第21話●知る者と知らされる者①
「母さん、なんでいるんだ?」
マリー様のお
マリー様が心配されると申し訳ないので、執事のマーロット様にお願いして数日自宅へ帰らせていただきました。
「ホセルス、久しぶりに会った母にその言葉。あなたは気遣いが足りません。足首を捻挫してしまったから数日こちらに戻ることにしたのです」
「へぇ~。あぁ、マリー様が心配されるからか。母さんのことだからお邸のこと、気になるだろうけど早く治す方が先だから無理しないようにな」
「ありがとう。ところでホセルスはいつもこんなに帰りが遅いの?
もしかして良い人でも見つけたの!?」
そろそろ孫が欲しいわ。
「違うわっ!……ったく。
本当は内密なんだけど……王妃様が城から下がられたらしい」
「は?」
「今日の昼過ぎの時点では城を下がられたことしかわからなかったらしいんだけど、夕方にマリー様からエドワード様に届いた手紙に、王妃様との会話の内容が書いてあったみたいなんだ。
帰りがけにエドワード様に捕まってお相手してたから今日は遅くなったんだよ。
肝心なリカルドの奴からは連絡がないし!」
「王妃様が今日の午後にお邸を訪問される話は聞いてたわよ。私がいない時に限って何か大事な話があったのね。でもマリー様が動かれたのなら大丈夫でしょう」
「母さんのマリー様万能説は健在だな。マリー様の方は大丈夫かもしれないけど、こっちはどうかなぁ。
王妃様の行方がわかったことで少しは落ち着いたんだろうけど、なんかエドワード様らしくないように見えたんだ。
前は何でも話してくれてたのにさ」
大きな図体の息子が口を尖らせて拗ねても可愛くないわね。早くお嫁さん来ないかしら。
※※※ ※※※ ※※※
マリーテレサ様が開かれたお茶会の片付けを終えた私は、それとは別の細々した仕事も片付け、お邸の執事マーロット様の部屋へ挨拶に行きました。
「急なお願いでしたのに貴女に来ていただけて大変助かりました。侯爵様のお屋敷にも改めてお礼をさせていただきますので、そのようにお伝えください」
「お役に立てたのでしたら嬉しいです。また何かありましたらお声がけください。あちらの都合にもよりますが、また伺わせていただきますので」
「ありがとうございます。リリアーナも明日から仕事に戻ると連絡がありましたので安心していたところです。階段で足を捻るなんて彼女らしくないことでしたよ」
「そうなんですか?でも、治りが早くて何よりでしたね。では私はこれで失礼いたします」
マーロット様の部屋から出た私は3日間お世話になった方々に挨拶を済ませ、城下の宿へ移りました。
そこで本来の主人宛に手紙を書きました。
一つ、マリーテレサ様にお付きの侍女の代わりにお邸に三日間勤めたこと。
一つ、二日前に王妃様が訪れられ、お城を下がられたと話をされたこと。
一つ、今日のお茶会でテレーズ様が私の顔を覚えられたかもしれないことと、招待された 奥様方のお名前。
一つ、マリーテレサ様は前国王陛下の療養について信じてお疑いのご様子のこと
送り先は王都から離れた保養地ですが、急ぎで出せば明日中には届くでしょう。
※※※ ※※※ ※※※
報告書
親衛隊隊長 ホセルス・ナーロ殿
現在、私リカルド・ドメトロスはロゼリアーナ様の護衛を継続中です。
これまでの経過を報告します。
ロゼリアーナ様が陛下から受け取られ署名された『離婚申請書』を教会事務局に提出し、『離婚申請受理証明書』を受け取りました。
疑問①あの書類は陛下の本当のお気持ちだったのでしょうか。しかも急ぎとまで言われて信じられませんでした。
ロゼリアーナ様が目立ちたくないと希望されましたので、荷物をかたづけられた後、侍女のアムネリアと三人で城の通用門から出て宿屋に入りました。
翌日、装飾品店と喫茶店を訪問。
疑問②ロゼリアーナ様、アムネリアとは離れた席で護衛をしつつケーキセットをいただきました。相席ではありませんでしたが許されるでしょうか。
その翌日、前王妃様と面談後、喫茶店再訪。
疑問③ロゼリアーナ様はチョコレートブラウニーを召し上がられましたが夕食代わりになるのでしょうか。また、前日と同じ席にて私とアムネリアもケーキセットをいただきましたがこれも許されるでしょうか。
さらにその翌日、ロゼリアーナ様お疲れの為休養日
疑問④ロゼリアーナ様からアムネリアと私の話を聞かれたので話しました。一日中お部屋から出られなかったのですが、お話し相手をして過ごすのは護衛といえるのでしょうか。
昨日、ロゼリアーナ様のご実家への土産と三人分の衣装を購入
疑問⑤ロゼリアーナ様がアムネリアと私の衣装を選んでくださいました。
一旦は遠慮させていただいたのですが、今回だけでも楽しみたいと言われてしまいました。ロゼリアーナ様のご希望ですので許されますよね。
『見てはいなかったこと』は報告できませんから私の進退に影響はありませんよね。
今日は朝食の後、ロゼリアーナ様のご辺境伯領へ出発します。
また報告します。
以上。
リカルド・ドメトロス
「……リカルド。報告が遅い、遅すぎるだろうが!そもそも報告書になってないじゃないか!俺はこんな手紙でもエドワード様に見せなければならないんだぞ!」
そう叫ぶ親衛隊隊長ホセルス・ナーロに、報告書と書かれた手紙が届いたのは、ロゼリアーナ達三人が朝食後に宿屋を引き払った日の午後でした。
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