足跡

この瞬間にも俺の魂は死に続けて、そして生命も確実に死に向かって滑り落ちていっている。一歩を――踏み――出せ――。それをとどめる一歩を。中断させる一歩を。滑り落ちてゆく人生という断崖に一歩を刻め。たとえそれが落下を止めることができないとしても、足跡だけでも残すのだ。すぐに消えてしまう足跡だとしても。

 必死の一歩を刻め。刻め刻め刻め刻め。けれども刻んでも刻んでも後から後から新しい足跡がそれを消していく。みんなの決死の一歩が俺の足跡を次から次へと消していく。そうだ、誰もが必死で生きているんだ。そうして俺は奈落の底へ。もう後に残す足跡すらない。諦めたんだ。人より速く。だから人より速く落ちていく。奈落は深く。もう何もしないで良いよと優しく俺を包み込んでくれた――。俺は目を閉じる。けれども最後にやぶれかぶれの一歩を。それが空を切って、少し悲しいかもしれない。

 ああ、もう体は奈落に抱かれて。自分の人生が無意味だったと教えてくれた。

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