ナイトメアサバイバル1

世界に自分の真実をばら撒き、肉体を奪われたことを告白すればダイセンは自分に美少女の体を返さずにはいられなくなるはずだ。その目論見はマカネの知らぬところで打ち砕かれていた。


代替の悪魔オルタナティブどもはコロシアムを電子的に遮断し情報的に孤立させていた。通信は遮断され、マカネの真実を伝えられた者はコロシアムに居る観客たちのみであった。


マカネのメイド長たるアイリーンはその事実に最初に気づいた。定命の存在を脱した当初からの宿敵、世界の運命を貪る未来の悪魔達が動き始めたことを。マカネの秘密が漏れることをあちらも忌避しているのか?アイリーンは思案した。


その思考は一時中断した。敵の次の行動が見えたからだ。アイリーンは一応のご主人サマであるマカネを案じた。やつらの狙いは彼女だ。


動揺、どよめき、戸惑い。観客の無数の反応の中で私は私と対峙している。私の姿を奪った男と対峙している。「返してもらうぞ、おまえの罪の証人がこれだけ居るのだ」わざわざくだらない闘技場のルールに従ったのもこのためだ。

「それはできない」ダイセンの言葉が私の姿から紡がれる。「私のためか?」私は機先を制して問う。私が自分の体に戻れば、またイグナイター・ミッドナイトが目覚める。「次はイグナイターに心を奪われることになる」


あの怒りと破壊衝動、世界への呪いが思い起こされる。「私は、君を世界の為に犠牲にしたくは無い。歴史の葬列に加わるな。アイリーンの操り人形になって欲しくはない」


「ふっ」「なに?」思わず吹き出した私にダイセンが困惑する。「勝手なことばかりいうな。私のせいで私の体にオバケが憑いたのだ。それをあなたが責任を感じる必要はない」「マカネ……」


「それにアイリーンがなにを企もうとも、絶対失敗するぞアイツ」「……そうだな。……ん?マカネ!」ダイセンが叫んだ。ツボミからも通信!私は目を疑った。


大量の能異頭ノイズだ!

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