第62B話 『Magic Loaders』最終回?

 ここはルカンドマルア、ベルツェックルとクペナの王宮。


 ベルツェックルは苛立っていた。


「おいクペナ、サーイは何をしている! ライディアの洞窟での勝利から、音沙汰がないではないか! イウカーマ攻略の知らせがいつまでたってもないぞ!」


「あなた、何言っているんですか、サーイをウィスタ大陸に派遣してから、まだ2日ですよ」


「そういう尺度でものを言うな! もう22話も前じゃないか! どこで道草食っている!」


「あなたまでそんなことを言って……」クペナは無表情で呆れ顔だった。


「もう我慢ならん、彼女一人だけを派遣したのは、間違いかもしれん。ティルナグを呼べ!」



 ガイトゾルフの一人、ティルナグがすぐに駆けつけた

「ベルツェックル様、いかがいたしましたか?」


「サーイ一人では、どうも心許ない、お前もウィスタ大陸に派遣する!」


「しかし、ベルツェックル様、ウィスタ大陸に渡る方法は現状ありません。……私の力不足で申し訳ありませんが、サーイのようにヨガブを使える身ではありません」


「そのことなら心配ない。今晩、王宮の裏手まで来い」



 その晩。ティルナグは約束通り、王宮の裏手に来た。


「ベルツェックル様、どういうことですか、こんなところに私を連れてきて……」


 すると、ベルツェックルは暗闇に向かって手を叩いた。

 向こうから、緑色のドラゴンに乗った男が一人やってきた。


「セディムよ、悪いが、そのドラゴンをしばらく貸してはくれないか」

「ベルツェックルのお望みなら、喜んで!」


「こ、この男は……このドラゴンは……?」

「彼は、この周囲の見張りを任せている」

「しかし、なぜドラゴンなどを……魔物に頼るなど、ガイトゾルフとしてできません」


「だから、今ここに呼んだ。これは秘密だ。昼間、あからさまにドラゴンが飛んでいたら、民は怖がるだろうから」

「いや、しかし……」

「私の命令は絶対だ!」


「……わかりました」

「くれぐれも、サーイの前ではそのドラゴンの姿を見せないように」


 ティルナグはしぶしぶその緑色のドラゴンに跨がり、西を目指した。


 ウィスタ大陸についた頃には夜が明けかけていた。ティルナグはドラゴンを降り、イウカーマのほうへ向かった。


―――――†―――――


「ダメだ! これ以上は進めない。サーイ、何か良い方法は……」

「ごめんなさい、私には何も…………あっ、あります!」

「何だ?」

「この蔓植物には見覚えがあるんです。もしかしたら、あの人が知っているかも……」

「あの人?」

「私が、浮島群に登るため通った木に……あっ!」


「サーイ、ここにいたか」

「ティルナグ様!?」


「ベルツェックル様から、様子を見るよう遣わされたんだ……どうした? イウカーマ攻略は」

「それが……」

「何? 植物が邪魔しているだと!? サーイ、お前のほどの力があって、どうしてそんなものに手こずる! さっさとやっつけるべきだ。ええい、俺が片付けてやる!」


 というや否や、ティルナグは植物の魔物に向かって、フィレクトを放ち始めた。


「やめてください! ティルナグ様!」


 攻撃を受けた植物たちは、こぞって反撃を始めた……その勢いは、悪の魔物の比ではなかった。獰猛に噛みつこうとするもの、毒液をまき散らすもの、あたりは修羅場のようになった。


「まずいぞ!」

「に、逃げなきゃ!」

「ダメだ! 囲まれた!」

 マジック・ローダーの3人もパニックになっている。


「ええい、邪魔者たちめ、徹底的にやるぞ……うわっ!」

 思いもよらない反撃に、ティルナグもなすすべがなかった。


 ……このままでは全滅してしまう……そう考えたサーイは、やむを得なかった。植物たちを自らの魔法で薙ぎ払ったのだ。サーイの魔力をもってすれば、造作もないことだった。


 だが、アシジーモが言っていた通り、その代償は大きすぎた。


 善の魔物をあやめたサーイの、純真だった心はすさみ、もはや、善も悪も関係なくなった。


 その後も、ベルツェックルの言われるがまま、すべての魔物を滅ぼすまで、戦い続けた。



 ……おじいちゃんのことなど、忘れて……

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