菓舗むらかみ

どうも、菓舗むらかみ代表の村上誠二と申します。

むらかみは創業が文政二年と伝わっておりまして、もうすぐ創業200年を迎えるところでした。

老舗と言えば、老舗なんでしょうけど、うちは店舗もひとつだけだし、そんな立派なものではないんですけどね。

私で11代目になります。

大福の専門店として営業しておりました。

古くはお城の殿様がご愛用してくださったようですが、今では地域のみなさんに、おやつに、あるいはご贈答用にとお買い求めいただいておりました。


世間で○○○○○○習慣禁止法が騒ぎになってると知ってはおりましたが、正直対岸の火事だと思っていました。

まさかウチみたいな小さな菓子屋まで影響を受けるとは……。

たしかに、○○○○○○習慣とウチの商品と、似てると言えば似てますが、日本人でまさかこれらを同じものと認識する人は皆無でしょう。

ただ、外国人から見れば同じに見えるんでしょうね。本当、納得いかない話ですよ。


クジラ漁に抗議してるテロリストまがいの連中がいるというのはテレビで見て知っておりましたが、まさかこの分野にもそれに類する活動家がいるとはゆめにも思っていませんでした。

まさにあれにそっくりな連中がウチの店の前に来て、騒ぐんですよ。

拡声器を持って店の前で、「○○○○○○習慣をやめろ!」って……。


警察に連絡して追い払ってもらうんですが、そうすると数日は来なくなるんですけど、いつの間にかまたやってきて、さらには夜のうちに郵便受けのなかに汚物をぶちまけられてたり……。


グローバルスタンダードというのか人権思想というのか、私にはよくわかりませんが、これも時代の流れなんでしょうかね。

○○○○○○習慣によって毎年多くの死者が出ているのは事実でしょうが、たかがこんなことにまで外国人に口を挟まれるなんて。

こうやって、よその国の習慣を糾弾するような連中が、同じ口で多文化共生とか多様性とか言ってるらしくて、もう呆れるを通り越して片腹痛いですよ。


ウチの商品で亡くなった人?

そんなの一人もいるわけないですよ。絶対にいません。


ああ、政治献金に関しても、事情をまったく調べもしない野党議員が国会で騒いだそうですね。

というか、あの議員が国会でウチの社名を出したから、ウチがデモの標的にされたんでしょうけど……。

明治維新のころだそうですが、ウチの店が火事で焼けるということがあったんですが、そのときに店の再建を支援してくださったのが、維新で一兵卒として活躍した総理のご先祖だったそうです。

賄賂なんていうほどの額を献金できるほど、ウチは裕福じゃありませんよ。

私たちは、先祖代々受けた恩を少しでもお返しするつもりで毎年欠かさず少ない額ですが浄財として総理に献金をいたしておったんですが、かえってご迷惑をおかけしたようで、心苦しく思っております。



正直、もう疲れました。

今月で店は閉めることにします。

私はずっと、こればかりをやってきたので、今さらほかの職に就けるわけもなく、途方に暮れております。

店の土地を売れば、少しは生活していけるくらいのお金は入ってくるでしょうが……。


それよりも、息子に対して申し訳ないです。

菓舗むらかみの店を守って、そして100年後200年後も続けられるように次の世代につないでいくのが、私の役目と考えておりました。

息子はそこそこ頭が良かったとは思いますが、大学なんか行かなくても、店を守ってたら大儲けはできないけど一生食うには困らないんだから店を継げと私が強く勧めて、子供の時分から修行させていたんです。


ご先祖から預かった暖簾を私の代で降ろしてしまうのは、本当に断腸の思いです。

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