第78話

『キシャアァァァッ』

「五月蠅い邪魔すんなぁーっ!」


 ドドリアンを収穫する間、エイリ●ンもどきが何体も襲って来た。

 ある時跳躍して目の間に来たから、思わず『雷神と炎のミスリル・ソード』を引き抜いて一閃。

 面白いほどスパっと斬れて、バリバリのゴォォでぶっ倒れた。


 その間にドドリアンがたっぷり溜まって、『錬金BOX』いっぱいに。

 蓋をすれば匂いもない。


「さて、帰るか」

「おーっ」

『ペェー』

『ペペェ~』

『ベェ~』


 海岸に戻れば、浅瀬でク美親子が遊んでいる姿が見えた。


『あ、おかあしゃん。ルークが戻ってきたでしゅよ』

『あら。おかえりなさいルークさん。ドドリアンというのはたくさん採れましたか?』

「あぁ。取れたよ。そういえば海の魔獣だから、陸の食べ物は知らないんだよな?」

『えぇ、普段は魚しか食べていませんので』


 食べさせて大丈夫なのかな?

 腹を壊したりとかしないだろうか?


 それを尋ねると、案外大丈夫だとのこと。


『船には時々陸の動物が積まれています。それを食べることも稀ですが、あるのですよ』

「へぇ。じゃあちょっとこれ、食べてみるか?」


 箱から取り出したくっさい果物。

 まず興味を示したのはクラ助──だが、


『くちゃいでしゅ!』

「あぁ、やっぱりか。うん、俺も凄く臭いと思う」

『そんなのが食べ物なんでしゅか!?』

「まぁ一応」


 臭いから嫌だという。

 じゃあ今度、まともな果物を届けてやろう。


 次にモズラカイコが住む森の近くで下ろして貰い、『錬金BOX』の箱を空けて待った。


「ウーク、来たよ」

「さっそくか」

『ズモモモモォォォ』


 このくっさい臭いに釣られてやってきたモズラカイコは五匹。

 だがこちらを見てビクリを羽を震わせた。


『ズ、ズモ、ズモモォ』

『ベェ~。ベベベェ、ベェ~エ』

『ズモ!? ズモモッ』


 なにか交渉が始まったようだ。

 ならばと箱からドドリアンを一つ取り出し、そしてモズラカイコに向かって投げる。

 あとで手洗わなきゃな。


 弧を描いて飛んだドドリアンを、一匹のモズラカイコがキャッチした。

 受け取って、そして俺を見つめる。

 首を傾げて「いいの?」と言っているようだ。


 あ、ヤベ。ちょっと可愛い。

 カイコとはいうが、よく見ると羽はカラフルだし、蝶々っぽいとも言える。


「いいぞ、食べて。だけど糸を少し分けてくれないか?」

『ズモ』

『ベェ~ベ』

「ウーク、箱のドドリアン全部出して、糸キャッチしなさいって」

「シアはモズラカイコの言葉も分かるのか」


 言われた通り箱からドドリアンを全部出す。ごろごろと地面に転がるそれを、モズラカイコたちが二つずつ持って行った。


「ううん。ハンナが通訳してくれるのー。シアは魔獣の言葉は分かるけど、そうじゃないモンスターの言葉は分からないお」

「けどハンナは分かるのか」

「ハンナはこの島でずっと暮らしてるから、分かるんだってぇ」


 言葉を覚えたとか、そんな感じなんだろう。

 しかしドドリアンがめちゃくちゃ余った。モズラカイコは十匹もいなかったからだろうな。

 ──と思ったら、一匹が『ズモォォォォン』と鳴くと、暫くして仲間が三十匹ぐらいやって来た。


『ズモ』

「お、おう! じゃあこの中に頼むぜっ」

『ズモモォーッ』


 そうして一匹がだいたいサッカーボール二個分の糸を吐き出してくれた。

 これで足りるだろうか……実際に養殖場の大きさを決めて、深さとか調べて計算しなきゃな。


「足りなかったら、また来てもいいか? ドドリアンのお土産はちゃんと持参するからさ」

『ズモッ』

『ベェ~』

「いいおって」


 ちょっぴり大きなモズラカイコがやって来て、その手を差し出す。

 おぉ、握手なんて知ってるのか!?

 あ、それになんかこの手、指がある。


『ズモモモ』

『ベェ~。ベベ』

「人間はこうやって友好を深める。モズラ知ってるって言ってるお」

「へぇ~、賢いんだなぁ。じゃあ、ヨロシク頼むよ」


 こうして俺とモズラカイコは友好を築いた。






 モズラカイコたちはドドリアンの木の世話ができるという。


『ズモモ。ズモモモモモ』

『ンペェ~。ペペェペェ~』

「モズラカイコは昔、ドドリアンのあった辺りに住んでたって」


 先日貰った糸で網を錬成したが、強度を重視でやったら意外と長い網が作れないことが判明。

 本日二度目のドドリアン貢ぎをしている。

 今日の通訳はジーナだ。シーナとボスも一緒に来ている。


『ベェーベェ』

「三十年ぐらい前に、あいつがら住み始めたんだってぇ。元はもう少し北に住んでたやつって」

『ベェー。ベベベ』

「島から冒険者がいなくなって、あいつらの数が増えたって言ってる」


 冒険者が島の食物連鎖を調整していたのかよ。


 しかしモズラカイコが木の世話が出来るのなら、ドドリアンの木をこっちに植林したらどうだろう?

 そう提案すると、モズラカイコたちは大喜び。


「じゃあ明日さっそく、ゴン蔵に頼んで木を引っこ抜いて貰うか」

「お~っ」

『ペェ~』


 翌日、ドドリアンの森にエイリ●ンの絶叫が木霊した。

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