第34話 文化祭当日①

 とうとうこの日がやってきた文化祭。

 朝から下準備やらで校内はドタバタしていた。

 もちろん実行委員会も忙しく、校舎内および校外ブースの見回りや体育館の会場設営の点検などに追われている。

 そんな中で俺はというと、雑用係らしく機材の運び入れや設営を手伝ったり、時にはパシリになったりとしていた。

 正直、この文化祭で一番動いているのは俺ではないだろうか? 実行委員会内での功績をざっと頭の中で思い浮かべても相当なものである。もし、文化祭のイベント内でMVPがあるのだとしたら是非、俺を選んでもらいたい。でないと、この頑張りが報われん。

 俺は汗をたらたらと流しながらもある程度の作業を終えたところで、日陰がある体育館裏へと向かう。そこで壁にもたれつつ、先ほど自販機で買ってきた冷たい缶コーヒーを開け、一口含む。


「おっ。上村歩夢じゃないか」


 誰かに名前を呼ばれ、その方向に視線を向ける。


「内村先生っスか……何しに来たんっスか?」

「何しにって、これだよ」


 そう言って、ポケットから取り出したタバコの外箱を目の前でチラつかせる。


「ここって校内禁煙でしたよね?」

「そうだったか? 校内のルールなんて私にはわからん」


 内村先生は少し離れたところで俺と同じく壁に背を預けると、タバコを一つ取り出し火をつけて口に咥える。

 辺りにはタバコ特有の匂いと煙ったさが一気に充満し始めた。


「で、最終的な準備は終わったのか?」


 内村先生がタバコを一旦口から離し、ふぅと煙を吐く。


「まぁ見た感じだと問題はなかったんでたぶん大丈夫だと思います」

「たぶん?」


 ギロリと内村先生の瞳が鋭く俺を捉えた。


「い、いえ……完璧に大丈夫っス」

「なら、いい。あとは本番を向かえるだけか」


 開催時刻は午前十時からになっている。今は九時半頃だからあと約三十分といったところか。


「そういや、お前の担当はわかってるよな?」

「記録係……でしたっけ?」

「そうだ。カメラはデジカメじゃなくて一眼レフを使え。わかったか?」

「あ、はい……」

「じゃあ、私はそろそろ戻るとしようか。開催前にちょっとした職員会議に出席しなければならないからな」


 内村先生は手に持っていたタバコを携帯灰皿の中に放り込むと、そのまま行ってしまった。


「なんなんだよ……」


 そう思いつつ、俺は残りの缶コーヒーを一気に仰ぐと、一眼レフを借りに事務室へと向かうことにした。


【あとがき】

更新が遅くなってしまい申し訳ないです!

最近、新しく連載を始めた『お兄ちゃんのこと一人の男の子として好きになってはいけませんか?』の方に没頭しておりました。こちらの方も是非とも読んでいただけるとありがたいです!(しれっと宣伝すんな)

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