第52話 へびのない暮らし

 あーあ。


 なぜなんだ?


 さっきからトゴリーティスを打つ手が全然進まないぞ。


「第48話 半透明で、宙に浮く」でデウザから渡された本の402Eあたりまで打ち込んだあたりで止まっている。


 おかしいなー。


 いやいや、絶対にそんなことはないって。

 あのへびあたまに、帰ってきてほしいとか思ってないから。


 だってへびなんだよ? あたまなんだよ?

 いないほうが絶対いいに決まっている。


 やめろ。こおゆう展開は俺のパートにはふさわしくないんだ。

 こんな風にしんみりしている一方で、あいつのパートでは夫婦めおと漫才みたいなのが繰り広げられてた、なんてことになったら、目も当てられない……

 ていうかアレは夫婦漫才ではない。


「おい、明らかに動揺してるぞ」とデウザが話しかけてくる。

「なんだよとりあたま」

「俺をそんな風に呼ぶってことは……ははーん、そう呼びたい相手がいないからだ」

「……な……!」

「当たりだな。まあ、姫様も少しは頭を冷やしてくれば戻ってくると思うが……ただ……」

「ただ、何だ?」

「あの、初見では誰もが驚愕するビジュアル、誰かに目撃されたら大変だろうな」


 そおゆうわかりやすい展開もやめろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る