第354話 続・ショッピングバトル!(4)
「エメラルダの姉ちゃんが、ココにいるからみんなが死ぬんだよ!」
カルロスの後ろから男の声がした。
――なんだと! これが、エメラダ様のせいだというのか!
カルロスは、怒りを込めた目で背後をにらんだ。
そこには、さらに奥の洞窟につながる穴の前で、タカトが口に手を当て叫んでいた。
その穴は聖人国とは反対側の穴である。
すなわち、魔の国へとつながっている穴である。
「エメラルダの姉ちゃんが、こっちに来れば、アイツらだってこっちに追ってくるじゃないか!」
タカトが、さらに続けて叫んだ。
はっとするエメラルダ。
エメラルダは、その須恵の後、体をひるがえし、タカトの背後で口を広げる洞穴めがけて駆け出していた。
わき目もふらずにダッシュする。
背後で響く住人たちの悲鳴に逆らうかのように、目をつぶり、懸命に走る。
目からこぼれ落ちる涙の粒が線を引く。
――確かに、この暗殺者たちは、私を狙っている。
走るエメラルダは、自分に言い聞かせる。
ならば、私が魔の国へと逃げていけば、どうなるのか?
このままスラムの住人たちを殺し続けるだろうか?
確かにその可能性はあった。
だが、今、現在、スラムの住人たちを殺し続けている最中に、エメラルダが魔の国へと逃げていけば、暗殺者たちの狙いは外れるのである。
そう、住人たちを助けにカルロスから離れて近づいてくるという当初の思惑は大きく外れる訳だ。
実際に、エメラルダの性格を熟知していると思っていた暗殺者たちにとって、エメラルダのこの逃亡は想定外であった。
近づくどころか離れていくエメラルダをみた、ネコミミのオッサンの動きが、一瞬、止まったのである。
――なんでやねん……
思惑と違って逃げていくエメラルダを見ていたネコミミのオッサンは、関西弁のノリでおもわずツッコんだ。
暗殺者たちは、おそらく、上官であるレモノワからエメラルダの抹殺を命令されているはずである。
それをこなさずして帰還するなどあり得ない。
たとえスラムの住人たちを皆殺しにしたとしても、情状酌量の余地などないのだ。
失敗はすなわち、自らの死を意味する。
――ならば、どうする……
ネコミミのオッサンにとって、とっさに追いかける以外の選択肢は全く思いつかなかったのだ。
オッサンが振る手を合図に、次々と黒ずくめの暗殺者たちが、スラムの住人たちの群れの中から飛び出してきた。
洞穴の穴に向かって走っていくエメラルダを、それぞれが懸命に追いかける。
しかし、エメラルダとの間には、一つの障害が待ち構えていた。
そう、カルロスである。
カルロスもまた、タカトの思惑を瞬時に理解した。まぁ、ちょっとは怒りはしたが。
そして、タカトのもとへと駆けていくエメラルダを背に、大きく手を広げたのである。
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