『錬金BOX』で生産&付与無双! なんでも錬成できる箱で無人島開拓はじめます

夢・風魔

1章ー追放→無人島サバイバル

第1話

 産婦人科の前に、生後数日で捨てられていたのが俺だ。

 施設で育ち、高校を出て就職したのはブラック企業。

 残業残業また残業で、そのうえ全部サービス残業。

 二十三歳にして肉体的にも精神的にも疲れていた俺は、駅のホームで人に軽くぶつかられただけで──


 線路に転落して死んでしまった。

 死んでしまったはずなんだけど……何故か目覚めた。


「おめでとうございます、ローンバーグ侯爵様。ご子息は『才能』をお持ちのようでございますっ」

「才能だと!? ほ、本当か? 一万人にひとり、授かれるかどうかの『才能』を……それで、どんな能力だ司祭よ」


 才能?

 侯爵?


 いったいなんのこと──はっ、まさかこれは!?

 異世界転生ってやつですかあぁぁぁぁっ!?


 しかもこの流れだと俺、貴族の家に生まれてるだろ。

 貴族ってこれはもう勝ち組じゃありませんか!


「ではさっそくご子息の『才能』を見てみましょう」

「よろしく頼むぞ司祭よ」


 俺の腕が持ち上げられ、そして水晶球のような物に触れさせられる。

 水晶が光り、それから表面に文字みたいなものが浮かんだ。


 読めない──いや、後半部分だけ読めた。


【〇〇BOX】


 BOX?

 箱がどうしたんだろうか。


「こ、侯爵様……これを」

「錬金……錬金、なんと読むのだこの文字は」

「よ、良くは分かりませんが、錬金術で間違いないかと」

「なっ!?


 錬金術?

 侯爵が一瞬言葉を詰まらせたが、俺が読めない部分が錬金術ってことなんだろうか?


 錬金術って言えば、ラノベでも賢者と同格ぐらい有名は人気ワードじゃん。

 やったね!

 これはもう、勝ち組決定でしょ!






 三歳の頃から乳母にお願いして錬金術の本を、屋敷の書庫から運んで来て貰った。

 早くから錬金術を学びたかったから。


「でも坊ちゃま、字は読めるのですか?」

「うん。ばあやが絵本を読んでくれるでしょ? それで覚えたの」


 三歳児らしく可愛く言ってみる。


 今俺が暮らしているのは、ローンバーグ家の屋敷──ではなく、そこで働く使用人たちが暮らす寮のような所だ。

 母は産後の肥立ちが悪く、俺を産んで一カ月後に亡くなった。

 それと同時に俺は屋敷を追い出され、乳母の下で暮らしている。


 父であるローンバーグ侯爵は一度も会いに来ない。

 何故だろう。

 だって俺、一万人にひとりの『才能』持ちなんだぜ。


 なんて思っていた俺の三年間よサヨナラ。

 乳母の持って来た錬金術の本を読んで愕然とする。

 

 錬金術とは──小中学生の理科の実験、もしくは料理のレシピだ。


 銅を燃やすと、炎の色が緑色になる。

 香草A・B・B・Dを炒めてペースト状にして……カレーが完成。


 もちろんポーション作りも出来るが、煮込んで濃縮してと地味な工程でしか作れない。


「れ、錬金術って、魔法みたいにぱーっとものを作ったり、合成したり、キメラ作ったり、ホムンクルス作ったりとか出来ないの!?」

「え、キメ、え?」

「モンスター同士の合成とかだよっ」

「まぁ、そんな恐ろしい。錬金術というのはですね、大昔はとても重宝された、薬の製薬方法や石の錬成方法を発見する技術のことなんですよ」


 そう。錬金術って、ゲームでいうところのレシピを発見する技術の事だった。

 しかもいろんな分野のレシピを研究して発見する。

 発見したレシピは、専門技術を身に着けた者がそれを作って……錬金術師たちは作らない。ひたすらレシピを発見するだけ。


 だから──


「新しいお薬や製造技術が作れなくなったら、錬金術は必要とされなくなったのですよ」

「そ、そうだったんだ……だからあの時父上は……」


 思えばあの時、父である侯爵はものすっごい微妙な顔をしていた気がする。

 誰も必要としないゴミ『才能』を授かったと、侯爵と司祭は思ったのだろうな。

 母だけは優しく微笑んでくれていた。それだけはハッキリと覚えている。


 きっと知っていたのかもしれない。


 俺の本当の『才能』を。


 俺の『才能』は──

 この世界の者では読めない、何故か英語交じりの『錬金BOX』のことを。




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書籍発売に合わせて新作の投稿を始めました。

https://kakuyomu.jp/works/16816452220563275175

勇者パーティーの最強バッファー。反転の呪いを受けてデバッファーになったので辺境でスローライフを送る?


転生転移ではなく、異世界現地主人公物です。

相変わらず・・・主人公はアレな・・・うん・・・カッコいい主人公とか・・

無理だよね(´・ω・`)

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