ネタ帳 ~書き殴り黒歴史ノート~

田戸崎 エミリオ

001:異世界冒険部

【タイトル】

異世界冒険部


【ジャンル】

異世界ファンタジー、異世界転移、バトル、冒険


【概要】

異世界転移に巻き込まれた高校生たちの冒険物語。

部室にあった異世界の宝石『星想石』の力で、異世界へ飛ばされた5人の高校生。

元の世界へ帰るためには、様々な世界に散らばった『星想石』の欠片を探しだし、元に戻さなくてはならないという。

ファンタジー、世紀末、SF、様々な世界を渡り歩く冒険部が発足した。

(現在連載中の「娯楽は異世界を救う?」の前に書いていたもので、主要人物が似ています)



【1話試作品】

その1:口は災いの元

記録者:石川 瞬助


口は災いの元とは言うが、この日の俺はそれを思い知ることになった。

何気ない一言がとんでもないことを招く…

俺の想像を遥かに超える出来事は、本当に突然に起こったのだった。



高校生活も2年次の6月が半分ほど過ぎたある日。

放課後、図書部の部室。

部室棟2階の一番端にある小さな部屋で、俺は仲間たちが集まるのを待っていた。

時間は夕方の5時半を回り、見回りの先生が下校を促すべく学校内をうろつき始める時間だ。


「ふぅ、あんま面白いとこはなかったかな」

外はあいにくの雨。

掛け持ちしている陸上部の活動が中止になってしまい、放課後の時間を持て余していた俺は真っ直ぐにこの図書部の部室へ向かった。

図書部に所属している5人はみんなそれぞれが部活を掛け持ちしている。

そのため、図書部としては大きな活動はしておらず、それぞれが部活を終えてから帰る前に立ち寄って、仲間内で駄弁るための場と化している。

特に俺は運動部で放課後は遅くまでがっつり活動してることが多いので、大体は最後にこの部屋に来る。

なので、最初にこの部屋に来るというのは少し新鮮だった。

だが、一人で部屋にいるというのはどうにもしっくり来ない。

とりあえずは本棚に置いてあったライトノベル(卒業した先輩方が寄贈したものらしい)を読みながら時間を潰していたが、結局途中で飽きてしまった。

やはり俺は、本を読むよりは身体を動かしている方が性に合ってるらしい。ま、時間は潰せたけどな。

「あー、なんか面白いことねーかなー…」

うろうろと狭い部室の中を歩いてみたところで、めぼしいものなんて机と本棚くらいしかない。

本棚には様々な本が収まっており、棚の上には段ボール箱。

何やら雑多にものが突っ込まれてるらしく、何かが箱から飛び出ている。あれ、人形か?


「おや、今日はシュンが一番乗りですか。珍しいこともあるものですね」

「おっす、リオ。今日は陸上部中止だったからよ」

そうこうするうちに、仲間の一人が部室にやってきた。

眼鏡を掛けた細身の男子、田土崎 理緒だ。

丁寧な喋りをしちゃいるが、いつも一言多い。

「お前は、今日は漫研か? いつもはここで作業してるだろ」

「はは、たまにはがっつり絵が描きたくなるもので。

落書きやアイディア集めならこちらの方がいいですけどね、やはり実作業は環境が整っている方でないと」

図書部の隣にある漫画研究部の部室で、今日はずっとイラストでも描いていたのだろうか。

漫画家志望だというこいつはいわゆるオタクってヤツで、最近のアニメとかゲームとかにも詳しい。

といっても本人曰く、広く浅く楽しむニワカ、らしいが。

「シュンもたまには本でも読んで脳を活性化させたらどうです?

