Springtime Of Life
比企谷こうたろう
第1話
高校入学式当日。
俺は母親と二人で電車に揺られながら高校に向かっていた。西船橋方面の東西線は通勤時間帯でもあまり混んでなく、中野方面は大変混雑していて暖かくなってきている春の時期に、おしくらまんじゅう状態で車内はとても暑そうだった。
電車から降りたら駅から高校まで大体十分くらい歩く。細い道ながらも車通りが多く、小中高学生が通る道としては危ない。が、小学生の保護者だろうか、黄色の旗に横断中と記されているそれを手に持って横断歩道に立ち学生達を見守っている。そのため安全はいくらか確保されるだろう。
高校に着くと昇降口にクラス表が貼られていて友達と来た人たちは共に一喜一憂し騒いでいたが、大半はひとりで来ている感じだ。
俺もクラス表を確認した後、母親がクラス表を記念に一枚撮った後別れ、割り振られたクラスへと向かう。
教室の黒板側のドア前ではキリッとしていてとても厳しそうな先生が立っていた。
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶を何とか返せた後、教室の中へと入る。
するととても静かな空間だった。静謐とはこの事を言うのだろうなと思いつつ黒板側のドアに貼ってあった座席表通りに座る。
俺は出席番号二番なので一番窓側の前から二番目。取り敢えず暇なのでぐるりと教室内を見渡すと、基本ひとりで来たのか皆スマホを弄って時間を潰していた。なかには同じ学校で同じクラスの人と来たのか仲良さそうに話していた。
俺は誰ひとり知らないのでスマホを弄って時間を潰す。しかし高校はいいよね。スマホ持ち込みOKだなんて。中学と違って校則が比較的弛いから気が楽。因みに漫画もOK。
ポチポチスマホを弄っていたらチャイムが鳴り、先程黒板側のドアの前で立っていた先生が入ってきた。恐らく担任。
その俺達のクラス担任であろう先生から朝の挨拶代わりのお言葉を頂く。
「今日から一年間このクラスを任された川田だ、よろしく。さて今日の予定だが八時四十分に体育館へ移動、準備でき次第入学式、終わったら教室に戻り明日の予定を伝えた後解散だ」
そう告げられた後時間までに各自移動だとのこと。皆めいめいに立ち上がり移動し始めたので俺もそれに続く。
体育館に着いたらパイプ椅子がクラス毎(A~H組)横一列ずつに並べられており、ステージを正面に右から出席番号一番から順に座っていく。入学式の参加者は俺達新入生のみ。在校生は参加せず、新入生以外で言うと保護者と先生方、そして来賓の方々。
入学式は式次第に沿って滞りなく終わり、教室に戻り川田先生から明日の予定を伝えられ順次解散となった。
まだ初日で知らない人同士のためかすぐ帰る人が多く、なかには教室に残ってお喋りに興じている人たちもいるがそれは少数派。俺は椅子から立ち上がり家路に就く───。
石嶺宅
家に着いた俺は三階にある自室に戻りベッドへダイブ。
今日の疲れがどっと出てきた(と言っても午前中だけなのだが)ので、昼飯を食べた後風呂に入りすぐさま寝た。
起きた時はもう夜十九時を回ったところ。今日は早い時間に風呂に入ったのであとやることがあると言えば洗濯物を畳むくらい。
ベッドから降り、自室から出て二階にあるリビングへと向かう。途中愛犬のひかりが俺が起きたのがわかったのか、元気よく駆けてきて階段から滑り落ちそうになった。
二階に降りると既に母は晩ごはんの準備をしており、野菜をトントンと切る音がリビングに小気味好く響いている。
洗濯物を畳み終わり、あっちへふらふらこっちへふらふらと服を仕舞っていると愛犬のひかり(柴犬、三才)が「構って!」とキラキラとした瞳で俺を見てきたので撫で回したり、ブラッシングをしたりと一頻り遊んでやっていると、ご飯ができたので頂く。因みにメニューはカレーでした。
翌日
五時半に設定した目覚まし時計で目を覚まし、自室から出て二階にいって顔を洗い、歯を磨く。それが終わったら洗濯物を洗濯機にぶち込んでまわし、干す。これが俺の朝のルーティンである。因みに犬の散歩は、出るのが遅い父が担当。
ルーティンが終わる頃には朝ごはんも良いタイミングで出来上がる。
食べ終わり食器を食洗機に入れ、制服に着替えて余裕を持って家に出る。
昨日は電車で登校したが、雨が降らない限りでは基本自転車通学である。
家から学校までは近いとも言えないが、かと言って遠い訳でもなく、高校生としては程よい距離にある。
所要時間は電車通学も自転車通学も変わらず三十五分程度。途中橋があり緩やかな坂で長く辛いが、良い運動になるとポジティブに捉えている。橋を越えるとすぐ学校なのだが車通りが多く、特にトラックが多いので注意しなければならない。
学校着く頃には程よい疲労が俺の身体を満たし、暖かい春の季節だと少し汗を掻いてしまう。
教室を着くなりドアを開けると女子がすでにコミュニケーションをとっており、昨日とは大違い。それに対し男子は昨日とあまり変わらず大人しいが、女子ほどじゃないにしてもコミュニケーションをとっている人もおり、少し賑やかになっていた。
その光景に戦いてしまったが、気持ちを切り替え教室に入り席に着く。
今日も特に誰とも話す気はないのでスマホを弄って時間を潰す。
HRの時間になりスマホを仕舞い、今日の予定が伝えられる。
「今日は一時限目に自己紹介、二時限目にクラスの役割を決めて解散だ、以上」
そう締め括られHRが終わり十分間の休憩にはいる。
