第46話 やっとここまで
さぁ残すは、マスターだけだな。
百五十層に下りると、ここはまた一面のアビスワームだった。
百層の中ボスの赤いワームがざっと百匹は、いるだろう。
百層の一匹ですら三十分はかかったのにこれは、かなりきついな。
早速ヴァハムート呼んで見るか【神龍召還】
黒雲と共にヴァハムートが現れる。
百四十九層で戦ったヴァハムートより更に一回り大きい。
「ヴァハムート頼むぞ、アビスワームを一掃してくれ」
「御意」
『波動龍砲【極】』
圧巻だった。
百匹以上は居たアビスワームは、一瞬で蒸発した。
一面大量のドロップが散らばっている。
「TB、雪、アイテム回収頼むね」
「了解にゃ」
「解ったー」
そして中央部分を見ると既に光の柱が立ち上がっていた。
俺は身体強化を掛け、プルートと大脇差の二刀流に光属性を纏わせ、正面から飛び込んだ。
一撃だった。
【D150】マスターの頭部だけが地面に転がり落ち、黒い霧に包まれた。
それと同時に、視界が途切れ地上に戻される。
『【D150】暴食のダンジョンの討伐が確認されました。報酬をお受け取り下さい』
うん予想通りのネームドダンジョンだったな。
『暴食は、ベルゼブブか、あ、またベルって訳には行かないな』
『【D150】コア。聞こえるかい』
『お腹空いたわ、その猫と狐美味しそうね』
『意識体は腹減らないだろ!』
『気持ちの問題よ』
『お願いがある、【D1】と融合してくれ』
『私が【D1】を取り込めばいいのよね?』
『逆だ、【D1】に取り込まれてくれ』
『私のほうが強いよ、圧倒的に』
『【D150】コアよ、私の存在が解るか?』
『私が雑魚を覚える必要なんかないよ』
『私を感じる事も出来ぬほど落ちぶれたか』
『ん、お前は……いや……貴方様は……かしこまりました。融合させていただきます』
『マスター? 私まで取り込んで負けるんじゃないよ、負けたら化けて出てくるからな』
『応援してるんだよな? まぁ頑張る』
『【D150】コアと融合完了いたしました。現在コアレベルは1258でございます』
『コアの覚醒が完了致しました。コア機能が最高レベルで行使出来ます』
やったなー長い時間がかかったけど、ひとまずは条件クリアか。
『ナビちゃん。ちょっといいかな』
『いかがなさいましたか? 理様』
『次元を渡り俺がもと居た世界に戻る方法を教えてくれ』
『かしこまりました。二つの方法がございます。一つは一度限りのスキル習得。もう一つは自由に次元の狭間を通り抜け相互移動出来る魔導具の作成でございます』
『一度きりの転移であれば、アビスワームの体内でスキルリストを表示させると、使い捨てスキルの異次元転移が発動します。渡りたい世界に存在する人物を強く思い描けばその人物の元へ現れることが出来ます。この方法ですと、スキル習得の権利一度につき一回の転移が可能となります』
『もう一つは魔導具の作成でございます。大変難易度の高い魔導具でそれに必要な素材、能力も通常揃えることは困難でございます』
『魔導具の作成に必要な素材を教えてもらえるかな?』
『アビスワームの魔核100個、次元の魔核1個、神龍の逆鱗、でございます』
『ナビちゃんそれ全部【D150】で揃ってるよ』
『更に作成の為に必要なスキルと魔導具がございます』
『何か持ってるような気がしてきた』
『まずスキルの【マップ】を所持した者が、マップを開く時に異次元座標をイメージして開き、目標値を指し示す魔導具が必要となります。そして異次元座標の中では無重力な上に、大気が存在しないため推進装置も使えず移動をする為には、重力を発生し指向性を持たせる【重力制御】のスキルが必要となります。それら全ての揃った状態で媒体となる搭乗物に、【魔導具創造】と【錬金】を使用し始めて作成が可能となります』
