亡き両親が結んだ約束は、異世界を巻き込む大きなものでした。(仮)

@EnHt_919

第一章 情炎

第一節 春と出会い

第一話 不登校と不投稿(作者)

トースターで適当な時間焼いたせいで若干焦げが目立つ食パンをかじりながら、おもむろにテレビをつける。

最近は、「人気も火の気もない場所で起きる、被害者ゼロの火事」の話題で持ちきりだ。

火事の起きるはずのない場所で、焼け跡だけが残っているという不可解な火事現場がここ数日、何か所も見つかっているらしい。被害者はそうだが、火元すら見つからないことを皆不思議に思い。

あーだのこーだの世間が騒いでいる、SNSですらその話で持ち切りだ。

「まぁ、気になりはするよな~。だれが何のために、火つけてんのか。」

テレビを見ながら、おもむろに青年がそうつぶやく。

『…さぁ。何のためだろうな。案外、火事なんて起こしてる気ないのかもなぁ』

「なんだそれ。火遊びしてるってことか?」

『しるか。火が日常的な、当たり前のようなものになってるやつもいるかもしんないだろぉが。』

「え~、今時いるの?そんな奴。」

今「優時郎ゆうじろう」が、話している相手は誰にも見えない鬼の姿をした霊的な何か。

春鬼はるき」と名乗るのその存在は、優時郎が小学生の時突然聞こえるようになって以来一人ぼっちだった優時郎の唯一、心のうちをさらけ出せる話し相手になっている。

「…八時か。今日の学校…どぉーしようかなー。」

優時郎は、不登校の中学生だ。

理由は簡単、ちょっとしたいじめとその他諸々だ。

優時郎自身も何でこんなくだらないことで、不登校になっているだろうと思うところもあるが、行きたくないものはしょうがない。

「うーん…」

「とりあえずで早起きしたけど、二度寝でもしようかな…することもないし。」

『…おぉ、そうか。』

こうやって、一日が過ぎてゆく。

優時郎は、小学生高学年のころからずっとほぼ一人暮らしの状態で育ってきた。

そのため夏休みの宿題をしなくても、どれだけ遅刻や欠席を繰り返しても、誰からもとがめられることがなかった。

そのおかげかだろう。

今となっては休み癖が離れず、毎日が夏休みであるかのようにぐーたらと寝て起きてを繰り返す毎日だ。


そんなこんなで食器をかたずけ、布団にうずくまってから数時間が経過した。重い瞼を少しずつ上げていると携帯のバイブレーションが鳴っていることに気が付いた。


【ブーブー】


(?…目覚ましか、こんな時間にかけたっけ?)

震えるスマホに手を伸ばし、携帯の画面を覗くとそこにはアラームではなく通話の表示がされていた。

着信相手は「星美ほしみ」と表示されている。

画面からあえて目をそらして、ゆっくりと通話に出る操作を行う。


『あ、やっとでた!もー、さっきからずっとかけてたんだけど!宮村君寝てたでしょ!」

「あーはい。寝てました。」

『昨日あれだけ言ったのに!春休み前最後で学年も変わるから荷物や宿題とか受け取りに学校来た方がいいよって!』

「そうだったようなー…。」

不登校である優時郎が今朝ちゃんと起きていたのは、実はその電話があったから起きていたのだが。

まぁ、当然の如く直前で行く気が失せたというかなんというか。

というのが本人の言い分なのだが、そんなものわざわざ事前に連絡をくれた星美に堂々と言えるわけもなく。

変にごまかすといった、愚行に出ているのだが。

そんなものがまかり通るわけもなく。

『行きたくなくていかなかったのは、どうしようもないけど。私に何かない?』

「あー、すみません…でした。」

『悪いと思うなら、家の前で待ってて。今、宿題とかプリント…届けに行ってるから!』

「はい…わかりました。」

『このまま、つうわ ₋ 』

ぶっつっと、会話のきりがよかったので自然に切ってしまったが、今何か言いかけた気が…まぁ大丈夫だろう。

そう判断し外に出ても恥ずかしくない服装に着替え始める。


いつ来るかわからないのもあるが、少しばかり罪悪感の方が重いので早めに家の前に出ておこう。ガチャっと、引きこもりには少し力のいる玄関を開けると、外は思ったより明るかった…というより、眩しかった。

不思議に思い目の前を見ると、原因がすぐにわかった。


「あそこの街灯…あんな明るかったけ。」

そうつぶやいて、離れる予定のなかった玄関前を離れ住宅街を歩き出した。

ただ、街灯の明かりが気になって。


「え、だっ…誰。」


街灯に目をやるとやっぱり明るいと思っていた光量の強い街灯を目視できたが、それとは別に街灯の明かりの下で倒れている人影が目に入った。

『死体か?』

「いやいや、そんなわけ……物騒なこと言うなよ。」

『道端で女が倒れてるだけでも物騒だろうがよ。』

「まぁ、確かに。てゆうか、あの女の人寝てるだけ…なわけないよな。」

『んなもん、近づいて確認すればいいんじゃねぇーか?』

「そ、それもそうか。」

街灯からの白い明かりを浴びている女性は、その明かりのせいで服や体の汚れが目立って見えた。しばらく足を止め女性の様子を見ていた優時郎は、少し大きく息を吐くと女性のもとへと歩き出した。

あともう数歩のところで優時郎が女性に向かって「あのー、大丈夫ですかー。」っと声をかけながら近づきはじめた。

しかし、返事はなし。

近くまで来きて顔を覗くと目をつむっており、鼻や口元に手をやると息があることは確認でき脈があることも確認した。

「寝てるだけっぽい?」

『みたいだな。』

「でもまぁ、道端に倒れてたわけだし。救急車…呼んどこう。」

携帯から、119へ連絡し状況を説明し救急車を呼んだ。

しかし、なんでこんな何もない住宅街にこんな汚れた格好をした裸足の少女なんていう意味わからん状態の女性が倒れてるんだろうか。服の汚れは傷や泥などもみられるが一番多く目立って見れるのが焼け跡だ。

特に不思議なのは焼け跡があるのにその下の肌は、何の傷もない真っ白だったということ。

普通に考えたら、汚れて焦げて穴の開いている服をわざわざ着たということになるが、それはそれで意味が分からない。

地面に血の跡もないので怪我をしているようすでもない。

「え⁈宮村君?」

「うわ!なんだ…びっくりしたぁ。」

すっかり忘れていたが、優時郎は今話かけてきた少女「星美香菜(ほしみかな)」に言われて外へと出ていたのだ。

見たところ制服姿、学校終わりそのままで来たらしい。

「そのこ…裸足。あ、もしかして!」

「な、なに?心当たりあるんですか?」

「多分なんだけど、さっき駅方面で一軒家の火事があって、私は火も消えて落ち着いてきたとこをちょうど通りかかったんだけど、残ってた人たちが言ってたの。駆け付けた裸足の女の子が家の中に残ってしまった子供を助けたおかげで死人が一人も出なかった…よかったって。」

「…ちょっと持って、それが本当なら結構まずくないか?」

「え?なんで?」

「火事の中に入っていったんでしょ?じゃあ今この女の人が倒れてるのって、呼吸が原因だったりしない?」

「え、えぇ…!そうかも…。」

最初は、寝ているだけかもとなんとなく見た感じで思ってしまっていたが、今の話が本当だったら一刻を争うかもしれない。実際に何がどのくらいどこがまずいかなんてわからないけど。

それが原因で死ぬことだってあり得る、かもしれない。

幸い、救急車はもう呼んである。

「救急車は呼んであるから、とりあえず到着をまとう。」

「うん…!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る