13、
調教師によって調教された魔物の群れを撃破し、残った盗賊たちに降伏勧告をするも大人しくそれを受け入れるはずもなく、襲撃を受けたが返り討ちにし、盗賊団も残り数名となった。
だが、カンダラたちがあきらめる様子は一切なく、抵抗を続けている。
「ったく。いい加減、諦めてくれねぇかねぇ?」
戦力の差は歴然。
カンダラたちもすでに肩で息をしているため、結果はすでに見えている状態だ。
それなのに降伏する様子がないカンダラたちに、カインはいい加減、うんざりしていた。
それはハヤトも同様で。
「面倒くさいな……もう降伏しなくていいから、この世に暇乞いしてくれない?」
と、やんわりと死刑宣告していた。
その手に練り上げられた魔力が陽炎のように立ち上っているあたり、どれほど本気でそう思っているかがうかがい知れる。
カンダラたちの扱いについては、『生死問わず』となっているため、別にこの場で始末してしまってもまったく問題はない。
だが、シェスカはできる限り生きて捕えたいらしく。
「できることなら、手荒なことはしたくないわ。ここで降伏してくれないかしら?」
「手荒な方法で入り込んできた癖しやがって、何言ってやがんだっ!」
「いやまぁ、確かにその通りだけど」
罪を犯しているという意味では、盗賊団の方が悪人なのだが、どちらかと言えば、不法侵入しているのはハヤトたちの方である。
犯罪者に自分たちの犯罪を指摘されるという、なんとも奇妙な構図にハヤトは相槌を打ってしまうが。
「だからと言って、俺たちが大人しく引くわけにはいかんのだわ」
「あ、そうかいっ!!」
カインが反論したと同時に、カンダラがナイフを投げてくる。
だが、投げられたナイフを難なく回避しただけでなく、同じようにナイフを投げ返した。
カンダラもカウンターは想定していたようで、こちらも手にした鞭ではじき返して懐に手を入れ。
「これでも、くらいやがれっ!!」
何かを投げつけてきた。
何かがはじける小さな音とかすかに香ってくる異臭から、投げつけられたものが爆弾であることにハヤトが気づき。
「
爆弾の進路の先に、魔術で壁を作り上げる。
対応できる時間を与えないようにするためか、爆弾の導火線は短くなっており、壁ができると同時に爆発音が部屋の中に響いた。
爆風は魔術で作った壁で防ぐことができたが、それは同時に自分たちの視界をふさいでしまうことにもつながっていた。結果、カンダラたちの行動を察知することが困難となり。
「隙ありだぁっ!!」
盗賊たちに挟撃を行わせることを許してしまった。
壁の脇から二人の盗賊がナイフを逆手に構えて飛び出してくる。
「ちっ!」
「任せて!!」
挟撃を仕掛けてきた盗賊たちに対処しようとカインが身構えた瞬間、シェスカが二人の前に躍り出た。
シェスカがいきなり飛び出してきたことに対し、盗賊たちは動揺する様子はない。
このメンバーの中で唯一、近距離での戦闘に特化しているシェスカが前に出ることは想定済みであったようだ。
「さすがに二人同時は無理だろうっ!」
「もったいねぇが、このまま死にさ……」
「それはお前さんらだっての」
だが、その二人の喉にむかって二筋の光がカインの手元から飛び出す。
その光が二人の喉に突き刺さった瞬間。
「しっ!!」
シェスカが正確に、二人の首へと拳を叩きこんだ。
その拳が向かう先は、喉に突き刺さった光の向かった先。
そこには、カインが愛用している投げナイフがあった。
当然、ナイフは拳によってより深く押し込まれ、盗賊二人のわずかに残った命の灯を一瞬でかき消す。
「さ、これであなただけよ。降伏するなら、命は勘弁してあげる」
「さっさと出てきた方が、身のためだと思うぞ~?」
いまだ出てこないカンダラにカインとシェスカが脅しをかける。
だが、カンダラが出てくる気配はなく、シェスカはカンダラの様子を見るため、壁に近づいてく。
「
「えっ?!」
シェスカが壁の脇からカンダラの様子を覗き込もうとした瞬間、ハヤトが突然、魔術を使い、さらに壁を作り上げ、カンダラの周囲を取り囲んだ。
「ど、どうして?」
「いやぁ、こういうときって武器を構えて不意打ちっていうのが鉄則なので、つい」
「ついって……いえ、一応、お礼を言っておくわ」
突然の魔術の発動に驚きはしたが、それはあくまでシェスカの安全確保のため。
悪意がないことを知ったシェスカが礼を言うと、ハヤトはなんでもなさそうな様子で、いえいえ、と返し、再び塀の中に閉じ込められているカンダラに声をかける。
「……さて、出てくる気がないみたいだから、そのままでいいけど。降参しないってんなら、こっちも考えがあるぞ?」
塀の向こうに声をかけるが、カンダラの反応はない。
気配が消えたわけではないため、単に息をひそめているだけのようだ。
実際、魔法で周囲を囲まれた時、焦るような息遣いが聞こえてきたため、壁の向こうにはいるのだろう。
最終勧告も聞き入れないとなると、この狭い塀の中で籠城を決め込むつもりらしい。
そう判断したハヤトは。
「……
わざと閉じなかった上部分から、魔術で泥を流し込み始めた。
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