第42話 もったいない

 俺の居た世界では四月十六日


 さぁ次に向かうか! でもドロップが無いと新しいアイテムの開発も出来ないから、そろそろ大きな数字のダンジョンに当たらないかな。


 と、つぶやくと雪が一言……


「ねぇご主人様。ドロップが欲しいならテイムしたらいいんじゃないの?」


 …………


「あーーーーーーーーーそうだった」すっかり忘れてた。

 

 ドロップがでるレベルの仲間が居ればいいだけだった。

 もったいない事したなぁ、よし次のダンジョンで仲間増やすか。

 

 えと、今のテイムのレベルは8か、後六匹テイムできるな。

 レベル直ぐ上がっちゃうからダンジョン毎に増やさないといけないか。


 待てよ、仲間ならいいんだったら、人をパーティに誘うって言うのもありか。

 ダンジョンクリアしてもスタンピードで溢れたモンスター倒さないとこの世界も安全にならないし、折角藤吉郎さんたちが頑張っても、深層のモンスターなんかに襲われたら、そう長くは持たないだろうしな。


 よし、藤吉郎さんに相談してみるか。


 藤吉郎さんは国を守る手段を手に入れれるし、俺はドロップを手に入れれる。

 お互いにWINWINだよね。


 俺は藤吉郎さんのところに転移し、今思ったことを説明して、藤吉郎さんが信用できる人を何人か預けてくれるように頼んだ。


 そして六人が選ばれ、俺と行動を共にする事になった。


山内一豊 レベル20

加藤清正 レベル18

竹中半兵衛レベル17

前田慶次 レベル15

黒田官兵衛レベル18

石田三成 レベル15


 甲冑姿で現れた彼らに「そんな動きにくい格好は辞めてくれよ」と言って、バトルスーツを与え、武器はみんな槍を好んだので、槍を用意した。

 既にJOBは取得しており、黒田さんと竹中さんは魔法職を高めていた。

 山内さんと石田さんは生産職や土木職も発現しておりバランスの良い人選だった。

 

 この中では、竹中さんがみんなから慕われておりリーダー的な存在だ。


 このメンバーにTBと雪を加えた九人でクルーザーに乗り込み、次の目的地の俺の居た時代ではトルコのイスタンブールに該当する場所に向かった。


 ダンジョンに到着し内部に入る。


『ナビちゃん。ちょっといいかな』

『いかがなさいましたか? 理様』


『ここは何番目かな?』

『【D118】でございます』


『ナビちゃんさぁ俺が聞きたい事絶対に解ってるよね? それでも必ず同じ返事するのは何かこだわりあるの?』


『もちろんでございます。理様の考えてる事は、Hな想像している時も含めて全て把握しております』

『ブホッごめん忘れて今の質問無し』


『みんな、戦いは無理しなくていいからね安全第一で行くよ。でもラストアタック、止めの一撃は俺の言うタイミングで倒してね』


 このダンジョンは、階段出現条件もゆるく順調に攻略を進めた。


 竹中さん達のレベルアップをさせながらだから、一人で下りていく時に比べれば時間は掛かるが、ドロップウハウハで久しぶりにテンションは上がった。


 それに話し相手が居るのってやっぱりいいよね。

 この世界の日本の色々な事を、竹中さん達から聞いた。


 やっぱり文明の違いって言うか、身分カーストがあるみたいで、藤吉郎さんはそれを無くして、誰でも能力があれば重用できるようにしたいって言ってるらしいが、中々能力のある庶民が居なくて困ってるらしい。


 俺は問題点を言ってあげた。


「それってさぁ、庶民って言われてる人達に実力が無いわけじゃなくて、読み書き計算とかをちゃんと教えてあげてないから、才能が育ってないだけじゃないのかな? 誰でも入れる学校とか作れば徐々に問題解決すると思うよ」


 それを聞いてた六人は「「岩崎様は凄い」」って言い出し次に戻った時に、直ぐに進言し全国に学び舎を造る事にすると言ってた。


 そして一月をかけ無事にダンジョン討伐を終えて、地上に戻った。

 ナビちゃんのコアレベルは582だ。


 竹中さん達のレベルはそれぞれ620まで上がっていた。

 凄いな! 一月で620とか。


 この世界の常識で考えちゃうと、みんながそれぞれ魔王として君臨できるレベルだよね。

 これってもしかしたらこの世界の全てを藤吉郎さんが纏めちゃう可能性まであるのかな?