 この間の中間試験も赤点ギリギリだったではないですか」

「赤点ギリギリはてめぇもだろ……それに、本ならさっきまで読んでた」

「…読み切りました?」

「いや、飽きた」

「でしょうね」

気安い言い合い。なんだかんだで中学から付き合いだ。

多少の嫌味で動じるような間柄じゃない。

「それでは、何も面白いことがなくて暇だーとか言ってたところじゃないですか?」

「まさにその通りだよ。で、ちょっと気になってたんだが」

俺は本棚の上にある段ボール箱を指さす。

「お前、あの箱の中に何が入ってるか知ってるか? 今まであんま気にしたことなかったんだが」

「あぁ、卒業した先輩方が置いてった私物が突っ込んであるだけみたいですよ。

ちなみにちょっと見えてる人形は、茨城県水戸市のゆるキャラ『みとちゃん』の人形です」

「あの頭はわら納豆か…」

水戸と言えば納豆ってのは、やっぱり短絡的なんじゃないだろうか。

「分かりやすいのは大事だと思いますよ」

なぜか考えがバレた。


「お疲れー」

「ん…」

「おっす、サヨもアイもお疲れー」

続けて2人の女子がやってきた。

「何の話してたの?」

「いや、あの上の段ボールに何が入ってんだろうなーって話」

「あー、あれかー。地味に気にはなってたんだ。前から置いてあったみたいだし」

話題に乗っかってきたショートヘアーの女子は、化学部に所属している烏間 小夜。

高校に入ってから出来た友人の一人で、なんだかんだで俺たちとつるむことが多い女子だ。

ボーイッシュな外見で、いつだったか学ランのコスプレしたときは異常に似合ってた。

「…みとちゃん、こっち見てる」

「あー、やっぱりそう見えますよねー。こう、こっそりと我々のことを覗いているのかもしれませんよ~」

「ちょっ、妙なこと言わないでよっ!?」

もう一人の女子がボソッとつぶやき、それに乗じたリオがニヤニヤしながら言い、サヨはびくっと身体を震わせる。

サヨは外見とは裏腹に、可愛いものが好きだったり怖いものが大の苦手だったりと、女の子らしいといえばらしいところがある。

おかげでもっぱら、仲間内ではいじられ役になってることが多い。

「82、57、79…」

「ボソッとあたしのスリーサイズを言うなぁっ!」

「うぐっ!」

いきなりの暴露を行ったもう一人の女子の腹に、サヨのするどい手刀が入る。

「覗くってそういう意味かよ…」

「小夜さん、それは自爆ですよ。自分のスリーサイズを肯定してるようなものです」

「あ…」

「ふふ……油断大敵」

なぜか勝ち誇るもう一人。

さっきからボソッとつぶやくように喋っているのが片桐 愛。

所属はゲーム部。ゲームと言ってもトランプとか将棋とか、いわゆるアナログゲームを研究してる部活だ。

彼女もオタク寄りな人物なので、よくリオのヤツと今期のアニメはどうだとかで話をしてるらしい。

「ちなみに、片桐さんは73、54、78でしたっけ」

「リオ、なんでお前が知ってるんだよ…」

「ちょっ、乙女の数字はデリケートなんだよっ!?」

「別に構わない」

リオの暴露にすかさず牙を向く小夜だが、アイは一向に気にしてない。

アイは小柄な体格とサイドテールの髪型もあって、よく歳下に間違えられてるのだが、むしろそれを楽しむようなところがある。

普通、女の子ってもっとセクシーな感じになりたいと思うものなんじゃないのか?

