【WEB版】追放された落ちこぼれテイマー、上位魔神(美少女)とイチャラブしながら勇者に報復します~どんな魔物でも◎◎◎したらテイムできました~

九条蓮@㊗️再重版㊗️書籍発売中📖

1章 上位魔神との邂逅と契り

死の予感と重ね合わせた唇(表紙)

 ──終わった。

 俺は自分の死を確信した。宿代をケチって野宿をしてしまった自分を心底怨んだ。

 今、俺の目の前には、この世の者とは思えないほど人間離れした美しい女がいた。蝙蝠のような大きな翼と山羊の角を持つ、長い銀髪の女だ。

 彼女は美しさと儚さを併せ持つような女だった。

 美しい悪魔は、紫紺の瞳で俺を見据えて、一歩、また一歩と歩いてくる。黒いローブの隙間から見える白い肌が妙に艶めかしい。

 外観からわかる通り、彼女はもちろん人間ではない。

 彼女の容姿は、おそらく魔神⋯⋯しかも、彼女の体から溢れる魔力の強さから鑑みても、下位魔神レッサーデーモンではない。上位魔神グレーターデーモンか、それ以上だ。

 とてもではないが、テイマー──と言っても一般人と大差がない程弱い──の俺が撃退できる相手ではなかった。

 彼女は一歩、また一歩と俺に近付いてくる。

 しかし、俺は動かない。いや、動けない。恐怖のあまり腰が抜けてしまって、立ち上がれないのだ。

 魔神なんて、生きていても滅多に会えるものではない。ましてや、夜中とは言え、こんな人里近い草原でふらふら歩いていていい存在ではない。

 人族からすれば、伝説のような存在……高名な冒険者ですら、会った事などないだろう。なぜなら、会ったが最後、そこで命が尽きるからだ。そして、俺の命もまた、尽きようとしていた。

 ただ、歯を震わせて、己の死を待つだけの時間だった。

 食われるのか、魂を吸われるのか……どのみち、ろくな死に方はしないだろう。魔神とは、テイマーの俺でさえ伝承程度の知識しか持ち合わせていないような存在だ。一般的に情報が出回っていないので、どんな殺され方をするのかさえ、全く想像がつかない。

 とうとう、銀髪の女が俺の目の前に立った。

 彼女はその紫紺の綺麗な瞳に俺を映し、見下ろして……遂に、その手が俺に伸びてきた。


 ──殺される。


 そう思って、目を瞑った瞬間だった。

 ふわりと良い匂いに包まれて、ほんの少しだけ体に重みが加わった。夜の闇と死の恐怖で冷え切った俺の体に、ほんの少しだけ熱が移ってくる。


「やっと……見つけた」


 俺の耳元で、呟くような声が聞こえた。

 可愛らしくか細い声だったように思う。まるで人族の少女と変わらぬ声。そしてそれはまるで、泣くのを我慢しているような声でもあった。

 状況がよく解らず、恐る恐る眼を開けてみると──なんと、魔神の女が、俺に抱き着いていたのだ。

 眼を開けても、全く状況がわからなかった。


「お願い……助けて」


 魔族の女は懇願するようにそう言って……俺に口付けてきた。

 これが、俺と──後に俺がティリスと名付ける──美しい上位魔神グレーターデーモンの出会いだった。


【表紙】

https://kakuyomu.jp/users/kujyo_writer/news/1177354054894982495

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