自己紹介は正直嫌だが逃げられるはずもないので己に渇を入れ、どう自己紹介しようか悩んでいるとふとこんな話が耳に入ってきた。
「ねえ、部活どうする?」
「私はやらないかな~」
「だよね~、私も」
という話が耳に入ってきた。部活かあ。それも考えないとなあ。と考えることがさらに増えてしまった。 どの部活に入るかも考えなければならない。
んーんー唸って考えていると一時限目開始のチャイムが鳴り響く。
川田先生が入って来て教壇の上に立ち、教室内をぐるっと見渡す。
「それでは自己紹介やっていこうか。順番は出席番号一番から教壇の上に立ち、名前・出身中学校・趣味・入りたい部活を言え」
そう言われた後、出席番号一番の人が教壇の上に立ち自己紹介をする。
「えー、名前は雨野達也です。出身中学校は南行徳中学校です。趣味はゲームで、入りたい部活は特にないです。よろしくお願いします」
最後に小さくお辞儀して温かい拍手が送られた。
そして俺の番。
「えー、名前は石嶺雄大です。出身中学校は堀江中学校です。趣味はアニメ鑑賞や読書などです。入りたい部活は特に決めてないです。えーっと、一年間よろしくお願いします」
俺も一番の雨野に倣い小さくお辞儀をして教壇から降り自席へと戻った。き、緊張したあ。
俺の後ろ、三番以降からも特に問題なくスムーズに終わった。俺達の自己紹介が終わった後は川田先生の自己紹介と今週の予定をざっくりと伝えられ一時限目が終了。疲れたので疲れた時には糖分補給、MAXコーヒーである。しかしこの学校には置いてなかった・・・。うそでしょん・・・。
二時限目はクラスの役割分担決め。要は学級委員長やら、ついでに委員会に誰が務めるかを決めるやつ。俺は特にやりたいもの、入りたいものはないので余っているやつにする。まず最初はこのクラスの長である、学級委員長を決める。
進行役は今の時点でいないので川田先生が進行してくれており、学級委員長が決まればその人がすることになる。
「やりたい奴いるかー?」
すると一人の女子が手を挙げた。大抵こういう場合だと、皆面倒臭がり手を挙げず、押し付け合いの雰囲気となる。そのため最初から役職が決まらず、日を改めてやるものの全然決まらないと言った負の連鎖が続き、挙げ句の果てにはクラスが最悪になったりする場合がある。ソースは俺。が、今回はその心配がなさそうだ。
「他には・・・いなさそうだから前に出て名前を。良かったら皆拍手な」
そう言うと川田先生は端に寄り、挙手した女子が前に出てきて回れ右をし、緊張しているのかスカートをキュッと握りしめ、少しモジモジとした態度で話し始めた。か、かわいい・・・。
「え、えと、名前は氷室絢です・・・。こういう仕事をした事がないので、挑戦しようと思って・・・。それで、あの、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします・・・」
消え入りそうな声でもそこからは彼女の決意が垣間見え、皆にもそれが伝わったらしく温かな拍手が送られた。
この子が学級委員長ならこのクラスは安泰かな。かわいいし。
学級委員長が決まって進行役が川田先生から氷室さんに代わり次の役職、副学級委員長を決めるべく進める。そこからは滞りなく進み、クラスの役職が決まった後今度は委員会決めに移ったが、これも特に問題なく決める事が出来た。因みに俺はクラスの役職に就き、庶務係とやらにした。
庶務係の仕事は配布物を配ることくらいなのでそれに手を挙げた。仕事が楽そうと思ったのか人数がそこそこいた為、じゃんけん勝ち残りとなってどうにか勝ち残れた(庶務係の人数は二人)。
ちょうど時間らしく最後に川田先生から明日の予定を伝えられて解散となった。
そして部活は今日からあるらしく、すでに入部している人達は各活動場所へと向かった。
俺は特に入部したい部活はないので、見学もせず駐輪場へと足を向けた。廊下を歩いてる途中、まだ入部したい部活を決めていないのか友達と何処かの部活を一緒に見学しようなどの話が聞こえてきて賑やかである。
昇降口に着き、上履きから靴に履き替え外に出て校庭の方に目を向けると、サッカー部とソフトボール部がお互い邪魔にならない範囲でグラウンドで活動していた。その中には先輩が新入生にどういう流れで練習するのかを説明していた。
駐輪場では俺みたいに部活に入部しない生徒も沢山おり、すぐに帰る人がいてごった返していた。この状況は正直人混みが好きじゃない俺からしてみれば地獄で、駐輪場から出るにも一苦労だった。
家に着いて自室に戻るとひかりが窓際にある俺のベッドでスヤスヤと気持ち良さそうに昼寝をしていた。
「ただいま、ひかり」
優しく頭から尻尾の付け根辺りを撫でながらそう言うと耳がピクリと動いたが起きる気配は無さそうだった。本当に気持ち良さそうだな。
因みに犬と猫、それからインコ達も人間同様夢をみる事があるそうだ。だからひかりも何か夢みてるのかもと想像しつつ起こさないようにソーッと部屋から出た。
今日も母は居ず俺ひとりだ。両親は共働きでいつもこうして家を空けており、早帰りの時弁当はいらないので朝少し多めに作ってもらったもので昼食を摂る。中学一年の頃からこんな感じで大分なれたものだ。
昼食を摂った後は自室に戻り配信されている今期のアニメやら過去作品を観ていたら、観終わった時には十七時前だった。
「さて、風呂に入りますか」
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