第99話:水平線に

 俺なんかやっちゃいました?

 っていうのはこういう事なんだろうか……。


「ルーク様の流れるような剣技は、それはもう素晴らしくて」

「ウークねぇ、走りながらモンスターをザシューッザシューッってしてたんだおぉ」


 ……そ、そうだったっけ?

 無我夢中だったし、よく覚えてない。

 そりゃあ石投げて、魔法の効果を抜けてくる奴らを斬って、また石投げてってやってたけど。


 あぁ、うん。

 頑張ってました、はい。


「り、領主様……あんたいったいどうなってんですか」

「生まれも育ちも確か貴族でしたよね?」

「代々騎士の家系だったんっすか?」

「いや……貴族だけど」


 貴族と言っても、使用人同然の暮らしをしていたけど。

 まぁそんな中でも、本来エンディンが学ぶはずだった剣術は教えて貰っていた。

 単に奴がサボるもんだから、剣の師が仕方なく俺に教えてくれていただけだけどさ。


「ご領主様、いったいどんなステータスなんですかい? 全然お疲れになってないようだし」

「え……えぇっと……ちなみにお前はどうなんだ?」


 今話ているのは鉄級の冒険者だったか?

 一番下から銅→赤銅→鉄→銀→金→白銀→金剛だ。

 金剛がダイヤモンドの事。


 銅が新人。赤銅で一人前扱いされるってのは聞いた。


「俺ですかい? 俺は筋力が78、肉体が65。あとはまぁ並程度ですぜ」

「並の基準が分からないなぁ。俺は──」


 ステータスよ出て来いと念じて──




 ルークエイン・トリスタン

 人族  15歳  男

 

 筋力:169  肉体:127  敏捷:82

 器用:71  魔力:42


【才能】

 錬金BOX40


【ギフト】

 付与13




 以前はステータスの実付与干しブドウを食べるたびに確認していたけど、それも面倒で島に戻って来てから見ていなかった。

 たまに見た時に魔力が上がってたら喜んでいたけど、結局付与石あるからいいやってなるとそれもなくなったし。

 うん……俺のステータスちょっとヤバい?

 確か金級が200ぐらいだって言ってたよな。


「どうしたんです、ご領主?」

「あぁ……あ、き、筋力と肉体が100を少し超えてるんだ。いやぁ、島の復興で木材や煉瓦を錬成しまくって、それを運んだりしていたからだろうなぁ」


 嘘ではない。たぶんあれでも体力が付いたと思っている。


「あと剣術は子供の頃から習ってたしな」


 嘘ではない。五歳ぐらいから習っていた。週一日、一時間程度だけど。


「筋力と肉体が!?」

「二つが100超えってのはすげーな」

「だな。銀級でもどれか一つが突出して100超えてるぐれーだもんなぁ」


 そうだったのか!?


「ご領主は金級並のステータスなのかよ。そりゃあツエェーはずだ」

「それにあの付与石だもんなぁ」

「「ツエェーよなぁ」」

「い、いやぁ……は、はは。ははは」


 ス、ステータスの実、自重するべき?






 地上では特に異変もなく。

 念のために二十人ほどは徒歩で地上を目指して貰うことにした。


「すっかり陽が暮れていたんだな」

「真っ暗ですわね」

「お星さまもお月様も出てないぉ。今日は曇ぃー」

「雨も降っていたんだろう。足元がべちゃべちゃだ。姫、滑りやすいので気をつけてください」


 今は止んでいるようだが、見上げた空は真っ暗でシアの言う通り月も星も何も見えない。

 分厚い雲に覆われているんだろうな。


 ぐるりと視線を巡らせて、どこかに雲の切れ目でもないかと見ていると──


「ん? あの光はなんだろうな。大陸の方にある港町の明かりだろうか?」


 海があるだろう方角に、点々と明かりが見える。


「そっちは南の方角ですし、オリーエの港町とは方角が逆ですわ」

「あ、そうか。じゃあアレは……」


 なんの明かりだ?


『船だ。ルークエインよ、船が来るぞ』

「ゴン蔵!?」


 まったく、羽ばたくときの音も風もなく、いつの間にか来てるんだもんな。


 しかし船……か。

 船としたらアレ、多くないか?


『ふふん。この島に攻めてくるなど、愚かなことだ』

「いや、そうと決まった訳じゃないから突然襲いにいったりしないでくれよ」

『ク美にも言うのだな』


 そうだった……。早く海岸にいかなきゃな。






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*新作投稿始めました。

異世界転移「スキル無!」~無能だからと捨てられたが、授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだった~

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918190946


こちらは異世界転移物となっております。

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