひっ、いちーち気にしていることを突かんどくりゃ。見たじゃろう、ベルツェックルときたら、わしをマジック・ローダーと見なしてなかったじゃろう。わしゃいつまで経っても中途半端の半人半魔……ゾジェイ連中もわしがそーとは知らんのじゃろな」

「すいません……いいんだか悪いんだかですね」

「そんなことより、お三方が行きそーな場所を当たってみるとすっかの」

「どこですか?」

「おっとその前に。ガイトゾルフの娘がいなけりゃおまいさんは丸腰じゃろが。わしが防御魔法でもこしらえるかの」

 そう言って、アノルグは、町からブランクの杖を数本入手。フィリスタ対物理防御マルリスタ対魔法防御などを呪胎した。あと、バンドール? なんだその魔法は。まあいいや、これで刺客いのが来ても大丈夫だろう。


「うひゃー、乗りにくいんじゃー」バウザスに乗るたび毎回言う。


「で、あいつらが行きそうな場所て……」

「ゾルゾーサじゃよ。あそこは人こそ住んでおらんが、かつての会議場じゃったからの。今でも緊急避難場所として機能しちょる」

「よっしゃ、行きましょう!」

「しかし……気を付けんとな、もし奴らがそこにいるなんてことが、ゾジェイ連中にバレちまったらえらいこっちゃ」


 ゾルゾーサへの行きしな、アノルグに聞いてみた。

「ところで、ゾルゾーサってなんで廃墟になったんですか? 魔物にでも滅ぼされたんですか?」

「それは作品違いじゃろ……あそこはズバリ、マージ師匠が住んでいたんじゃよ」

「あ、なるほど……それで追放されちゃったから」

「マジック・ローダーのいない町なぞ、誰も住みとうなかろう、それでみな、周辺の村や町に移転しよったんじゃ」


 さて、上空からゾルゾーサの様子を伺ってみる。

 ちょうど例の六芒星のあるあたりにゾジェイ連中が集結して、あたりをうろちょろしてやがる。

「ここか!」

「ここは緊急避難所として使っているという噂だ、徹底的に探せ!」

 モロバレじゃねぇか。やれ困った。

「夜になるまで待ってみますか?」

「だめじゃよ、夜になったら魔物らはもっとあがるからのう……あ!」

 アノルグは、ゾジェイの集団の中央にいる、リーダー格ぽい魔物を指した。

「あやつ、わしによう似ちょるな」


 全身をマントで包んだ出で立ちは、確かにアノルグぽい。しかも、

「ひっひっひ、アイツら、逃がさんぞい」

 などと言いやがってる。


「あ、言葉遣いまでそっくりじゃないすか」

「よっしゃ、バンドールを使うぞい」

 アノルグがそう言うと、俺らの周辺に四角い壁ができた。


「なんですか、これ」

「ひっひっひ、これで奴らからはわしらの姿が見えんのじゃよ」

「でも、これじゃあ俺らも周りが見えない……」

「壁にあなが開いちょるじゃろ。そっから覗いて見るんじゃ」

「で、これでどうするんですか?」

「あの、わしのニセモノの近くへ降りてくりゃ。ただし、ゆっくりじゃぞ。あまり速く動くと見つかるからの」


 バウザス、職人芸頼む。

「mendokusaishi, futarimo notte omoishi, yappari deban sukunaisi, butubutu... 」

 とか言いつつも、羽音を最小限にしながら、見事にゆっくり降りて行った。


 ニセアノルグのすぐ近くに降りた。周りもゾジェイはたむろしているが、誰一人まったく俺らに気づいていないようだ。

