第98話●どうなっておりますの?
お祖父様のお店から出てアムネリアとリカルドの方を振り返ると、二人ともどこかぼんやりしたように見えます。
「ルーベンスが来たことと話の内容にも驚きましたけど、お祖父様に頼まれてしまったからには今日中に帰ることが出来るように出発しなくてはなりませんわ。
アムネリア、お屋敷の皆から頼まれているものがあるのでしょう?急いでお店を回りましょう。リカルド、申し訳ないですが荷物持ちをお願いいたします」
モチェスがあるカラネール王国は牧草地が多く国中で羊や牛がたくさん放牧されています。
その為カラネール王国産の肉と乳製品は有名で、パリオのお屋敷では商人に依頼をして燻製肉とチーズを定期的に運んでもらっています。
しかし商人が持ち込む商品の種類は似たものになることが多いので、お屋敷の誰かがモチェスを訪れた時は目新しいものがないか探して、見つけたら購入するようにしています。
そうすることで厨房が賑わい食事も目新しい料理が提供されるようになります。
つまり厨房担当が喜べばメニューが増え、結果お屋敷で食事を取る者全員が喜ぶことになるのです。
という訳で皆から頼まれた商品を買うお店とは別に、いくつか食材店を探しながらまだリカルドが行っていなかった地区を見て回りました。
お祖父様にはすぐに戻ると伝えていたものの、やはりあれこれ見て回ったので予想以上に時間がかかってしまいました。
「まぁいい。これから出発しても明日の朝一で出発してもそう大して変わらない。それにそれほど急ぐことでもないだろうて」
私に手紙をお渡しになったお祖父様はそのようにおっしゃると、今日はもうゆっくり休むようにと私達を宿屋へ返されました。
そして翌朝、買い込んだ品々とともに出発した私達は午後の遅い時間にはパリオに到着し、お屋敷の皆から大喜びされることになるのでした。
***
お父様はお祖父様のからの手紙を読まれるとアーマンドとお兄様をお呼びになり、私にはお母様のお手伝いを頼むと言われましたのでアムネリア達とともにお母様のお部屋へ向かいました。
「お帰りなさいロゼリアーナ。
「はい、以前と変わらずとてもお元気にしておられましたわ」
それからモチェスの町でしたあれやこれやをお話した後、ルーベンスのこととお祖父様こらお預かりした手紙のこと、それを読まれたお父様からお母様をお手伝いするように言われたことをお伝えしました。
「まぁまぁ、ロゼリアーナはちょうど良い時に戻って来てくれたことになったわね。
おそらく
お母様は私の話を聞かれても慌てることなくご自分の役割を考えて私達にも指示を出してくださいました。
アムネリアとリカルドは小さく返事をしております。
「わかりましたわ、お母様。お部屋の支度からでよろしいでしょうか?」
「そうね、それと義父様に付いて下さっていた方々への連絡も必要になるのだけれど……それはアーマンドに聞かないといけないわね。お部屋の支度については侍女長のローザンヌも呼びましょう」
「お母様、あの、何がどうなっておりますの?あちらにいた大蛇のつがいがこちらに戻るとどうなるのか私にはまったくわかっていないのですけれど」
お祖父様のお迎えの支度もローザンヌが来てからだと言われましたので、今のうちに疑問の解消をしてしまいたくて尋ねました。
「そうね、あなたは初めてですものね。前回からかなり間が開きましたけれど私も嫁いで来てからまだ2回目ですわ。
あのつがいはもともとうちの領土の北岳に縄張りを持っていたそうなの」
それからお母様が話してくださったのは初めて聞くお話でした。
パラネリア領の最北部ある北岳は『薄闇の森』の一画というより中心になっています。
その北岳には山裾の辺りにいる大型の生き物とは別に、滅多に見ることのない生き物が生息しているのですが、時折その北岳の縄張りから出てくるものがあるとか。
縄張りと言ってもただ行動範囲のことを言っているだけであって、縄張りに入って来た生き物と争いを起こすといったことはなく、「北岳の縄張り」とは「珍しい生き物が生息している地域」という意味だそうです。
その中でも大蛇のつがいは大人しく、人を襲うようなことは今までなかったものの北岳から下りてきてから頻繁に移動するため、万が一を考えてその縄張りを調査監視しているのだとか。
今回は隣国にまでその縄張りを移していたので、当時のモチェス領主だったリーダル様のお誘いを受けたお祖父様が、いろいろ都合が良いからとお誘いを受ける形でモチェスに滞在することにしたのだそうです。
しかし今までになく大蛇達の滞在(?)が長期になっていたので、経験者の高齢化などもあり調査準備に手間取るのではないかとお母様は言われました。
モチェス滞在22年は長いですけどお母様が2回目と言われましたので、もっと前から生きていると言われている大蛇達の寿命はとても長いのでしょう。
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