『うん、確かに他の人が作るのは不可能だったと思うけど全部あるな。ナビちゃんあるの知ってたでしょ?』
『当然でございます。ただこの条件を満たしたものは過去に存在したことがございません。理様の素晴らしさを再確認するために説明してみました。『条件は揃っておりますので【魔導具創造】次元移動装置と念ずれば作成できます』だけでは余りにも物足りないので』
『まぁ時間かけてやっと達成した条件だしね、そのほうが雰囲気あっていいな』
じゃぁ造るぞ折角だからちょっとカッコイイのを
『【魔導具創造】次元航行艦』
次元航行艦
必要素材
アビスワームの魔核100
次元の魔核1
神龍の鱗1
艦艇1
嚮導の羅針盤1
オリハルコン50
アダマンタイン5
ヒヒイロカネ5
魔核ポイント1000万P
必要スキル
【マップ】
【重力制御】
【錬金】
UR 99%
ロスト 1%
よし、これ失敗したら10年は引き篭もれる自信があるな。
作成
「よっしゃああ成功だ」
次元航行艦UR
所有者の認識の中にある別の次元への移動を可能とする。
次元転移一度に着き魔核ポイント1000を消費する。
通常時は魔核ポイント1に対して1時間の駆動が可能
これは颯太好みの命名をしなきゃな。
決めたぞ!
「グラビティーオーディン」だ。
よろしく頼むな。
命名を受け「グラビティーオーディン」以下【G.O】は一瞬輝いた。
さて、この世界、結構長く居たな。
一年三ヶ月か、みんな心配してるかな? それともとっくに死んだと思って忘れられてるかもな。
まぁこの世界で一番お世話になった藤吉郎には、一度挨拶してから戻ろう。
【G.O】があるからまた来れるだろうけどな。
そして俺は【G.O】の試運転もかねて日本に向かって出発した。
重力推進装置の性能も大幅に向上し速度は音速の5倍に達する。
内部は重力負荷を感じさせない抑制機構が備わっている。
居住性も問題なく定員は三十名までに広げた。
外部装甲はアダマンタイトとヒヒイロカネで覆われ、この装甲を抜ける武器はほぼ存在しないだろうし、元の世界でも安心だな。
ドイツから日本までは約二時間ほどで到着した。
藤吉郎のところに行く。
大阪城は、少女だらけだった。
世界各国から身寄りの無い少女が既に一万人近く集まっている。
「ねぇ藤吉郎さん。この子達どうするの?」
「ここで成人を迎えるまで学んで貰い、世界を笑顔で埋める為に、働いて貰おうと思うとります。まだまだ世界中に恵まれない少女は沢山おる筈です。わしはその全てを救うつもりなんじゃ」
「藤吉郎さんの行動力は凄いよね。実効支配はどこまで行ったの?」
「今はロシア帝国を倒して北欧方面に進出した所ですじゃ」
「順調にすすんでるんだね。藤吉郎さん。俺は無事に帰れる手段を手に入れた。明日元の世界に戻る予定だ。俺の世界でダンジョンは討伐して行くから、徐々に無くなっていくとは思うけど、まだ危険は沢山あるんだから、くれぐれも無理をしないようにね」
「何と、そうじゃったか、戻れる様になったんか、それは良かったのぉ、だがこの世界の事を思うと、岩崎様がおらん様になると不安だらけじゃ、もうこの世界には戻れぬのか? 」
「いや、来る事は出来るから時々様子を見にくるよ。その時はまた美味い飯を頼むぞ」
「岩崎様に救って頂いたこの世界と少女の笑顔を、この木下藤吉郎がしかと守りますぞ。今日は祝いの宴じゃな。皆を集めて騒ぎましょうぞ」
竹中半兵衛や前田慶次を初めとした、この世界で知り合った人々が集まり、朝まで美味い酒を飲み大いに騒いだ。
◇◆◇◆
今日は俺の居た世界では、十二月二十四日だ。
クリスマスを楽しむ余裕のある世界なら良いが、かなり厳しい状況が予想出来る。
「みんな待たせてゴメンな。俺はやっと戻れるぞ」
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