 一度日本に戻って、藤吉郎さんと話す。

 各ダンジョンは討伐をしても溢れ出したモンスターを駆逐できるまで本当の平和は訪れない。

 そして全てのダンジョンを討伐するまでこの世界に居る予定は俺には無い。


 藤吉郎さんに聞いてみる。

 

「藤吉郎さんこの世界どうしたい?」


「わしは、民が笑顔で暮らせる世界がみたいだけじゃ。その為に化け物どもが邪魔なら倒せる力を身に付けたいし、一部の偉そうな人間が暴力や権力で同じ人間を奴隷のように扱う事があるなら護りたいんじゃ。皆が自分にあった仕事をし、家庭を持ち、子孫を育て、国を富ませる。当たり前の世の中を作りたいんじゃ」


「解ったよ、藤吉郎さんがこの世界纏めちゃいなよ。理想の世界作り上げて俺に見せてくれよ。人種も生まれも言葉も関係なく、笑顔で居られる世界、俺も出来るだけは協力するよ」


 今この時、これからこの世界を統べる皇帝となる木下藤吉郎と、その協力者として、この世界の【神】として語り継がれる事になる俺の方針は決まった。


 なんかこの世界に来てから自重という意識は無くなったな俺。


 まずはこの世界を護る為に必要な力だな。

 黒田さんと山内さんに頼み、討伐部隊を育ててもらう事にした。


 俺が持ってるダンジョンの中から【D101】ダンジョンを藤吉郎さんの本拠地大阪城に設置し、出来るだけたくさんの人員を育ててもらうように頼む。


 竹中さんは人当たりもいいし、世界中の国の人と交渉をする事を考えると、一緒に居てもらった方がいい。

 俺にはそんなの無理だし、加藤さん、前田さん、石田さんもこのまま随伴してもらう。


 やっぱ言う事を聞いて貰う為に実力見せなきゃいけない場面多いしね。


 それとここも大事な事だけど俺のドロップのために、新たな人員を補充させてもらう。

 加藤さん達にそれぞれ四人づつ付けて貰い、一緒に出発する事にした。


 そして次に向かったのはエジプトだ。

 ここはダンジョンの側にもかかわらず結構な人の存在も確認できた。


 でも足に枷をつけた奴隷と思われる人の姿も多く見られる。

 どうやら支配層の人達はピラミッドの中をシェルターのように利用しているみたいだ。


 ちょうどダンジョンから湧き出たモンスターが、人を襲う場面に出くわした。

 商人の列だったが、商人は迷わずモンスターの方に奴隷であろう女の子を蹴り飛ばし、自分たちはそのまま逃げ去っていった。


 俺は、直ぐに女の子を助けに行き、モンスターを倒した。

 軽い怪我をしていただけだったので、ポーションを飲ませて回復させた。


 女の子に名前を尋ねると「私の名前はフェミです。でも名前を言うとご主人様から打たれるの、『奴隷に名前なんか必要ない』って」


「今いくつなの」

「十二歳です」


 見た目はもっと幼く見えたが、恐らく栄養なんかの問題なんだろうな。


「家族はいないのかい?」

「私は親に売られました一月分の食料で」


「奴隷の子ってたくさんいるの?」

「たくさんいます。無理やり子供生まされて、その子供も奴隷として育てられ、さっきみたいにモンスターが現れた時に、捨てられます。私はまだ子供を生める身体じゃないから大丈夫でしたけど、今日は他の奴隷が居なかったから餌にされました」


 腐りきった国だ、潰してしまいたい。

 竹中さんにも翻訳機を渡して、面倒をお願いする事にした。


 男ばかりなので、ちょっと世話に困ると言われたので、女の人を雇う事にしようと思い、どうせならとこの街にある奴隷商を見る事にした。


 女性は基本性奴隷として囚われてるみたいだ。

 これは、根本的に駄目な国だ。

 でも人との争いは俺のする事じゃない。

 そういうのは藤吉郎さんに任せよう。


 結局フェミは転移で、大阪に連れて行った。

 一目見てその可愛さにメロメロにされた藤吉郎さんは、わしの娘として育てると言い出した。


 ちょっと不安だ。

 再びエジプトに戻る。


『ナビちゃん。ちょっといいかな』

『【D73】でございます』


 あ……物足りない……

『ナビちゃんごめん。今までどおりでお願いします』

『かしこまりました理様』


 ◇◆◇◆ 


 ここは三週間で討伐できた。

 ナビちゃんのコアレベルは655


 そしてまた大阪に戻り人員の入れ替えも行い、次の都市へ向かう。


 それを繰り返し十月十日を迎えた。

 現在ナビちゃんのコアレベルはなんと1108。


『前のダンジョンの数字が後一つ大きかったら、私は【D1】と融合して消えてたねー助かったよ』と【D2】コアちゃんが言った。


『融合すると他のコアの意識はどうなっちゃうの?』

『融合は一種の封印のような状態です。私がまた違う世界のコアになれば私と融合しているコアもまた同じようにコアとして戻ります』


『ナビちゃんが違う世界のコアになる可能性ってさ、俺はどうなってる状態なの?』

『人としての生は失っている状態でございます』


『死んでるってこと?』

『必ずしもそうではございません。あくまで人としてです』


 んー気になるけど、聞いてもきっと良く解んないからまーいいや。

 さて、うまいビールが飲めるまで後一つだ。


「早く帰ってビール飲みてぇえええ」

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