一等星《シリウス》の輝きへ-二人は冒険の旅に出る-

つしまいたる

第1話 プロローグ

 冒険者。それは未知を求める者。伝説、神話、おとぎ話……開拓され尽くされていない以上、この世界にはあらゆる可能性が満ち溢れている。

 夢を語って何が悪い? 栄光は夢の先にあるものだ。

 剣を持て!

 火を灯せ!

 前人未到の頂へ、いざ進め!

 そう子供達に説く男は、夢破れた者だった。だからこそ、後世に達成してもらいたいと願った。己が経験した感動を体験し、屈辱を乗り越え、見ることが出来なかった更に向こうの景色をいつか教えてほしい。

 男は、子供達に冒険心を託したのだった。



 魔法使い。それは未知を求める者。土が育み、水が沸き、火が燃えて、風が吹く。例え今は答えに至らずとも、あらゆる事象は解明できる。

 しかし魔法は未知に包まれたままだった。

 なぜ土が形を変える?

 なぜ水が生まれる?

 なぜ火が操られ、なぜ風が踊る?

 小規模なだけであり、これは人が起こす天変地異だ。なぜこのようなことが出来るのか。もはや生活の地盤に組み込まれてしまって身近になった様々な魔法。それらの中に、世界が内包されている!

 そう子供達に説く男は、探究の道に疑問を持ってしまった者だった。このままでいいのか。例え解明できたとして、世界に変化がありえるのだろうか。一度揺らいだ心は揺れたまま、せめて歩んだ道は消さぬよう説き続ける。男は、子供達に探求心を託したのだった。



 月日が経ち、そんな彼らは縁を結ぶ。冒険者協会の指導員と魔法研究所の研究員。職は違えど、共に飯を食べ、共に酒を飲み、共に夢を語った。

 更に月日は過ぎていき、彼らも妻を娶り、家族を持つ。示し会わせていないのに、婚約を交わした日も子供が生まれた日すらも同じであり、縁はここまで強いのかと互いに大笑いするのであった。

 彼らは変わらず、我が子に夢を語る。追い焦がれる冒険心を、満ち足りぬ探求心を。それは少しだけ混ざりあって伝わっていく。



 物語の主役は、心を託された子供達。世界の未知を追い求める子供達。託した人達が想像していた未来とは異なっていたけれど、彼らが思い描く未来を軽々と超えていく冒険を繰り広げることになる。それを聞くことができるのはまだまだ先のお話。


 長々と語っていても仕方がない。早速物語を始めよう。

 これは、未知への探求心を宿す少年と、未知への冒険心を燃やす少女の冒険譚である。

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