第22話 浮遊大陸へ:腹ごしらえ
いやっほーーーい!
な、バウザス、あんな木なんて、お前の飛翔力ならすぐに登れるよな! さっさと登っちまって、あの女を上から目線で冷やかしてやるんだ! あっ!
ザザザーーーー 「おわーーーー!」
あいたたたた……調子にのって全速力で飛ばしていたら、木の枝葉に突っ込んでしまった。バウザス自身はうまくすり抜けて、上に乗っていた俺だけぶつかった。
なんとかバウザスが枝を足爪でつかんで停止。
バウザスが上を見上げ、アノルグからもらってきたトゴリーティスに文字が。
「baka iuna konnna dekai ki noboreruka」
「e- sonna koto naidaro」と俺返信。
「haraga hette mou toben」などと
浮島から降下している間に、好物のモラックはあらかた食われていた。
というか飛べないのに枝の上で止まっているってピンチじゃんか。
「nantoka shiro」
「konjou dakede dounika naru hanasika」
魔物らしからぬ返事……いや正論ですはい。出だしからこんな調子では先が……あっ!
幹に空いていた木のうろから出てきたのは、あの女だった。
「あら、あんな騒がしい音出しといて、まだそこにいるわけ?」
見ると、さっきまで持っていなかった杖をジャラジャラとぶら下げている。
「あ、おい! なんかそんなよさげな杖たくさんもらいやがって、アイツか? へびあたまか?」
「だから、メディをそんな風に呼ぶのはやめてと言ったでしょ……まあ、一本くらいあげたっていいけど、あれなんでしょ? 魔法が使えないデクノボーだって言ってたじゃない? 使えるもんなら使いなさい。……望みは?」
「はらがいっぱいになるやーつ!」
といったら、なにか一本投げつけてきた。おでこにクリーンヒット。よし、おかげで受け止められた。
「それは、エディル。食べられる木の実だったら青で、食べられなかったら青に光るの。あなたが使ったらせいぜいそんな機能でしょ」
おお、それは便利便利、さっそく使わしてもらうぞ。
その後、この女ときたら、なんか別の杖を取り出して使いやがった。ちょっと高いところにある枝に向かって虹みたいなのをかけて、そこを渡って登っていくという、いけ好かない方法で去って行った。
さて、木の実、とか言ってたから、この木に生えてんだな。というか、一本の木に生えている木の実って、食えりゃ全部食えるし、食えなきゃ全部食えないんじゃね? と思ってあたりをみたら、その予想は外れた。あたりを見回したら、なんかいろんな色、形の実がなってやがる。あいにくモラックさんはいない。
さて、どうしたものか、どれが食えるものかって、エディルとやらで探索したら、まじで全部青色になる。便利。便利すぎておでこが痛い。
こいつは埒が明かないから、バウザスなら野性の勘でわかるんじゃないか(などと聞こえのいいこと言っているが要は毒見)と思って「omae nanka kuttemiro」とトゴリーティスに書こうとおもったら、
あっ!
まちごーた。スライタスの杖で触れるところをそのままエディルで触れてしまったではないか。
あれあれ、なんかみたことがない絵と文字が出現した。こわれた?
≪ロリュソは、ピァダフィ科の多年生植物。パラウェリの木に寄生。果実は毒。食べると≫
おい、「食べると」で文章が切れてるじゃんか。まあいいや、毒ね毒。ご丁寧のその実の絵まで描いてくれるのだ。
しかも、他の実にトゴリーティスを向けると、そいつの説明に切り替わるのだ。
≪ツェギァタは、スワメム科の宿根草、パラウェリの木に寄生。果実は毒ではないが、食≫
「ではないが、た」で切れるな、気になるじゃんか。
で、そんな文章に翻弄されたのち、説明が出ている間にもう一度エディルに触れると、文章の続きがでることに気づいた。ちゃんと最後まで書いてくれよ。
結果、ティカボとかいうのが食ってもいいらしいことがわかったので、収穫。食べさせると、おお、バウザスがみるみる元気になった。俺も食べたらうまかった。トゴリーティスにスライタスを触れると、こんな字が出た。
「umee ko re, saa ikuzo!」
ハイテンションで羽をはばたかせて一気に登るバウザス、よし、これで逆転できる。ほどなく、あの女の姿を捉えた。
その時、まわりの枝に大量の花が咲いているのが見えた。紫色の水玉模様、見るからに気持ち悪い。案の定、こいつら、動いてやがる。水玉模様の部分が裂けて、牙をむき出しにして、噛みつこうとしてきた。植物的な魔物だ。攻撃仕掛けてくるということは悪属性で間違いない。
でもバウザスがいれば安心安心。炎で薙ぎ払ってもらおう。
「makasero!」
ハイテンションそのままに炎をぶっ放すバウザス、おお、植物的な魔物が一網打尽、強いぞバウザス。……ってあれ、あれあれあれ、ああああああーー、ヤバーい!!
周りの葉っぱや枝に引火したー! ここ全体が木だってこと忘れてたー!
そのとき、上からものすごい水しぶきのようなものが降ってきた。あたりは白い煙につつまれ、枝は黒焦げになったが火は消し止められた。
「あなたやっぱりバカね。やらかすと思ったわよ。メディが忠告してくれなかったら、私さっさと上行こうと思ってたけど、下で幹ごと燃やされて邪魔されちゃじゃたまらないわ……いいかげん降りてちょうだい。おじいちゃんを見つけたって、あなたには絶対会わせないから!」
あのへびあたまめ。「あのばかあたまは、絶対に燃やすから」とか言いやがったな。絶対そうだ、許さん。いますぐ文句言いに降りてやろうか……いやここで降りる選択肢はない。あの気持ち悪い姿は絶対に二度と見るまい、と心にきめて、言い返した。
「あー、そうですね、俺のデクノボーぶりで、魔物とやりあおうってのが間違いでした……どうぞお先にお進みください。そしたら魔物があらかた排除された木を、俺はゆっくり登りますから」
「私を利用しようってわけ!? やれるものならやってみなさい!」
と言ってさらに上に跳び上がっていった。
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