第6話


「メテオ・レイン!」


 私は完成した隕石魔法を発動させました。

 これでも、隕石系魔法では弱い方ですね。

 本気出しちゃうと、二次災害含めて惑星ごと破壊しちゃいますから威力の調整は大事になります。

 もしも、本気の隕石魔法を使えるのって宇宙空間限定じゃないですか?

 え? まるで星を破壊した事ある様ですって?

 にゃは? にゃはは? にゃははは☆

 ナンノコトデショウカー?


 ドゴオオオオオン!!!!


 何て下らない事を考えている内に、プチメテオの時より派手な音が周囲に響き渡りました。

 私は、皆が見つけやすい場所に移動し、地面にペタッと座り込んで砦の方をブンブンと指差します。

 ここで、少しだけ瞳を潤ませるのもポイントですね♪


「どうした!」

「まだ起きる時間じゃないでござる……」

「ななみさん!」


 メテオレインによって生じた轟音に驚いたみんなが飛び起き、私の元へと駆け付けて来ました。


「ま、ま、まおーが砦に向かっていんせきまほーを撃ちました!」


 私は、恐怖に震える仔猫の様にぶるぶると震えながら言いました。


「なに!!」


 ダルシンさんが驚いて砦の方を注視しました。


「味方ごと……?」


 勇者サマが呆然と立ち尽くしています。

 

「わわわ、私達を狙ったら砦に当たっちゃったんじゃないですか!?」


 ななみちゃんは、錯乱したフリをして名推理をします。


「何があったでござろう?」


 昨日までは砦があった場所には巨大なクレーターが出来ていました。

 砦の周りを守って居た魔物達は1体も見当たりません。


「結界石の中に居なければ俺達も……」


 ダルシンさんが呟きました。

 私の方からも結界魔法を掛けてありましたが、どちらも無かった場合は恐らく隕石が着弾した時の衝撃波か何かしらで無事でなかったでしょう。


「……急ごう、また隕石を落とされたら」

「そうでござる」

「……そうだな」

「ははははいです~!?」


 私達は、砦跡地に向けてゆっくりと進軍しました。

 勇者サマ達は、もしかしたら生き残っている魔物がいるかもしれないと、辺りを警戒しつつ進みます。

 勿論、生き残っている魔物は居ないでしょう。


「物騒でござる……」


 砦跡地には、昨日までいた魔物達の亡骸が沢山ありました。

 どれも巨大ですが、動く気配は全くありません。

 動かなければ自分の命に対する恐怖感は無くなりますが、別の意味の精神的な恐怖感は生まれるのではないでしょうか?

 私ですか? 可憐で可愛いななみちゃんはもう、恐怖で足が震えて仕方ないですよぉ?


「良い気分はしない」

「そうだね……」

 勇者サマが複雑な表情で返事をしました。

 今横たわっている魔物達がどれだけの人間の命を奪ったのかも分かりませんし、自分達の命を脅かす存在である事は間違いなかったのですが、命を失ってしまった事自体に思い悩んでる感じがします。

 はにゃ~! 勇者様! 優しいですね☆

 私は、勇者様の腕を軽く引っ張りながらおどおどした様子で先を進みました。

 砦跡地を抜け、更に歩き続けました。

 段々と森が開け平地が見えてくるのですが、


「如何にも、でござる……」


 周囲はどす黒い空気に包まれています。

 私がこの異世界に降り立った時見せていた青空は無く、漆黒の闇がただただ広がっているだけです。

 恐らく、遠くから探知させないように何かしらの結界が張ってあるのでしょう。

 地上から侵攻……いや、勇者様が何か特殊な道具を持っているのかもしれません。

 どちらにせよ、この程度の結界であれば私の力で簡単に突破出来ますから細かい事は気にしなくても良いでしょう。


「あれか……」


 更に進んだ所で魔王城が姿を現しました。

 周囲に魔物の姿は見受けられません。

 結界を展開していた事を含め、先の砦に全戦力を投入していたと考えられなくもありませんが、用心すれば大丈夫でしょう。

 

「行こう」

「おう」

「覚悟は決まったでござる」

「はい! 勇者様!」


 一瞬でも気を抜けばその精神を奪い取られてしまいそうなほど禍々しい空気を纏った、魔王の居城を目の前にした勇者様達は覚悟を決めその中へと向かって行きました。

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