「貧乳はステータス」

なぜか勝ち誇るようにVサイン。

「シュンは考えが顔に出て分かりやすいですね~」

「ババ抜きでシュンに負けたことない」

そういやババ抜きでみんなに勝ったことないな…


「にゃはー☆ あれ、ウチで最後?」

『出たな、95…』

「やめぃ!」

「おぅっ…」「ふぐっ…」

最後のメンバーである女子がやってきた。

ノリでスリーサイズを言おうとしたリオとアイの腹をサヨの手刀が襲う。

「よう、ナナ。生物部は終わりか?」

「まーねっ! みんなお待たせー!」

部室へと入ってきたひと際元気のいい女子が、我々図書部の最後のメンバー、猫衣 奈々だ。

明るく人懐っこい性格で、その名の通り猫っぽい言動が目立つ。

そしてリオとアイが少し口走ってたが、モデルと思わせるほどスタイルがいいのである。

ポニーテールにした髪もそうだが、とにかくよく"揺れる"ために人の視線を集める。身長も高いのでなおさら目立つ。

そんな彼女は獣医志望で生物部所属。

さっきまで生物実習室で飼っているイグアナの世話をしてきたのだろう。

引っかかれた爪痕らしき傷が微妙に手に残っている。

「ねーねー、なんの話をしてたの?」

「あの段ボールに何が入ってるのかなって話。なんか気になってな」

「あー!確かに!先輩の私物だっけ?」

「あの『みとちゃん』人形がこっちを覗いてるみたいだって小夜さんがビビってまして」

「微妙に改変しないでよっ!」

わいわいと騒ぎになってきたが、話題になったことでみんなちょっと気にはなったみたいだ。

「よし、取ろう! シュン、足場!」

「お、おう」

即決したナナの一言で、思わずその場に四つん這いになる。

ナナはそのままためらうことなく俺の背にに乗っかり。

「おっけー、上げてー!」

俺は手足を伸ばして背中を上げる。人力リフトである。

ナナはそのまま俺の背の上に立ち、本棚の上に手を伸ばして段ボールを確保した。

「ほいゲット!」

段ボール箱を抱えたナナはさっさと俺の上から飛び降りる。うし、ゲットできたな。

「やー、相変わらず見事な連携プレイですけどね~」

「普通に椅子を台にすればいいのに…」

「完全に飼い主と奴隷だったね」

ぐはっ、しまった……またやってしまった。

ナナと俺は幼馴染で昔から一緒に行動してることが多かったのだが、ナナはいわゆるガキ大将ってやつでもあった。

おかげで子供の頃から何かと命令してきて、俺はその命令を聞くことが多かった。

幼い頃からの習慣ってのはなかなか抜けないようで、高校生になってもナナはこうして昔ながらの気安さで命令し、俺は俺で条件反射に命令を聞いてしまうのである。

女子に踏み台にされてるというのは結構な気恥ずかしさを伴うので、俺としてはお互い自重したいところなのだが。

「さーて、中身は何かなーっと」

ナナの方はまったく気にしてない。まぁこいつに羞恥心とかを期待するのも間違ってるか…

入学初日に「また一緒だねー!」って人前で思いっきり抱き着いてきたのには参ったものだ。

もちろん、彼女のスタイルがスタイルなので、周囲の反応がどうなったのかは言うまでもない。


とまぁそんな感じで以上、図書部の5人。

普通といえば普通だし、少し変わってるといえば変わってる高校生。

なんだかんだでつるんでばかりで、3月に先輩が卒業して廃部寸前だったこの部室を、ほぼ乗っ取りに近い形で活用して溜まり場にしている俺達。

そんな俺達が騒動に巻き込まれたのは偶然か必然か…


ダンボール箱を床に下ろし、みんなで中を覗いてみる。中は何やらいろんなものが詰め込まれていた。

「これは、腕時計か? にしては文字盤に何も書かれてないが」

「数字のない時計は見たことありますけど、なんというか、変な装飾ですねー」

「これはカードかなぁ? トランプみたいにケースに入ってるけど」

「タロット…? でも、見たことない絵柄」

「あ…ナイフっぽいものが」

「危ねえな、オイ」

「こっちはボールですか。野球ボールっぽいですが、柄が違いますね」

「にゃはっ、柔らかーい! ゴムボール…にしちゃ柔らかくない?」

「…なんで手錠があるのよ」

「逮捕しちゃうぞ?」

なんの脈絡もない、様々な道具たち。

どこかのお土産だろうか、いずれも見たこともない模様や装飾をしたものばかりであった。

そして、ひときわ目を引くのが、くだんのみとちゃん人形。

その人形は、宝箱を抱えていたのである。

ファンタジー系のRPGに出てくるような、上開きの感じの、まごうことなき宝箱。

なんでこんなもの抱えてんだ?