 そのとき、「壁」の中から本物のほうのアノルグが急に叫んだ。

「見つかったぞーーーーい! 奴ら3人とも、あっちの森の中じゃ!」


 すると、周囲のゾジェイたちが、一斉に叫んだ。

「なにーー! そうか! 行け! 奴らを仕留めるんだ!」

 ニセアノルグは、「おーいおまいら、わしゃそんなこと言っとらんぞい……待とりゃい」と言いつつ、森へ向かうゾジェイらを追いかけた。


 ゾルゾーサは、もぬけの殻になった。


「今がちゃんすじゃぞい」

「で、何をするんですか?」

「六芒星の下に、緊急避難先があるんじゃよ。確か、合言葉を言うとひらくんじゃが……、おう、忘れてもうた」

「ダメじゃないすか」

「大丈夫じゃ、そこに石碑があるじゃろ」

 六芒星の頂点の1つに、確かに字が書いてある。

 古代文字だ。

 ≪マルニボウオノレマルイチボウダイトロカタナエイチ≫ ※古代文字をそのまま読んだ場合。

「おまいさんなら、これ読めるじゃろ?」

「絶対読めませんって」

 そういって、俺は杖を取り出した。初めてまもラボに入ったときに第42話で、何者かが投げつけてきた杖。これとトゴリーティスとを使うと、あら不思議、読めるのだ。

 ≪ヨロチャムケ≫

 だって。


「あ、でもちょっと待ってください……アノルグさん、何か書くもの持ってないですか?」

「さしずめ、これかの」必殺魔法、ただの石。


 俺は六芒星に石で書き込みを始めた。

「おまいさん、そんなもん書いて、ゾジェイに見つかるぞい。人間の字を読める連中もいるんじゃ」

「よし、じゃあこれならどうじゃ」


 ~~~~~~~~~~

 左の表から6文字の「口説き文句」を探して、右の表の同じ場所を順番に読め。

 アモムキヨ|チズムマケ

 ハンテレノ|レチワアャ

 サスカシッ|キトロウゴ

 チイウマダ|サャハクケ

 ビジゴルゼ|ミヨルボチ

 ~~~~~~~~~~


「わからんぞい、そもそも、こんなん誰に読ませるんじゃ」

「わからんくなったならOK。では唱えますか」


「ヨロチャムケ!」


 すると、六芒星の描かれた地面が沈み始めた。沈んだところの側面に、入り口が開いている。おおお、地下室があるんだな。



 地下室の向こうから声がした。

「しまった! ゾジェイに気づかれたか!」

 聞いたことある声だった。

 奥に入ると、六芒星は自動的に上に上がっていった。


「おおーいたいた、お久しぶりどす。マジック・ローダーの三人衆」

「……カギン! ……それに、アノルグ!? なぜ一緒に?」

「やー懐かしいっすねぇ、これで四人衆そろい踏みっすねー。俺ちゃんをついほーして以来じゃないっすかー、ていうか、皆さんもついほーされてここに来たんっかなー?」

「違う! ゾジェイの奴らが、急に襲ってきて……」とカルザーナが言うので

「あれー? カル様、だめじゃないスかー? マジック・ローダーの女王様が、あんな連中に背を向けて逃げるなんて……」

「カル様のことをバカにすんのやめろ!」イサキスが割って入ってきて続けた。

「とんでもない数のゾジェイだったんだ……カル様でも太刀打ちできないくらいの。それで、追い詰められていたところを、僕が助けて、命からがら逃げてきたんだぞ……ぐはっ!」カルザーナの必殺平手打ちが炸裂した。

