第10話 徹夜するMagic Loader

 ええと、俺何してたんだっけ。記憶喪失とかじゃなくてただのど忘れ。ああそうそう、俺はイサキスとともに、ミッツモハイールの杖、つまり一本の杖に3種類の魔法を呪胎させた杖を作る実験をはじめたんでした。

 まずはブランクの杖を用意する。

「さあ、俺が今から一つ目の魔法を呪胎させるから、いい感じのところでツェデをしてくれ」

「なんだい、いい感じて」

 説明が明らかに足りていないのだが、イサキスが何やら唱えはじめたので、なんとなくいい感じになったところで、ツェデの杖に力を込めた。

「そう、いい感じだ」

 おう、それなら何よりだ。

「それから、こうなったらツェデツェデ、ああなったら、ツェデツェデツェデだ、いいな」

「うん、そうなったらツェデツェデツェデのツェデツェデで、どうなったらツェデのツェデか?」

「いいぞ」


 すっかり蚊帳の外のアシジーモは、移動中以外はなかなか見せ場がないバウザスに向かって、何か俺らの陰口でもたたいているようだ。

「お前、ご主人様は選んだほうがいいぜ……」


 すっかり日も傾いてきたが、

「カギン、ダメだってばー、いい感じじゃないところでツェデしたら……あーあ、何にも呪胎されてないじゃんか」

 案の定、いい感じかどうかだけでそんなにうまく実験は進まなかった。


「なんか知らないけど、新しいお友達ができたみたいでよかったじゃないの、ほれ、夕ごはんも食べてきな」

 と言って、昼飯をくれたおばちゃんが夕飯まで作ってくれたのだった。


 食べながらも、俺はイサキスと議論していた

「イサキス、いくらカル様とやらのためでも焦りすぎじゃないか? とりあえず、まずは二人で、ミッツモじゃなくてフタツモハイールを目指そうぜ」

「えーっ、そうか?」

「で、うまく行ったらミッツモにするために、どこをどう変えればいいか試すんだ」

 俺たちは夜どおし実験を続けた。


―――――†―――――


 ほわわわ、いつの間に寝落ちしてしまったのか……確か、一本をミッツモハイールできたところまでは見届けたはずだ……それから、やり方がわかったイサキスが一人でもう一本作ってるみたいだが……ねる。

 朝になっていた。

「イヤッホーい、できたぞー!」

 と、両の手で2本のミッツモハイールを頭上に高く掲げて、くるくる回転させるなど、一人テンション高いイサキスであったが、よく寝たはずのアシジーモもバウザスも冷ややかな目で見ているし、俺はやっぱり眠いし……うっ、


 気づいたら、俺はバウザスの背中に乗って飛んでいた。どうやら、アシジーモにザガリスタ――カル様とやらがいる町――の場所だけ教えられたらしく、運んでいけといわれたらしい。

 しばらくすると、なんか町? 村? らしいものが見えたので、降りてみることにする。


 ……町かとおもったが、誰もいない。荒れ果てているし。これは、アレか、魔物たちに滅ぼされたとかいう村かもしれない。絶対そうだ。

 おそらく、アシジーモとイサキスは後からついてくるだろうと思って、崩れ去った家の跡などを見学してみよう。

 ひとしきり目ぼしいところを見ていたら、かつて村の広場とおぼしき場所が見えたので、そちらに足を運んでいると、

「おーい、カギン、何やってる?」

 アシジーモとイサキスはわりとすぐ追いついてきた。この村は何なのかを聞いてみると、

「ここゾルゾーサは……魔物かなんかに滅ぼされたんだろ」

「へーそうか」珍しくその通りだった。俺は広場のほうに向かって行った。

「おい、寄り道しないでさっさと行くんだ!」

「そうだそうだ、早くカル様に会いにいかないとー!」

 広場に出た。ここではかつて何が行われていたのか……草むした広場には大きな幾何学模様が書かれていた。

「……六芒星か」

 とかぶつぶつ言ってたら、アシジーモとイサキスにひどく睨まれた。なんだよ寄り道したくらいで。


―――――†―――――


 なにやらすごい城壁が見えてきた。これがザガリスタの町か。なかなかの迫力であるが、バウザスの飛翔力なら軽々と飛び越せそうだ。

「待て、カギン! 壁を超えるな!」

 と、アシジーモが呼び止められた。

「えー、なんで?」

「勝手に壁を越えたら、ゾジェイと間違われて狙われるぞ!」

 ゾジェイ? なんだか知らんが仕方なく、バウザスには城壁の外で待っているように頼んだ。すまんバウザス、昨日からずっと待たせてる気がする。

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