「わぉ、いかにもな宝箱」

「これ…何が入ってんだ?」

みとちゃん人形が抱えていた箱を開けてみる。

別にカギがかかったりしてたわけでもなく、パカッと音を立てて開いた。

中に入っていたのは…

「…宝石?」

「綺麗…」

宝石、なのだろうか。確かに綺麗な石が入っていた。

掌に収まるサイズの石が収められていた。

特にカットなどはされてないらしい、荒々しく削られたらしい透明な石の中に、うっすらと金色の光が見えている。

あんま宝石には詳しくないけど、ダイアモンド…ってわけではないんだろうな。

うっすら金色に光ってるし。

「ゲームとかに出るパワーストーンっぽい感じはしますけどね」

「ん…えふえふのクリスタルっぽい」

「いやー、でもさすがにただの綺麗な石でしょ? 本当に宝石とかだったら、こんな部室の荷物に紛れ込んでたりしないって」

サヨの言うことももっともだ。

たぶん、先輩方が見つけた綺麗な石をシャレで宝箱型のケースに入れてみただけなんだろう。

確かにちょっとワクワクはしたけど。

「にゃー、実は願いが叶う石とかだったりしてー?」

「はは、まさかな。

んー、けどまぁ、せっかくだし、なんか願ってみるか?」


この願いは、ほんのとっさに思いついたものだった。

さっきまで異世界召喚もののラノベ読んでたし。



ほんの軽い気持ちだった。

何の考えもなしに言った言葉だった。



「なんかこう、異世界に行ってみたいな」




その瞬間だった。

宝石が光りだしたのは。



「うおぉっ!? な、なんだ!?」

「まぶしっ、めっちゃ光ってる!?」

「なにっ、なにっ!?」

「見てください、あれ!」

「浮いてる…?」


困惑する俺たちの前で、猛烈に光る宝石が宙に浮きだしたのである。

ゆらりと箱から離れ、浮き上がってく謎の石。

そして…


ズオォォォォ!!!


空間に穴が開いた。

それ以外に表現しようがなかった。

石を中心にして、人ひとり分は通れそうな穴が開いたのである。

さらにその穴に向かって急な風が吹く…いや、穴が吸い込んでいる!?

まるでブラックホールのように部屋の中のものを吸い込み始めたのである。


「ああっ!?」

さっきまで俺たちが見ていた、ダンボール箱の中の道具達が次々と穴に吸い込まれていく。

俺たちは慌ててロッカーや机、本棚にそれぞれ掴まった。

凄まじい風が部屋中を吹き荒れ、穴からの吸い込みはさらに強くなってくる。


「わっ、わわっ!?」


俺の視界に入ってきたのは、サヨの手がロッカーから手が離れた瞬間だった。


「いやあああっ!?」


サヨの身体が宙に浮き、穴に向かって吸い込まれているのを見た俺。

無我夢中だった。

その瞬間に俺はもう、自分の手を机から離し、穴に向かって飛び出して手を伸ばしていた。


「サヨっ!!」


掴んだ! なんとかサヨの腕を掴んだ。

…が、俺はそれ以外何も掴んでないわけで。

足も既に床から離れてるわけで。


「シュン!? わわっ!?」

「お、おい!?」

「シュン、サヨ!?」


「うおおおあああ!!!?」

「きゃああああああ!!」



俺とサヨは、穴に吸い込まれていった。






そこから先はよく覚えていない。

ただ、なんとかしてサヨを引き寄せて離すまいとしたことだけ覚えてる。

そのあと、どっかで意識を失ったのだろう。



「ん……」


目が覚めた時、最初に感じたのは地面の感触。

人工物の床では感じない、土の感触。

どうやら屋外で気絶してしまったらしい。


「ん…ここは…………サヨは!?」


慌てて辺りを見渡す。

サヨは俺の隣で寝ころんでおり、俺はしっかりとサヨの腕を握っていた。

どうやら離さずに済んだらしい。

ほっと一息ついたところで、改めて辺りを見回す。



「…どこだよ、ここ」


周囲一面、木・木・木。

緑の草が生い茂り、木々は大きく成長し、葉で覆われて辺りは薄暗い。

見知らぬ森の中に、俺たちは放り出されてしまっていたのだった。

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