「こんな非常時にしれっと手柄をアピールするんじゃない!」

「おお、相変わらずの夫婦めおと漫才っぷりで」


「おいカギン、いいかげんにしろ、俺らをおちょくりに来たのか!?」

「おおアシジーモよ、ありがとよ。お前の杖のおかげでここに入れたぞ」

「……何言ってんだ、わからん」

「アシジーモ、コイツに何を支援したんだ!?」カルザーナが詰め寄ってくる。

「これですよ、これ。名前は知らないけど、これで古代文字が読めたんです」さっき使った杖をちらつかせた。

「……コイツがあまりにバカだったから、つい……元友人のよしみと思ったんだ」認めた。

「ほほー、やっぱそうだっんだー。じゃあよしみついでにアレもちょうだい」

「アレって何だ!」

「め・え・ぼ♪」

「名簿だと!?」

「会議の前にマジック・ローダーの皆さんのあいでぃ?を確認してたんでしょ。アレ」

「何に使うんだ?」

「こっちはこっちで、じいさんのあいでぃ?が含まれてそーなリストをせしめたんで、照合しちゃおーかと」

「バカ野郎! そんなんあげられるわけないだろ!」


「そう来ると思ったから、皆さんの弱みを仕入れてきたんだ」

「弱みだと……まさか、アノルグ、お前何か言ったんじゃないだろうな?」

「ひっひっひ、わしゃ知らんぞい。こいつらが独自にりさーちしたんじゃ」

「こいつ、だと?」

「こいつと、あのガイトゾルフの娘……サーイとかゆっとったかの」

「……あの女! カギンとデキてたのか!」

 俺は慌てて打ち消した。「アシジーモ、そういう語弊のある言い方はやめてくれ。いいから、弱み弱み。言うよ」

「何でも言いやがれ」



「サーイのじいさん、つまりマージは、君らマジック・ローダーから追放された……その原因は『滅びの魔法』。その、滅びる滅びるってのが何かっていうのがキモで、要するに……アレだ。お前らが、お前らが滅びるって話だろ、な? 自分たちの都合の悪いものを作ったから。それだけの理由で追放した、っていうことだろ?」

「お前、『滅びの魔法』がどんなものなのか知って言ってんのか?」

「それは教えてくれへんかった……」

「へん、リサーチ不足じゃねぇか」

「サーイに来てもらって全文言ってもらってもいいんだぜ」

「バーカ、アイツはこの場所なんか絶対わかるわけないだろ」


「アシジーモ、そのへんにしなさい」カルザーナがたしなめた。

「……カギン、相変わらず要領得ないわね。でも、言いたいことはわかるし、事実関係も合っている……しかしだ。追放した、というのは聞き捨てならない!」

 カルザーナは、古びた机をドンと叩いた。辺りに埃が舞う。


「これは……我々6人だけの問題ではないんだ! 700年間、脈々と受け継がれてきたマジック・ローダー全体に関わるんだ。これまで、人類が魔法を享受するために、先祖たちが……父上が……積み重ねてきたものを、ここで絶ってしまうかもしれないんだぞ!」

「ふーん、700年か。そんなに長いんスか? ほんとに」

「疑ってるのか? ここゾルゾーサは、長年会議を行ってきた場所。この地下室には、これまでの歴代のマジック・ローダーの名簿が……」


 キラーン


「め、え、ぼ!??」

「……しまった!」手で口をふさぐカルザーナ。

「みーせーてー!」

 俺は地下室の奥へ駆け出して行った。

「待て!」アシジーモが俺をつかんで引っ張りながら、

「カルザーナ、お前はいつからそんなドジっ娘キャラになったんだ!」

「失礼なこと言うな! こいつが誘導したんだ!」してやったり。

 で、ドジっ娘カルちゃんも俺の前に立ちはだかって、必死に止めようとする。

「おい、イサキス、お前も止めに入らないか!」


 イサキスもこっちに来て、止めに入った。

 アシジーモと、カルザーナを。


「二人とも、いい加減にしろよ!」

「……何だと?」

「見苦しいんだよ……カギンは僕らの仲間だったじゃないか、自分たちの保身のためだけに、仲間を見捨てるなんて!」

「イサキス、味方してくれるのか?」俺はびっくりして聞いた。

「僕はマージのじいさんを追放するのは反対だったんだ。でも、その頃は僕はまだ会議には出られなくて、お父さんが賛成してしまった……みんなが決めたことだから、僕も従うしかなかったよ」

 イサキスのやつ、当時はまだマジック・ローダーじゃなくて、親父がそうだったんだな。


「だから、頼むよ……マージじいさんを探すの、僕らで協力しないか!?」

「ダメだ! もしマージの居場所がわかったら、カギンはトゴリーティスとスライタスを使って、『滅びの魔法』を作る気満々だろ!」

「こんなマジック・ローダー、滅びちゃえばいいんだよ!」

 それから、2対2でわちゃわちゃ揉めることに。

「おい、アノルグ、お前はどうなんだ、どっちの味方なんだ!」

「ひっひっひっ、わしゃーただの野次魔物うまじゃ、どっちでもええがなー」


 その時、再び六芒星が地下に降りて来た。

「しまった! 今度こそゾジェイか!?」

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