第18話 再び殺人事件
朝目覚めて、身支度を済ませ、いつも通りお嬢様モードをONにして、一階のホールへ降りると、何故か敬礼の姿勢で固まってる曹長さんと、それを値踏みする様に睨みつけてるお母様が居る。
何をしているのかしら?
「あなたが、小町ちゃんのボディーガードなのですよね」
「ハッ、そうで有ります!」
「だったら何で昨日小町ちゃんのピンチに、あなたは居なかったのかしら?」
「ハッ、申し訳ございません、以後この様な事の無い様、気を付ける所存であります!」
「ホントかしら、もし小町ちゃんに何か有ったら許しませんからね!」
「ハッ、この身に変えまして!」
お母様が曹長さんを虐めてる様ね。
本当なら、お父様が間に入ってなだめるところですけれど、今日は朝からお仕事だと言ってましたから、もうお出かけに成ったのね。
曹長さんも災難だわね。
因みに、爺はお母様の後ろで、なんだか楽しそうに見てるし、道彦は曹長さんの横で、啓礼の真似をしてるわ。
「お母様、お早う御座います。ミッチーも、お早う」
みっちーを抱き上げ、ほっぺにスリスリ。
「お早う小町ちゃん」
「お早うございます、お姉さま」
「曹長さんもお早う御座います」
「ハッ、お早う御座います、特務少尉」
「お母様も、そのくらいにして差し上げたら如何です。昨日も話しましたけれど、曹長さんは悪く有りませんから」
「もう、小町ちゃんがそう言うなら、分かりましたわ、でも、次は許しませんからね!」
「ハッ!」
「そう言えば、何で曹長さんが、こんな朝早くに
「ハッ、昨夜の襲撃事件の様な事が無い様、特務少尉の送迎をする様にと、司令官閣下から御命令が有りましたので」
そういえば、昨日お母様が叔父様に電話なさるとか言ってましたけれど、それでなのね。
「それと昨夜、芝浦の倉庫街の方で、大使館の事件に関連すると
どういう事かしら?
とにかく、行ってみないと分かりませんわね。
「分かりましたわ」
でも、先ずは……。
「ですが、その前に……、爺お腹がすきましたわ、朝食の準備をお願いしますね」
「かしこまりました、お嬢様」
「曹長さんも、如何ですか?」
「いえ、小官は」
人を待たせて食事するとか、なんか苦手なのよね……。
「そうだわ、こうしましょう。上官命令です、朝食をご一緒する様に!」
「ハッ、特務少尉殿」
朝食を終え、屋敷を出ようとすると、お母様が呼び止める。
「お待ちに成って小町ちゃん」
「どうなさいましたの、お母様?」
「爺、小町ちゃんに付いて行って貰えるかしら。昨日の事が有るから心配なのよ」
その気持ちは分かるんだけど……良いのかしら?部外者を連れて行って。
爺も返事に迷っているわ。
確かに爺が居れば心強いんだけれど……。
まあ、良いわ、もし駄目だったら車で待機して貰うと云う事で。
「仕方有りませんわね、爺お願い出来るかしら」
「承知致しました、奥様、お嬢様」
屋敷の車止めに止めてある部隊の公用車の運転席に曹長さん、後部座席に私と爺が乗り込むと、車は出発した。
車は倉庫街に入っていく。
普段、あまりこういう所は来ないから、ちょっと新鮮な気分になるわ。
今見ると、現代の世界でも名前を聞く有名企業の看板とか、結構有るわね。
車が進んで行くと、細い路地に軍服の人達が集まっているのが見えてきた。
彼らの腕には腕章が巻かれている様だけれど、多分憲兵の腕章ね。
「特務少尉、着きました」
軍服の人達に交じって、見知った軍服の女性と、スーツ姿の男性が居る。
「お早う御座います、
「お早うございます、小町ちゃん」
「お早う、小町ちゃん、それと、曹長ご苦労様。あと……そちらの男性は?」
爺と初対面の
「蘆屋家執事の栗林と申します」
「お母様が昨日の事を心配して、付いて行く様にと仰ったの、多分邪魔には成ら無いと思いますわ」
「成るほど、そういう事なら仕方有りません、承知しました」
「今日は
「実は別件の調査で、この倉庫街に来たんだけど、たまたま遺体を見つけてしまってね。それがどうも、昨日中佐が説明した英国大使館の事件の被害者と、惨状が酷似している様な気がして、それで上村課長と小町ちゃんを呼んだのよ」
「別件の事件ですの?」
「ええ最近、資産家や政治家とか、そういう人達の身近な人とか、数多く行方不明になってる事件が有るの。どうも、怪しげな宗教団体か秘密結社みたいなのが、事件に絡んでるらしくて……まだ、良く判らないんだけど」
そう言えば、
「でも、どうしてこんな所へ?とても、資産家や政治家の皆さんが来る所とも、思えませんのですけれど……」
「それが、以前からこの辺りの労働者や浮浪者も、数多く行方不明になっていると云う話が有って、関係あるかは分からないんだけど、一応調査しとこうって成ったのよ」
成るほどね、取り合えず、大使館の事件とは今のところ関係ない様な気がするんだけれど……この先どう成るかは、未だ分からないわね。
「とにかく、いちど遺体の方を見てもらっても良いかしら?」
「ええ、宜しいですわ」
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