第五章 胸糞・・・胸糞・・・クソ!クソ!クソ!

第109話 凋落のエメラルダ(1)

 ~~~!!注意!!~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 第五章は、残酷かつ、とても胸糞悪い展開になります。がんばって自主規制をかけてぼやけた表現にしておりますが、それでも、文章的にいやな表現が残っております。苦手な方は、飛ばして下さい。読まなくても第五章の内容が分かるように、ソフトな解説として、別小説『蘭華蘭菊のおしゃべりコーナー(仮)』を用意しました。こちらを読んだ上で6章に進んでください。お願いいたします。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 第六の門内の駐屯地内では、内地からの援軍と共に、物資が運び込まれ、傷ついた兵士たちの救護が行われていた。

 緑女りょくめのカリアもまた、人目につかない駐屯地の端っこに用意された、ぼろいテントの中で奴隷兵の女たちによる救護を受けていた。

 奴隷兵は、本来、人魔症の治療など受けられる身分でないにもかかわらず、エメラルダの一声により、全ての者に治療が施されていた。

 しかし、激しい戦いの爪痕は大きく、十数名いた緑女たちも、カリアを含め3名しか生き残っていなかった。


「おう、お前たち生き残ったのか」


 奴隷兵の男たちがテントを開けて入ってくる。


 救護をしていた奴隷女たちが、示し合わせたかのようにいそいそと出ていくと、テントの入り口をしっかりと閉じた。

 カリアが顔をあげて、男たちをにらむ。


「何しにきやがった。この不能ども」


「不能だと! じゃぁ試してやるよ」


 にやける男はカリアの毛布を引っぺがすと、うつぶせにカリアの頭を力任せに押さえつけた。男をにらむ顔が歪むカリア。


「私らに触ると、人魔症が移るんじゃなかったのかよ!」

「人魔症にかかったとしても、今なら、治療してもらえるから大丈夫なんだよ!」


「この駐屯地には、ほかにも奴隷女がいるだろうが!」

「その奴隷女たちがな、お前たちが壊れたらやらしてくれるんだってよ」

「!?」

「だからな、早く壊れちまえよ!」


 男は、カリアの下着を無理やり引き裂く。

 ペッと自分の手に唾を吐きつけたかと思うと、それを自らの股間になすりつけた。

 白いシーツに赤いしずくが飛び散る。

 カリアは、屈するものかと歯を食いしばり、声を飲み込む。

 シーツを握りしめるカリアの手に力が入る。

 涙でぼやける視界には、ほかの緑女たちの悲痛に叫ぶ姿が映った。


 外の天気はいいのに、テントの中は妙にムッとする。

 テントの幕に、映し出される奴隷女たちの影が楽しそうにおしゃべりをしていた。

 誰も助けてくれない。ただこの時間が終わるのを耐えるしかなかった。


 城壁の上ではカルロスが傷ついた城壁の修復の指揮をとっていた。

 超大型級のガンタルトによって激しく突き崩された城壁の修復は、とても困難であった。

 というのも、『宿禰すくね白玉しらだま』に汚染されたガンタルトを城壁からとり除く必要があったのだが、その大きさから、やすやすと動かすこともできなかった。今のところ、誰の手助けも得られない。自分たちでやるしか方法がないのであるが、下手に動かせば『宿禰すくね白玉しらだま』の汚染が広がりかねない。

 ガンタルトを見ながら途方に暮れるカルロス。

 腕を組みながらどうしたものかと悩んでいた。

――やはり、この駐屯地は放棄するのが一番か……だが、その後はどうする……


 そんなカルロスに、息を切らした一人の一般兵が駆け寄り、急ぎ報告をする。


「内地よりの伝令! エメラルダ様が拘束され、軍事裁判にかけらるとのことです」


「なんだと!」


 咄嗟に、一般兵をにらみつけたカルロスの顔が驚きを隠せないでいた。

 カルロスから続く言葉が出てこない。

 エメラルダ様が拘束されただと……

 やっとのことで声を絞り出す。


「どういうことだ……」


「はっ! 国家反逆罪によりアルダインの手の者に拘束されしとのことです」


「反逆罪だと! エメラルダ様がか!」


 取り乱したカルロスは、報告する一般兵の胸倉をつかみあげる。

 一般兵もまた、自分が報告している内容がどうなっているのか分からない様子であるが、とにかく急ぎカルロスへと報告をあげていた。


「詳細は分かりかねますが、内地からの急ぎの知らせによりますと、そのような内容であります」


 混乱するカルロスは、自らを落ち着かせるかのように一般兵を掴んだ手を放す。

 そして、慌てて周囲の神民兵を呼びよせ命令する。


「エメラルダ様の事情を確認するために、ワシは、今から急ぎ内地に戻る。お前たちは、引き続き修復作業に当たれ!」


「御意」

 神民兵たちは膝まづく。

 カルロスは、エメラルダの黄金弓を皮袋に大切そうにしまうと、肩に担いだ。

 そして、急ぎ馬に乗り、内地へとかけていく。


 ムッとする生暖かい風がカルロスの頬をなでていく。

 妙に嫌な胸騒ぎがカルロスを襲っていた。

 少しでも早く、ちょっとでも早く。

 カルロスの鞭うつ手に力が入っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る