黄昏時のラグナロック
らしぇる
第1話 邂逅
影のある少年(やれやれ、やっと授業とやらが終わったか。前世の力を取り戻すための修行をせねばならんというのに、この世界はなんとも不自由だな)
影のある少年(なんてな、俺の中の前世の『設定』だ。特に意味はない。それが格好良いからだ。俺自身はただの中学生だけどな)
美しい少女「そこのあなた!まちなさい!」
影のある少年「うおっ!ビックリした!な、なんだよ。なにか用でもあるのか?」
影のある少年(同じクラスの女子だったか?俺は学校でもボッチの根暗で通っていて、誰も近づいてこないんだがな)
美しい少女「ええ、そうよ。あなた、帰る時にいつもその指貫グローブしてるわよね。なんで?」
影のある少年「それは俺の前世からのクセみたいな……っ!!」
影のある少年(しまった!思ったことをつい口にっ!!違うんです。格好いいなって思ってしてるだけなんです)
美しい少女「あなたも、前世の記憶をもっているというの?」
影のある少年(ん?この反応、まさかコイツ……試してみるか)
影のある少年「貴様には関係ない。俺の前から消えろ。それとも、今から俺とバトルでもするか?どうなっても知らんぞ?」
影のある少年(主に俺の体がぼろ雑巾になるって意味だがな!)
美しい少女(この人、当たりだ!同じ趣味の持ち主!クラスの子とは誰とも共有出来ない趣味だと思っていたけど、あの指貫グローブ!間違いなかった!ワタシと同じ、中二病の持ち主だわ!)
美しい少女「あら、つれないわね?まさかワタシのことを忘れているだなんて。前世ではあんなに強く抱きしめてくれていたはずなのに」
影のある少年(な……なんだと!?俺の前世にそんな設定がっ!?いや、違うだろ。こんなにノリのイイ奴に会うなんて俺は運がいい)
影のある少年「ま、まさか、お前は……クッ、頭が痛いっ!!俺の、封印されし記憶に関わっている者だというのかっ!?」
美しい少女「そう、あなたの記憶にも封印がかけられているのね。わたしの記憶が少し戻ったのは、あなたがその指貫グローブをしている瞬間を初めて見た時よ。ラグナロックでの最後の闘いで、あなたがその手でワタシを強く抱きしめてくれる記憶が蘇ったの。ほかの記憶はまだだけどね」
美しい少女(完璧。設定を作る下地として『封印されし記憶』ができたわ。二人の設定がうまく記憶として混ぜられる最善手。あなたはどう返すのかしら?)
影のある少年「ラグナロック……魂の封印……貴様、まさか、あの……クッ!肝心な記憶がっっ!」
美しい少女「思い出せないのなら教えてあげる。ワタシは元魔王。歴代最強と謳われた女魔王アムドゥスキアス。今の名前は中村亜美よ。こちらでは、はじめまして、かしら?」
影のある少年「女魔王アムドゥスキアスだと!?なにか苦い記憶が……確かに、俺と貴様は前世での繋がりがあるようだな。一応、俺も自己紹介しておこうか。俺は邪神竜の血を引く覇王邪心眼ディヤウス。こちらでの名前は岸田真也だ。フン、今更握手とはな。はじめまして、だ」
美しい少女(この影のある感じ、ワタシの王子様設定にピッタリ!そっか、ワタシの愛した人は覇王邪心眼ディヤウスだったのね)
快活な少年「お!お前たち何の話してんだ?オレも混ぜてくれよ。オレは……そうだな。オレは伝説のモンスターテイマー、魔獣王バッカス。今は馬場貴明ってんだ。よろしくな」
影のある少年(な、なんだと!?この会話に割り込んでこれる奴がいたのかっ!?)
美しい少女(邪魔が入ったと思ったけど……意外とちゃんとした名前もあるし、ここは鎌をかけてみましょうか)
美しい少女「あら、ワタシたちの魂の再開、こちらでの初の出会いを邪魔するだなんて。あなた、ここでボコボコにされる覚悟でもあるのかしら?」
快活な少年「おっと、お前等もそうじゃないのか?記憶がどうのって言ってたのは聞いたぜ。オレもこういうのは好きなんだ」
影のある少年(コイツ、ロールプレイを知らないのか?それとも俺たちをバカにしてるだけか?判断がつかないな)
影のある少年「好きとか嫌いの問題じゃない。関係のない奴は邪魔だと言っているのがわからないのか?」
快活な少年「おっと、敵意はねぇよ。言ったろ?記憶の話だ。どうだ、オレのこと、思い出したか?」
影のある少年(コメカミに人差し指をコツコツするこの動作……記憶に繋げようとすることも……まさかコイツも中二病!?)
美しい少女「るっさいわね。前世でも言ったはずよ。あなたのことはワタシの記憶から消しておくってね」
快活な少年「なんだ、覚えてるんじゃねぇか。ま、オレ様のことは忘れようとしてもそんな簡単にはいかんだろうからな!」
無表情な少年「どうしたんだ、お前たち。こんな目立つようなところで茶番劇なんかして」
快活な少年(おっと、オレがロールプレイを始めたところで……これはタイミングが悪いな。オレって声がデカいからな。しくじったな)
影のある少年(魔獣王の声が目立っていたからな。二人を連れて話ができるところに移動するか)
美しい少女(なんか邪魔ばっかり入るわね。この子は中二病じゃなさそうだし、無視ね)
無表情な少年「ここは目立つから移動すべきだろう。ラグナロックの闘いでボクらは魂の力を使い果たしてしまったし、記憶のほとんどは神々によって封印されているんだ。記憶の封印を解くためにも余計な邪魔を入れるわけにはいけない」
三人「「「えっ?」」」
無表情な少年「ボクのは記憶ではなく『記録』だったので殆ど消されずに済んだんだ。ボクは名も無きアンドロイド。モデルRDX-232C-Z、シリアル番号00982829931だ。今の名前は田中一郎。改めてはじめまして」
影のある少年(なんだ、コイツも仲間に入りたかったのか。ここでアンドロイドとは予想外だな。だが、それがいい)
影のある少年「お前……何か名前があったはずだろう。そんな長い名前じゃなかったはずだ。あっただろう?俺たちが付けてやった名前が」
無表情の少年「アール。そう呼ばれていた。我々が再開したことで魂の封印が少しずつ解けはじめたようだ。時間をかければ鮮明な記憶を取り戻せるかもしれないな」
影のある少年「いいだろう。お前たち、今から時間はあるか?俺の部屋でじっくりと話そうじゃないか。前世の記憶をな」
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