早く人間になりたい 人魚姫は泡になった
悲恋のお話、人魚姫。アンデルセンが失恋を経験に描いた物語という裏話もあるそうですが、人魚姫は恋がかなわない悲しい物語です。
船から落ちた王子を助けた人魚姫。彼女は王子を好きになります。しかし、王子のほうは助けてくれた恩人が人魚だなんて思っていません。気を失っていたので、助けてくれたのは修道院の女性だと勘違いしているのです。
どうしても人間になりたいと人魚姫はねがい、魔女に魔法をかけてもらいます。しかし、元々魚のような下半身を普通の足にする代償はとても大きいものでした。まず、声が出ません。つまり話すことができず、命を助けた話も好きだという気持ちも相手に伝えることができません。字を書くこともできず、伝える手段がありません。しかも、歩くと激痛が走るという呪いのような体になります。体に障害を抱えて生きていかなければいけないという魔法でした。王子としては、話すことができない女性より色々な話をしてくれる女性、面白い女性のほうが魅力的でしょう。この時点で、人魚姫の恋はかなり厳しい条件となります。にもかかわらず、王子に見つけてもらい、なんとか一緒にいることができますが、王子に結婚の話が持ち上がり、なすすべもありません。
修道院の女性は結婚ができない身なので、かなわない恋かと思いきや――なんと見習いでとなりの国の姫が修道女を一時的にしていたということを知ります。見習いで一時的なので結婚できるのです。王子は喜んで結婚を受け入れます。
人魚に戻ることができるように仲間たちが人魚姫に最後の助けを持ってきます。それは、姉たちが髪の毛と引き換えに魔女にもらった短剣でした。王子を剣で刺せば人魚姫は元の姿に戻ることができるということでした。人魚の寿命は長く300年くらいですが、人魚が死ぬと泡になってしまいます。人間は寿命は短いですが魂となるので、そういった点も死後の世界が違います。このままだと人魚姫は泡になってこの世から消えてしまいます。
しかし、王子を刺すことはできず、彼の幸せを優先して泡になってしまいます。せつないですね。でも、ここで自分の幸せのために刺すのでは、こわいはなしができあがってしまいます。バージョンによっては短剣を持って忍び込んだということが見つかり、火あぶりの刑という話も。これは、怖い話です。
最後に人魚姫は精霊になります。これは消滅しないという彼女への救いですね。精霊として人を幸せにすれば300年後に魂となって天国に行くことができるというひとつの希望が生まれます。幸せをみつけてほほ笑むことができればその分、1年早く天国に行くことができる。しかし、悲しみをみつけて涙を流せば1年遅くなってしまう、そういった話もあります。
人魚姫は失恋物語ですが、希望を持った終わり方をしていますね。
★解説
報われない恋をしたときに、泡になりたいと作者が思ったことが反映された作品らしいのです。王子は勘違いから始まった恋だったけれど真実の愛になってしまったのです。こちらが愛していても必ず愛してくれるとは限らない、これは仕方のないことですね。
★教訓
体に障害を持ち、伝える手段を奪われた人魚姫ですが、それでも優しいこころを失わなかったのです。好きな人に幸せになってほしい、たとえ自分以外の女性とでも彼が幸せであることを望んだのです。人を好きな気持ちは簡単には消えない。相手の幸せを願うことが真の愛ってことでしょう。
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