第26話


 アイテムボックスにならないとしても、分解すればいい訳だ。

 ならレッツトライあるのみ!


【付与しますか?】


 YES。


 箱が光る。蓋を開けると中にあったのは背負い袋だけ。石は?

 取り出した背負い袋の口を閉めるための紐に、あの石がくっついていた。

 ダサい……。


 恐る恐る背負い袋を勝手口の外に放り投げてみる。

 ぽそっと地面に袋が落ちるが、特に土がえぐれたりはしていない。


 じゃあ──

『錬金BOX』に入れて鑑定してみると、

【異次元式背負い袋。背負い袋の中は異次元に繋がっていて、アイテムを無限に入れることが出来る。取り出すときは頭に浮かんだ中身のイメージから該当するものを選んでください】

 ──と。


「うおぉぉぉっ! ついにアイテムボックスゲットだぜ!!」

「うおおぉぉぉ! うぐぅ……」

「あ、わるいわるい。水を汲んで来て貰ってたのに、そのまんまにしてたな」


 井戸の水を錬成し、『タオル』と呼んでいるシーツの切れ端で足を拭いた。

 水の冷たさに目が覚めるが、それも一瞬のこと。

 ふぅっと一息つくと、途端に瞼が重くなる。


「ふあぁぁ。さぁ、寝よう。ドロップアイテムの鑑定は明日にしような」

「あぁいぃ~」


 ベッドに潜り込むとすぐに睡魔がやってきた。


 そして──


 東の空が白み始めた。


「うぉい。嘘だろ。これから寝ようってところだったのにぃ」

「すぴぃー」


 シアは秒で寝たのか。くそぉ。俺も寝るぅー!






 結局、朝日が眩しくて眠れず。

 木材を錬成して窓と同じ大きさにすると、それを立てかけカーテン代わりにして眠った。おかげで部屋の中が暗くなって、めちゃくちゃよく眠れたよ。

 その板を外すと、外は薄暗くなっていた。


「俺たちどのくらい眠っていたんだろうな」

「ふわぁぁ~ぁ。うぅー、いっぱい」


 まぁいっぱいだよな。だってもう夕方だもん。

 体のだるさがあるものの、ここで二度寝をしてはいけない。してしまうと昼夜が確実に逆転してしまうから。


「さぁ、頑張って体を動かすぞっ。五日間、いや六日間畑を放置したからな。ガラスハウスの様子だけでも見ておこう」

「うにゅうぅぅっ」


 ハウス内の野菜に水をやり、それから戻って夕食という名の朝食を食べた。


「さて、宝石の鑑定といきますか」

「おぉ!」

「まず赤い石っと──」


 いくつかある赤い宝石だが、それぞれ形や細かい色味は違う。全部個別に鑑定するか。


 まず赤い石はルビーとガーネット、ファイアオパールという三種類か。

 

 青はサファイア、タンザナイト、ラピスラズリ、ブルーアパタイト。

 

 緑はエメラルドとペリドット。


 で、鑑定して思った。

 俺、宝石の価値とか全然わっかんねー。

 シアに聞いたけど首を傾げられてしまった。


「こういうのを宝の持ち腐れって言うんだろうな」

「あうぅぅ……」

「はぁ、まだ疲れが抜けないな。そうだ。出発までに収穫してたブドウ、まだ食べられるんじゃないか?」

「お!」


 寒い場所ならと思って、受付カウンターの所に置いて来た果物たち。

 見に行くと、りんごもブドウもまだ大丈夫そうだった。


 疲れた時は甘いモノに限る。


「ステータスの実って……ブドウに似ていたけど、甘いのかな? シアは食べたことあるか?」

「んー」


 ブドウを頬張りながらシアは首を振る。まぁ激レアアイテムだもんな。

 部屋に戻って、戦利品のステータスの実とブドウを見比べてみた。

 ブドウの方はマスカットなので黄緑色だが、ステータスの実の方は青紫色でブルーベリーに近いかもしれない。


「ステータス効果も付与できればなぁ。ブドウ一粒+1だとしても、塵も積もればなんとやら……やってみるか」

「んぐっ」

「シア、ブドウの粒を房から取って箱に入れてくれ」

「ぅえーっ」

「ブドウはまだあるだろう。ひと房ぐらいいいじゃないか」

「ぶぅーっ」


 渋々という感じで、房から粒をもぎ取っていく。それを箱に入れて貰いながら数を数えた。

 全部で85個も付いていた。

 

 ブドウの粒とステータスの実。

 蓋をすると嫌ぁな状況に。なんせブドウの粒が85個だ。脳内アナウンスもそれだけで85回になるんだろうな。


 で、それを無視して「付与する」と念じる。

 するとどうだよ。箱が光ったぞ!


「まさか本当に付与できるとは」

「おぉぉ!?」


 箱の中には黄緑色のマスカットカラーの、それでいてほんのり青紫色の光りを放つ粒が大量にあった。

 箱から粒を取り出すと、一つだけ青紫色の粒が。

 鑑定するとステータスの実だ。付与してもこいつは消えないのか。


 試しに箱を空にして、ブドウの実を数個とステータスの実を再投入して付与。

 箱が光ってから蓋を開けると、黄緑色に青紫の光りを放つ粒と、青紫色の粒とが入っていた。

 繰り返し付与出来るのか!


「たえるぅ?」


 堪える?

 いや、涎を垂らしながらだと「食べる」の方か。


「こんだけあるんだ。食べてみよう」

「おぉー!」

 

 元祖ステータスの実は大事に取っておくとして、黄緑色のシャインマスカットのほうをパクり。

 うん。味はブドウのままだ。


 ステータスは?



 ルークエイン・ローンバーグ

 人族  15歳  男


 筋力:25  肉体:40  敏捷:30

 器用:28  魔力:6


【才能】

 錬金BOX26


【祝福】

 付与1



 お……おおぉぉぉ!


「魔力が上がった!!」

「おぉぉぉ。シア、シアも。にくぅ、あがったぁ」

「そうか……肉じゃなくって、に・く・た・い、な」

「にくぅー!」


 まぁいいや。

 よぉし。じゃんっじゃん食うぞぉー!


 ────と思ったが、5粒食べたところで眩暈が。

 更に強烈な吐き気に見舞われリバース。

 シアも同じ状況で、結局、胃の中のモノ全部吐き戻してしまった。


 体調が戻ったのは翌日のこと。

 ステータスを確認すると、



 筋力:25  肉体:40  敏捷:30

 器用:28  魔力:5



 と、戻っていた。


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