相談室へようこそ
つるまきなのは
第1話 記憶喪失のカウンセラー
「んん........7時か........」
アラームが鳴り響く。俺は二度寝したい欲望を抑えながら、アラームを止め、起き上がる。
「今日は曇りか」
カーテンを開けると、空はなんとも言えない曇り空だった。一応傘を持って行こうか。そんなことを考えながら、キッチンへ向かう。
朝ごはんはトーストとスクランブルエッグ。
料理は好きなので、大体自分で作る。
「コーヒーは......げっ、無いのかよ......」
朝からちょっと萎える。帰りに買って帰るとしよう.........。と、今日の予定を決め、卵を割り、フライパンを用意。ついでにパンをトースターに入れてから作れば、いいタイミングで両方が出来上がる。
「よし、これで完成。」
作ったものを皿に置いて机に並べる。うん、我ながら上出来。さっそく食べよう。
「いただきます。」
スクランブルエッグを食べていると、俺はふと昨日のことを思い出した。
「三黒先生、どうやら、うちの学年でいじめがあるようで......生徒の子が先生と話をしたいと」
3年主任の大野は俺にそう伝えた。いじめね...
やはり中学、高校あたりは多いのだろうか。あんなもの、何の得も無いのに。
「分かりました。時間帯は?」
「放課後です。」
「了解しました。また何かあったら言ってください」
「お願いします。」
そう言って大野は席へ戻った。大野はいい奴だ。生徒の悩みを解決しようと必死になっている。今の教師は彼の姿勢を見習うべきだと思う。
「よし、そろそろ行くか。」
朝ごはんを食べ終え歯を磨き、着替えもしたので、あとは出るだけだ。時間は問題ないな。
歩いている時、自分の過去について考えていた。単刀直入に言うと、俺は記憶喪失だ。高校あたりからの記憶が一切ない。家族も、友人も、恋人も全て忘れてしまった。特に生活に支障は無いが、思い出せないとまあまあしんどいものだ。それなりに不便はある。などと考えていると、学校に着いた。
俺の勤める赤城中学校は、俺の家と近い。ゆえに、俺は徒歩で通っている。ちょうどいい散歩だ。正門をくぐり、校舎へ入っていく。
荷物を置くため、俺は相談室へ向かった。
そこで、角から出てきた少女とぶつかりそうになる。
「おっと....ごめんよ。怪我はない?」
「あっ.......い、いえ....大丈夫.......です....」
彼女は下を向いて小さな声でそう言うと、そそくさとその場を後にした。だが俺は、彼女の腕に包帯が巻かれていたことを見逃さなかった。
........................あいつか。
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